奥さまは魔女 - 誰もが楽しんだアメリカの普通?の家族ドラマ
前回はちょっと新し目のドラマを紹介しましたが、やはり「懐かしい」ドラマに戻ろうと思います(新しいのもやりますよ)。今回は一定以上の年齢の方であれば、きっと一度は見たことがあると思いますし、少なくとも聞いたこともないという方はいないのではないかという「奥様は魔女(原題:Bewitched)」です。
このドラマはアメリカでは1964年から8シーズンに渡って放映され、日本でも1966年からTBS系列で放送されるようになりました。その後も局を変えながら今に至るまで繰り返し放送されています。実写のドラマなのですがオープニングだけはアニメになっていて、そこではお決まりの「奥様の名前はサマンサ…」というナレーションが流れます(これは日本での放送だけのようです)。人間の世界にやってきた奥様である「サマンサ(エリザベス・モンゴメリー)」と旦那さんである「ダーリン(ディック・ヨーク/ディック・サージェント)」夫婦の日常が描かれる元祖ファミリードラマです。
奥さまは魔女 (テレビドラマ)
繰り広げられるストーリーは、アメリカの「普通の」家庭の日常です。魔法を使えるという特殊能力をもった奥様が人間の「普通の」生活を面白おかしく、時には批判的な目で演じるのが、変わりつつあるアメリカ社会において憧れる「普通」を作り出していたのかもしれません。「普通」といってもダーリンはホワイトカラーのそれなりに恵まれたサラリーマンで、都市部の豊かな誰もが目指すような家庭です。主要な登場人物に有色人種は含まれておらず、いかにも当時のアメリカです。これが日本での放送においても「憧れのアメリカ」を感じさせるので、人気が出たのかもしれません。
アメリカにおいてもドラマは黎明期で、テレビの中でどうやって劇を演じるかは試行錯誤があったようです。例えば効果音として「観客の笑い声」を入れるというのは舞台演劇をイメージしてのことでしょう。あちらは舞台であっても、脇に「笑って」というプレートを持っている人がいるようなお国柄ですからね。また特撮とまでは言えませんが、魔法を使うシーンは工夫があって、紐で吊るのは舞台でもできますが、カメラを止めて瞬間移動させるのはテレビならではの醍醐味かもしれません。それでも「魔法を使っているんだよ」という合図としてのアクションがあるのは、テレビも前に座っている普通の人に、意図を伝えるにはよほど丁寧に作らないとならないと思っていたのは間違いありません。まだテレビというものの「お約束」が確立していませんでしたからね。
(こんな時代にSFドラマなんてやってしまったスター・トレックが、なかなか受け入れられなかったのは無理もない気がします。)
奥さまは魔女 - ソニー・ピクチャーズ
今の時代に、このドラマを見直すと、さすがに違和感があり、昭和という時代の時代劇にも見えますが「魔法」という非現実がSFっぽく感じられることもあり、変わったようで変わらない日常生活が楽しめることは間違いありません。アメリカでも人気は続いていて、2005年にはちょっと捻ったリメイクですが映画も作られ、日本では2004年に日本版(原作だけ使い俳優も制作も日本)ドラマが作られています。そして1994年に設立された株式会社サマンサタバサジャパンリミテッド(ジャパンとか入っているけどレッキとした日本の会社)というブランドバックの会社も、このドラマの登場人物から採られたと「言われて(真偽は明らかにされていない)」います。
奥さまは魔女 (映画)
サマンサタバサ
「あたりまえ」を表現するには当たり前でない何かが必要なのは、ドラマに限らず必要なことかもしれませんが、魔法使いという非現実は、人々の求めることを表していたのかもしれず、今では魔法でもなんでもないことが魔法を使って実現していたりするのがちょっとおもしろいです。
【特別総集編】海外ドラマ『奥さまは魔女』〈海外ドラマの大傑作!世代を超えて愛される大ヒットコメディドラマ!〉
ヘッダ画像は、以下のものを使わせて頂きました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Agnes_Moorehead_Dick_York_Elizabeth_Montgomery_Bewitched_1964.JPG
ABC Television - eBay itemphoto frontphoto back, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19823514による
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Bewitched_Stephens_family_1971.JPG
ABC Television - eBay itemphoto front and release, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=19823121による
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