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語学の壁:語順について

 日本人にとって、英語やフランス語の学習で最も大きな壁の一つが「語順」です。例えば、フランス語を話す子供が、イギリスに引っ越して幼稚園や学校に行き始めて、すぐに英語で理解できるようになるのでしょうか?実は、けっこうすぐに話し始める、というデータがあります。数か月で会話ができるようになるんだとか。それでは、日本人の子供がアメリカに引っ越して、そんなに短い期間で会話ができるようになるのか。答えはノーです。半年から1年はかかるとのこと。(ちなみにうちの娘にも同じような経験がありますが、それくらいかかりました。)

 この学習スピードの差は何から出てくるのでしょうか。
大人の発想では、「発音が難しいので、聞き取れないことが一番の課題」という方も多くいらっしゃるでしょう。しかし、子供は、発音に対しての抵抗感はあまり感じられないようです。もっとも大きな違いは、”文型”です。フランス語の文型と英語の文型はほぼ同じで、叙述文だとまず行為の主語を立て、次に行為の内容を示す動詞を続けます。例えば、

「昨日スーパーで、タナカ先生に会った」

と言いたい時は、英語やフランス語の場合

私(主語)+ 会う(動詞)+ タナカ先生 + で + スーパー + 昨日

という並びが基本になりますが、日本語は当然そうはなりません。日本語の文には主語もありません。つまり、起こっている事象をどういうパーツに切り取り、どういう順序に並べるかというのは、言語構造によって異なるということです。フランス語と英語は構造がとても似ているので、フランスの子供は、単語(=パーツ)を英語に入れ替えれば話は通じますが、日本人の子供はそうは簡単ではありません。例えて言うと、情報処理のためのOSが異なるので、日本語OSの日本人は英語学習をするとき、OSを英語OSに乗せ換える必要があるということになります。この労力は大きいですし、多くの時間も必要です。 
 逆に言えば、英語話者やフランス語話者が、日本語を学ぶ際も同じようにOSを乗せ換える作業が必要になるので、多くの時間が必要です。アメリカの外務省によると、日本語は同じ語族に含まれる韓国語等とならび、学ぶのに最も難しい言語に分類されています。平仮名やカタカナ、漢字が並んでて語順も全く異なるとは頭が痛くなりそうですね。逆に日本人や韓国人は、お互いの言語を学習する際は、型が同じなので、比較的短い時間で済むということです。

 さて、この語順の壁を乗り越えるには、どうすればいいのでしょうか?
まずは語順や品詞を理解し、シンプルな文型で作文をする練習をすることでしょう。英語の教材であれば、語順トレーニング用の本がたくさん出ていますが、ここに例を出してみます。
例えば、「スマホの充電が切れたから、電話できない」と言いたい場合、主語と動詞を明確にし、

  スマホの充電 + 切れた + 私 + できない + 電話する
  My smartphone battery ran out. I can’t make a call.  

 という風にパーツに分解し、並べて、単語を英語に乗せ換えます。単語は覚えるしかありません。
 語順さえ合っていれば、OSが同じなので、冠詞や前置詞などの細かい間違いがあったり、発音がそれほどうまくなくても通じるものです。

また、元の文をパーツ毎にスラッシュで区切って、語順感覚を掴む練習もあります。
  My smartphone battery / ran out./  I / can’t / make a call.  

パーツと語順を掴んだら、指で数えたりしながら、文を見ずに、口頭でパーツを正しい語順に並べ、再構築します。
  
 再構築ができれば、自分の身近にあるものを使い、パーツを入れ替えたりして応用練習をしてみます。

  PCの充電が切れて、仕事ができない
  My PC battery / ran out. / I / can’t / work.
       ドローンのバッテリーが切れて、遊べない。
  My drone battery / ran out. / I / can’t / play.  

などです。
 こういう作業をコツコツと続けることで、語順が分からないといった悩みはだんだんとなくなります。そして単語量を増やせば、会話力を伸ばすことができます。


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