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【#4】エロゲプレイ日記 3日目 「メモリーズオフ6 Complete」 鈴√

はじめまして、桜雨(さくらあめ)です。
今回プレイするのは「メモリーズオフ6」。
メモリーズオフ、通称メモオフシリーズは、調べてみるとどうやらかなり知名度が高く、2024年9月30日に25周年を迎えるロングコンテンツだそう。
恥ずかしながら私は全く存じ上げなかったのだが、PlayStation Plus(プレステのサブスク)で本作を見かけ、シュタゲで慣れ親しんだMAGES.の作品ということでプレイしてみた。


作品概要

タイトル:メモリーズオフ6 Complete
開発元:MAGES.(旧5pb.)
発売日:2013年6月27日
バージョン:PS3版
シナリオ: 日暮茶坊 /秋月ひろ / 大三元/ 三浦洋晃 / 馬場卓也 / 澤渡やよい
キャラクターデザイン: 輿水隆之 / 松尾ゆきひろ


ヒロインについて

プロフィール

名前:稲穂 鈴(いなほ すず)
ペンネーム:鈴代 黎音(すずしろ れいん)
誕生日:1月3日(24歳)
属性:黒髪ロング、年上、半同棲、バイク乗り
CV:田中 理恵

魅力

年上キャラに求められる要素をある程度おさえつつも、テンプレの年上キャラにならないように要素を所々外しており、それによって非常に魅力的なキャラ造形となっている。
例えば、鈴さんのような「やや粗暴なお姉さん」に付けられる属性として「酒癖が悪い」、「男言葉を使う」、「料理が苦手」といったものがあるが、これらの要素は「酔うと少し素直になる・少し甘える」、「”~よ”のような柔らかい言葉を使う」、「料理が得意」という形に変換されている。この外しが非常に刺さった。
また田中理恵さんの演技も、鈴さんの魅力をより一層引き出す一因となったのは間違いない。プレイ後コメントで田中さんも言及していたが、鈴さんの人柄と田中さん本来の人柄とで共通点が多く、それによって「演じている感」の薄い、非常に生っぽい演技が生まれている。これはセリフ回しの巧さにも起因するが、鈴さんのセリフの中で、「こんなことを現実世界で言う奴はいない」というセリフが全くと言って良いほどなかったのだ。この自然体の演技も、鈴さんの魅力をこれでもかと押し上げている。
あとは単に赤目黒髪ロングがド性癖。

シナリオについて

青春の功罪

鈴√においては良くも悪くも鈴以外の登場人物の影が薄いが、そんな中、最もシナリオの根幹部分に関わってきたのは智紗だろう。
鈴√における一つのターニングポイントが智紗の告白を断るシーンだが、ここで論点となるのが「告白を断る理由このタイミングで智紗に話す必要があるか否か」という点だ。
志雄は鈴に対する恋愛感情を自覚してすぐ智紗に対して断りの返事をした。この行動は人として実に正しい選択だと思うが、それはあくまでも神視点(プレイヤー視点)及び志雄視点から見たときの話であり、恐らく智紗からすれば最善の選択ではなかっただろう。シナリオ内でも鈴が言ったように、智紗以外の誰かに気持ちが向いていたとしても、それをあえて隠して後夜祭を共に過ごし、その数日後に告白の返事を返す、というのが最善手だった可能性もある。最終的に恋人の関係にはなれなくても、後夜祭を共に過ごしたという思い出をずっと大切に持っておくことが出来るから。
一言で纏めるなら「自分の道理を貫く相手の道理に寄り添うか」の二者択一を迫られている、といった表現になるだろうか。そしてこれはどちらも正しく、どちらも完璧ではない故に、結論の出ない問題だ。
結局、志雄は前者を選んだわけだが、それに対して智紗が突き付けたのはあまりにも真っ直ぐな糾弾だった。

智紗「……ウソでしょ?」
  「だってあの人……この前会ったばっかりなんだよね?」
  「それに、うんと年上だし」
  「おかしいよ、そんなの……!」

恐らく、智紗は純粋に納得出来なかったのだろう。志雄が智紗の告白を断ったことではない。志雄が鈴に恋情を抱いたことを。
そして智紗の真っ直ぐで、故に残酷な激情に対し、志雄も鈴に対するあまりに清廉潔白な思いをぶつけてしまう。

志雄「箱崎さんこそ、鈴さんのこと、なにも知らないだろ!」
智紗「それは、そうだけど…」
志雄「鈴さんは、いい人だよ。箱崎さんのことだって、思い遣ってくれてたんだから!」
智紗「私の事……?」
志雄「好きな人がいないなら、OKしてあげたらって俺に言ったんだよ!」
智紗「……!」
志雄「それなのに……」
智紗「そんなの……そんなの、私をダシにして、理解のある大人を演じただけじゃない!」
志雄「そんな言い方ってないだろ!どんだけひねくれてるんだよ!」

人は年齢を重ねるほど、他人との衝突を回避しようとする。その方が物事は穏便に、無難に進むし、無駄なエネルギーを消費しなくて済む。しかし、青さはそれを許さない。青さは凶器だ。相手を傷付け、自らをも傷付ける凶器。でも同時に、ぶつかり合うからこそ生まれるものは確かに存在する。そして、時として大人同士の上辺の関係とは全く違う、深く固い絆を結ぶという結果に至ることもある。
この衝突は学生同士だからこそ生じたことであり、学生の恋愛を描いた本作において、非常に重要な意味を持ったシーンだと感じた。
ちなみに余談だが、智紗を演じる平野綾さん、「人畜無害そうだが、自己中心的な側面のあるやや陰のある人物」を演じるのが上手すぎる。WHITE ALBUM無印の由綺然り、この手のヒロインをやらせたら右に出る者はいないのではないかと思う。もし機会があれば、是非またギャルゲのヒロインを演じていただきたい。十中八九嫌いなヒロインになるが…。

