ブルージャスミン~TAR~ダンサーインParis・・それぞれの人生
前回紹介した「泳ぐひと」を見た後には、人生に敗北した現実を突き付けられた主人公、ネッド・メリルの妻ルシンダや娘たちの人生はどのようなものだったのだろう・・・などと妄想の余韻が残る。
時代の波に乗って儲けた男が、事業に失敗してその資産を全て失ってしまった後の、妻の側から物語
2014年ウッディアレン監督の映画
ブルージャスミン
映画の冒頭から最後のシーンまで、ジャスミンの独り言らしからぬ独り言が、物語の展開を支配しています。
会話の相手がいることは意識しているのかいないのか、目つきはうつろで宙を浮いています。
自分の記憶に浸って浮かんでくる言葉、感慨がジャスミンの口から次々と飛び出してくる。顔つきの変化、というよりは変化のなさ、に見入ってしまいます。こういう独り芝居的なシーンの演技がすばらしいと思う。「泳ぐひと」もそうですが、心理劇なんですね。
ハルは、どうも詐欺まがいの巨額投資話で儲けていたようです。
ジャスミンはそのおかげで、豪華なセレブ生活を享受していました。
妹のジンジャーの旦那オーギーがわずかな元手と宝くじで当てた賞金で、新しい事業を始めようとしている話を聞いて、ジャスミンはその金を全てハルの投資に回すように説得します。
その何年後かに、ハルが投資した事業はことごとくうまくいかず、詐欺の罪で投獄され、獄中で自殺してしまいます。
こうして、ジャスミンは豪華なセレブ生活から転落してその日暮らしの食うや食わずの生活に落ちぶれてしまいます。
映画は、落ちぶれたジャスミンが、妹のジンジャーのところに生活を立て直すまで居候するために飛行機で向かっているところから始まります。
そのあとの物語は、ジャスミンの生活再建のための悪戦苦闘と過去の回想で進行します。
監督ウッディ・アレン特有のひねりがあって、ここでは、ケイト・ブランシェット演じる主人公ジャスミンは、元から心理的精神的に現実を直視しない性格を持ち合わせていたように描かれています。
ジャスミンの性格を一言でいうと、世間ずれした頑なさ、でしょうか。
TAR
ケイト・ブランシェット主演最新作。
世間ずれした頑なさ、は「ブルージャスミン」と共通してるかも、です。
世界の頂点に立った女性指揮者の、頂点からの転落?の物語。
本人は、転落とは認めていないのか、自分の信念を貫ける場所を見出すことに、確信をもって頑なに邁進しているのか。
最後は、東南アジアで、バーバリアンな若者のゲーム音楽オーケストラを相手に、今までと変わらない情熱的な指揮をしているシーンでエンディングとなります。
最新作で、解釈をめぐってあちこちで論じられているので、これくらいにしておきます。
ダンサーインParis
絶望的な転落からの起死回生を図るアーティストの物語としては、こちらもおすすめです。
エンディングが、バーバリアンな音楽と映像なのは、「TAR」と共通しています。私の好みとしては、こちらの映画の方がおすすめです
エリーズは、街角で行われていたブレイキンバトルを見てバレエだけがダンスではないことに気が付き、イスラエル生まれで、現在イギリス在住のアーティスト、ホフェッシュ・シェクター(本人役で出演)のカンパニーに入団する。ホフェッシュ・シェクターは、振付家、ダンサー、そしてドラマー、作曲家でもある。
日本にも、2010年に来日公演しているようです。
次の「Political Mother」が、たぶん映画のエンディングシーンに近いと思う。・・・・・劇場で見てみたい。