68020 - モトローラの反撃
今でこそ、すっかり影の薄くなってしまったモトローラのCPU(モトローラはMPUと呼んでいる)ですが、1980年代はワークステーションを始め、アップルのMacintoshにも採用されていて、パソコン以外にも高機能なデバイス(レーザープリンタなど)などにもよく使われていました。
最初のMPUであるMC68000については、以下に書いたのですが、そこで触れた後継チップについて補足しておきます。
68000 - ミニコンの後継者
モトローラは1980年に68000をリリースした後、データバスとアドレスバスを縮小し安価な48ピンパッケージに収めた68008(1982年)や、外付けのMMUを使えるようにした68010(1982年)をリリースしますが際立った違いはありません。インテルが80286の保護モードで苦しんだように、68010のMMUもいくつかの問題があり、あまり使われていませんでした。
MC68000
元々68000は、アーキテクチャとしては32ビットのレジスタを持っており、16ビットのデータバスと32ビットのアドレスバスを持ち、外部に出力されるアドレスが24ビットしか出ていないだけでした。つまりソフトウェアとしては大きな変更をせずに、そのまま32ビットCPUとして進化できる道が用意されていたわけです。
1984年、インテルの386より1年ほど早く、遂に名実ともに32ビットとなった68020がリリースされました。クロックも当初は12MHzでしたが、徐々に高速版が用意され最終的には33MHzまでのラインナップがありました。
MC68020
大きな改良点としては外部のコプロセッサが正式にサポートされました。コプロセッサには数値演算装置(FPU,68881や68882)だけでなく、メモリ管理ユニット(MMU,68841/68851)もコプロセッサとして接続されます。またマルチプロセッサ対応としてメモリアクセスが競合しないための仕組みも取り入れられました。
MC68020
今までも68000を使っていたようなMacintosh やSunについては、さっそく採用され、他にもアーケード・ゲームにも使われたようです。80286のリアルモードが1Mまでのメモリしか扱えなかったので、特にグラフィックスなどで多くのメモリを扱う場合に使いやすさは抜群だったのだと思います。
Motorola 68020 (MC68020) microprocessor family
https://www.cpu-world.com/CPUs/68020/index.html
シリコンの高密度化も順調に進んだので、1987年にはMMUを内蔵した68030、1990年にはFPUも内蔵した68040がリリースされ、順調に売れ続けました。一時はワークステーションといえば68000系という程でしたし、MacintoshだけでなくAmigaやX68000などのパソコンでも使われました。
その後、Sparc、MIPS、PowerPCといったRISCチップが台頭しハイエンド市場からは姿を消しましたが、組み込み向けには人気があって、系列のCPUは割と最近までNXPで製造されていたようです。
MC68020 Datasheet (PDF)
https://www.alldatasheet.jp/datasheet-pdf/pdf/112181/MOTOROLA/MC68020.html
ヘッダ画像はプロトタイプのXC68020。以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:XC68020_top_p1160084.jpg
David Monniaux - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1594209による
#CPU #モトローラ #MC68020 #MMU #FPU #X68000 #Amiga #ワークステーション
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