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オープンリールなビデオレコーダ

私の世代は物心がついた頃には既にテレビのあるウチも多かったとはいえ、その大部分はまだ白黒テレビでした。お金持ちのおウチには観音開きの家具調のテレビが鎮座していましたが、ウチなんかは一回り小さなブラウン管の入った箱に長い脚が付いているタイプのものでした。もちろんまだテレビの無いウチも少なくなくて、友達の家に「テレビを見に行く」と言ってお邪魔することもシバシバでした。

そんな時代だったのですが、父が会社で映像関係の技術を扱うお仕事をしていたこともあって、会社に行くとなんとオープンリールのビデオデッキが鎮座していました。もちろん録画は出来たのですが、カメラがあるのではなくて謎の装置の映像出力を記録するためのもので、テレビ放送を録画することは出来ませんでした。音声は接続されておらず映像はもちろん白黒です。

オープンリールですから、使う時は片側に生のテープが入ったリール、反対側には空のリールを取り付け、テープの端を大きな回転ヘッドをグルっと一廻りさせてから空のリールの切込みに引っ掛けます。これで謎の装置の出してくる謎の映像を記録するのですが、記録が済むとテープを巻き戻して元のリールに収め、今度は別のボタンを押せば再生が出来ます。

出てくる映像がそれこそなんだかわからないものなんですが、何かが動いていることだけはわかりました。実際にそこにあるものを映しているわけではないので、映像が鮮明かどうかなんてわからないのですが、とにかく何かが動いているのです。これがビデオ初体験です。どんな機械なのかはあんまり覚えていないのですが、きっとこの手のビデオだったのでしょう。

1/2インチオープンリール - 懐かしの名機

CV-2000 - 商品のあゆみ(SONY)

https://www.sony.com/ja/SonyInfo/CorporateInfo/History/sonyhistory-d.html

時代は進んで我が家にもカラーテレビがやってきて、どこの家にも大体はテレビがあるような頃になると、どうやら仕事で使う用事は済んだらしく、私も少しは大きくなったので、そのビデオをいじらせてもらえるようになりました。既にオーディオのオープンリールは使えるようなっていたので、ビデオも基本的には同じです。この時代、動画を編集するにはやはりハサミで切って粘着テープで繋いでいたのです。もちろん回転ヘッドなので映像信号は斜めに記録されているので、真っ直ぐ切るとわずかに映像が乱れるのですが、そこは誰も気にしていませんでした。それより面白いのがテープには映像信号のみで同期信号は記録されておらず、テープを止めて同じ場所を回転ヘッドがグルグル回って静止画が得られたことです。ここでユックリとテープを進めるとスローモーションのように再生され、逆に回せば逆向きに再生されるのです。これはなかなか楽しくてあまり同じところを見ているとテープが痛むと怒られました。

SONY CV-2000

Sony CV-2000D in Operation after 40 years!

この頃はジェンロックであるとか外部同期も内部同期も何を意味するのか全くわかっていなかったのですが、その後、家庭用のビデオが登場した時にどうしてスロー再生が大変のか悩むことになり、パソコンの画像を録画する時にやっと理解できるようになりました。

SONY CV 2000 - Video History Project

まあ、こうして見様見真似でビデオな世界に足を踏み入れていたのですが、オーディオと比べると覚えることが多くて、回路的にも当時としては充分に高周波回路なので回路図を見ても殆どわからなかったです。当時使っていた真空管のオシロもギリギリ映像周波数を扱えるくらいだったのに物凄く高価なものでしたし。まあ信号があるのか無いのかくらいは見ることはできましたが。

小型化、低価格を実現した革命的なVTRの夢の幕開け! 〜 世界初家庭用ビデオテープレコーダー『CV-2000型』

オープンリール

いろいろ使えるようになったのは、その後、Uマチックがやって来てからで、そこでようやくカラーになってテレビの録画も出来るようになったんですよね。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。https://collection.sciencemuseumgroup.org.uk/objects/co8407902/sony-video-tape-recorder-video-recording
This image is released under a CC BY-NC-SA 4.0 Licence

#ビデオデッキ #オープンリール #SONY #CV2000 #磁気メディア #同期信号


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