大人と子供の対比

鈴√の特徴の一つに「キャラクターの大人っぽさと子供っぽさ両面が描かれている」というものがある。まず志雄は家庭環境の影響から、同年代の友人よりも大人びており、やや達観した思考を持っている。しかし、彼にとって信頼出来る数少ない年長者である鈴の前では、年相応の弱さを垣間見せる。対して、鈴は普段の言動からして少しだらしないところがあり、志雄にいたずらを仕掛けたりジャーマンスープレックスを極めたりと、子供っぽさがフィーチャーされている。一方で、志雄の葛藤を受け止めて優しく包み込む度量の大きさや、時には冷徹とも言えるほど落ち着いた思考を覗かせることもあり、本質的には志雄と近い性質を持っているように感じる。
鈴√では終始「子供と大人の関係性」というテーマを掲げて進んでいくが、最大のターニングポイントは、鈴が志雄を振った理由を打ち明けるシーンだろう。

鈴「……話したよね。昔、好きだった人が結婚した……って」
「相手は、先生だった。……私が高校生の頃の」
「なかなか打ち明けられなかったよ。先生と生徒じゃ、立場が違い過ぎる」
「我慢して、我慢して……でも、思い切って誘ったんだ。『後夜祭で一緒に踊ってください』って……」
「……でも、ダメだった、あの人は……年齢が違いすぎて、そういう目で見ることはできないって……」
「なのに、私が志雄の気持ちを受け入れてしまったら……あの人と方向は逆でも同じだけ年齢の離れた志雄と成立するなら……」
「あのときの先生の言葉は、なんだったんだって……。だから、せめてそれだけでも、真実であってほしいんだ……」
「志雄がダメなわけじゃない。私の幼稚な感傷だ。……だけど、イヤなんだよ」

志雄からすれば絶望的な告白だっただろう。自分が振られた原因が自分以外のところにあるから。自分がどうアプローチを変えても結果は揺らがないから。しかし、それだけでは終わらないのが稲穂鈴という人。

鈴 「うん……私は物覚えが悪い。だから……」
志雄「だから?」
鈴 「忘れないように……」

シュタゲで見たシーンだこれ!キスで終わったぞこのルート!!!!!
…この終わり方が本作の評価を底上げしていると言っても良い。だが同時に、恐らく世間的にはあまり受け入れられない終わり方だとも思う。例えば、R18要素のあるエロゲで同じことをやるとしよう。大炎上します。絶対。なぜかって?エロゲは付き合った後の話がメインだから。そして、そのお約束は基本的に一般ゲームにも適用される。Hシーンはなくとも、主人公とヒロインのイチャイチャが見たいという層は恐らく過半数を占めるだろう。だが鈴√はそのお約束を破ったのだ。
主人公と攻略ヒロインが結ばれずに終わる鈴√を評価する理由は大きく二つある。一つは、この終わり方に必然性があるからだ。私は、今までプレイしてきたエロゲの中で、ヒロインが主人公を好きになった理由に納得したことがほとんどない。なぜなら、エロゲは「主人公とヒロインが結ばれる」という絶対的なゴールがあり、数時間でそのゴールに辿り着かなければいけないという制約がある。その制約の中で、二人が結ばれることに説得力を持たせられる作品は非常に稀だからだ。その点において、主人公とヒロインが結ばれないまま終わらせたのは英断だと思っている。もう一つは、このルートにおけるテーマを踏まえたとき、付き合った後よりも付き合う前の話に文量を割くべきだと感じるからだ。志雄と鈴は基本的に良識を備えた人物であるが、過去の経験から他人とは壁を作ってコミュニケーションを取る傾向がある。そんな二人が壁を取り払い、人間として一歩前進するというのが本ルートのテーマだと私は感じており、こういった人間的成長は交際を始める前に描かれるべきだと思っている。そのため、二人が付き合った後の話を描かないシナリオでも、一定の納得感がある。

総括

鈴√評価

シナリオ…やや短めながらも、テーマがきちんとある良シナリオだった。
キャラデザ…神。黒髪ロング最高。
性格…冬馬かずさを除けば、暫定で一番好きまである。大人っぽさと子供っぽさが同居した、少し不思議でとても魅力的なキャラクターだった。
声・演技…言うことなし。あまりにもキャラに嵌り過ぎている。完璧。
CG…この作品が発売された時代を鑑みてもクオリティが低い。
立ち絵…表情差分・衣装差分共にバリエーションがやや少なく感じた。
演出…プレイ中に笑ってしまう程度にはヤバいものがいくつかあった。

総括

今までプレイしたギャルゲの中でもトップクラスに読後感が素晴らしく、シナリオ全体を通してみてもよくまとまっていると感じた。メインヒロインの幼馴染がかなり嫌な奴だったり、CGのクオリティが低かったりと重要な部分の作りが微妙なせいか世間的な認知度はあまり高くないように感じるが、是非多くのエロゲプレイヤー達にプレイしてほしい作品だ。今回T-waveをクリアしたので、FD的な立ち位置のNRも近いうちにプレイしようと思う。
ではまた。

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