逮捕リスクを取る社長、グレーを扱うネット広告コンサルタント

ネット広告業界のモラルに疑問を呈する人は多い。

筆者は、この状況の原因として、ネット広告コンサルタントの存在が挙げられるのではないか、と考えている。

この記事では、その一例を示す。

消費者庁も問題視

消費者庁は、令和4年2月15日、「アフィリエイト広告等に関する検討会」の報告書をまとめた。

その中で、

「表示上の問題があるアフィリエイト広告の出稿の仕方等を指示するコンサルタント会社の存在」

がある、と述べられている。

消費者庁 検討会報告書(令和4年2月15日)

筆者は、これに該当しそうだと感じるコンサルタントを見つけた。そのコンサルタントは、ウェブコンテンツ製作者に教材を販売していた。

「グレーゾーンをうまく活かす」

このコンサルタントの教材は、数時間ほどの動画で構成されている。その中に10分ほどの章がある。

その章では、「法律のカベ」「広告のカベ」「グレーゾーン」が示され、「グレーゾーン」を活かせば反応は高まる、と説明されていた。

「薬機法を全く守らない場合」

以下に、教材で語られている内容を書き下していく。

まずまあ、ここにですね。法律の、表現のOK、NGっていう、壁があるとします。で、高ければ高いほど訴求力が強いっていう感じで書いていきますと。

まず、薬機法を守らず、コピーライティング的な面を100%活かしてガンガン訴求して行くっていう形になるとどうなるかっていうと、当然、この法律の壁を突き抜けた、こういう訴求になってしまいます。

ネット広告コンサルタントの教材から抜粋
「薬機法を全く守らない場合」への言及

「薬機法に囚われた場合」

一方で、薬機法だけを守ろうと思って、それに囚われてばかり書いていくとですね、どうなるかっていうと、訴求力って、こんな感じで非常に、訴求の低いものができてしまいます。

ネット広告コンサルタントの教材から抜粋
「薬機法に囚われた場合」への言及

「法律に沿いながら、より訴求力が高い表現」

(中略)
で、薬機法コピーライティングでどうしていくかっていうと、当然のことながら、このラインですよね。法律のカベ、スレスレって言うとなんかちょっと言い方が良くないですけども、法律に沿いながら、より訴求力が高い表現をしていくっていうのがあります。

ネット広告コンサルタントの教材から抜粋
「法律に沿いながら、より訴求力が高い表現」への言及

「広告のカベ」

(中略)
より、細かいことを言うとですね、法律のカベもそうなんですが、実はもうひとつカベというのが存在します。それは何かっていうと、青で書いてしまいますが、もうひとつですね、広告のカベ、というのが、実はあります。

ネット広告コンサルタントの教材から抜粋
「広告のカベ」への言及

「法律的にはちょっと微妙なんだけども広告は通るケース」

法律的にOK、NGっていう部分はもちろんあるんですけれども、もうひとつですね、YahooとかGoogleにみられるような、ああいう広告会社さん、あると思うんですが、そこで、OK、NGとなる壁って、まあ多少差があります。

もちろん、広告会社さんも、法律をベースにしている部分は大きくありますので、基本はすごい近いラインなんですけれども、それでも、法律的にはちょっと微妙なんだけども、広告は通るっていうケースが、あったりはします。

ネット広告コンサルタントの教材から抜粋
「法律的にはちょっと微妙なんだけども広告は通るケース」への言及

「グレーゾーン」

まあ、より、攻めたいということがあれば、ここのラインですね。いわゆるここはグレーゾーンと言われる部分になるわけですけれども、ここのグレーゾーンへいかに突っ込んでいけるかっていうのが、ひとつポイントになります。

ネット広告コンサルタントの教材から抜粋
「グレーゾーン」への言及

逮捕リスク

とはいえですね、まあ、グレーゾーンへ突っ込んでいるっていうのも、ある意味やっぱりリスクがゼロではないので、まあそこは結局、最終的にクライアントさんが、どういうリスクを取れて、どういうことはしたくないのかっていうのをしっかり把握した上で、表現の程度っていうのを決めるのが一番望ましいです。

私も必ず最初にですね。まあ、薬機法について100%守ることも出来ますけど、まあ、攻められるところは多少攻めた方が、やはり反応は上がります、っていう話はします。ただ、当然そうすると御社としてのリスクが高くなるっていうのはもちろんありますので、最終的にどうしたいかは御社が決めてくださいって。

最初にヒアリングですね。させていただいた上で、いやー、うちは逮捕されたくないんだけど、売上あげたいんだよねっていう感じで、逮捕はされたくないけど、まあちょこっとちょっとそういうね、グレーゾーンに足を突っ込んでもいいかなっていう社長さんも、意外といらっしゃったりします。

ネット広告コンサルタントの教材から抜粋
逮捕リスクへの言及

「グレーゾーンをうまく活かしていけると反応を高められる」

まあ、もちろんその、法律を破るっていうのが良いこととは一言も私は言いませんけども、あのまあ、当然こういう運用上の差ってのはやはりあるので、ここのグレーゾーンをうまく活かしていけると、より反応を高められるのは間違いないです。

ネット広告コンサルタントの教材から抜粋
「法律を破るのが良いこととは言わないが、グレーゾーンをうまく活かしていけると反応を高められるのは間違いない」との言及

このコンサルタントの主張は、

「法律のカベを突破し、グレーゾーンを活かせば反応を高められる」

ということのようだ。

2023年現在のネット広告業界には、同様の考え方をする人がたくさんいるように見える。

Yahooのコメント

上記の中で、Yahoo、Googleという具体的な名前が出た。このうちの片方、Yahooは、「不適切な広告」についてコメントを出したことがある。

コメントの提出先は消費者庁だ。Yahooは、消費者庁の検討会で、下記のような資料を提出した。

アフィリエイトによる不適切な広告掲載への対策 P1
アフィリエイトによる不適切な広告掲載への対策 P16 赤線は筆者加筆

ヤフー株式会社の力には限界があり、違法な広告を排除できないので、捜査機関や行政機関に頑張ってほしい、ということらしい。


ネット広告の現場では、グレーゾーンが選択肢として提示されており、広告を載せる媒体社も匙を投げている。

また、逮捕リスクを認識した上で広告が作成されているようにも見える。

これを止められる人は、おそらく存在しない。ネット広告は、まだしばらく汚いままだろう。

以上

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