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IBM PCの進化 - XT と 5550

今、Windowsパソコンとして使われているPCというのは、このIBM-PCから進化してきた規格のパソコンです。

IBM-PCの登場

このパソコンが登場した時(1981年夏)には大型機で有名な「あのIBMが」パソコンを出したというインパクトこそ強かったのですが、当時のハードウェアとしてはかなり控えめなスペックで、その中身を見てもオリジナルなものは少なく一般的な部品を寄せ集めて作っていたものでした。また、当時主流だった(選択肢にはあったものの)CP/M-86ではなくMicroSoftのPC-DOSを採用したこともあり、対応ソフトも少なかったため静かな船出でした。

2年後の1983年には改良版であるIBM-PC XTがリリースされたのですが、期待されたような大幅な機能アップはなくメモリ容量や拡張バスの変更などに留まりました。但し主要なOSであるPC-DOSはバージョンアップしハードディスクなどの大容量ディスクに必須な階層化ディレクトリなどがサポートされ「磨きをかけた」進化となりました。

IBM PC XT

面白いのはIBM-PCの画面出力は拡張スロットに挿して使うものとして設計されており、初期はCGAと呼ばれるカードが標準的に使われました。おそらく世界中に輸出することを考えると、それぞれの地域でのビデオモニタに合わせた適切なビデオ回路を用意する必要があることと、モノクロやカラーなどの選択肢はユーザに任せようという目論見だったのでしょう。そもそも当時のビジネス向けパソコンは大部分がモノクロのテキストのみの表示しかサポートされておらず、グラフィック表示は必要な人だけのものでした。

Monochrome Display Adapter

Color Graphics Adapter

このCGAはNTSC信号と互換なので一般的なTVモニタを使うことも出来、最大解像度は日本でもお馴染みの640✕200(但しモノクロ)でした。いずれにせよ日本語をサポートするには解像度は足りませんし、PC-DOSもまだ日本語はサポートされておらず、既に程度の差こそあれ漢字を扱えるようになっていた日本市場においては限られた範囲でしか使われることはありませんでした。

IBMという会社は地域ごとに子会社があって、ローカライズやサポートはそちらで行うのが通例だったのですが、日本IBMはなかなか強い権限を持っていて、ご本家のIBM PCを熱心に売ることはなく、日本のビジネス市場に適したオリジナルPCを開発していました。それが1983年にリリースされたマルチステーション5550です。

マルチステーション5550

マルチステーションという名前が付いているのは単なる日本語が使えるPCというだけでなく、日本語ワープロと日本語端末としても使えますよという意味で、まさに日本市場が待ちに待ったというものでした。もちろんベースは日本語が使えるようになったPC-DOSですが、IBM PCとの互換性はあまり考慮されておらず、どちらかというと大型機との連携を中心に独自の機能が追加されていました。

これだけの機能があるので、価格帯としてはいわゆるオフコンの領域で、市場としてはFACOM9450やN5200(NEC)などを利用していたユーザでした。日本ではIBM PCは、ビジネス向けには機能不足でインパクトがなかったのですが、この5550こそ黒船来航で、いよいよ日本でも本格的なPC時代がやってくることを予見させました。もっとも、この黒船を用意したのはあくまで日本法人だったのですけどね。

ここからしばらくは新しいハードウェアやOSなどがアメリカで登場すると、それを日本で売られている機種にせっせと移植して使うという時代が続くのですが、そのため何かにつけ1年ほどのタイムラグがあったのですが、その過程で日本語処理が徐々に標準化され、ご本家に対してマルチバイト文字と国際化を提案するという立場になっていきました。当時の日本のメーカーは世界を席巻していた時代でもあったので、積極的に活動し世界中で使えるPCのために貢献していました。

この後IBMは可搬型PCであったり家庭向けの市場にも手を伸ばしていくのですが、その道のりはなかなかイバラでした。PCの広がりとともに互換機市場が急速に立ち上がり走り続けなければ業界の主導権を失います。そこで新しいCPUを採用したアーキテクチャへさらに進化を続けることになりました。その辺りはまたの機会に。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Ibm_px_xt_color.jpg
Ruben de Rijcke - http://dendmedia.com/vintage/ - 投稿者自身による著作物, CC 表示 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=3610862による

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