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法の秩序が及ばない世界がここにある #イケハヤ

ここ一週間ほど、イケダハヤトさんが炎上気味だ。違法な宣伝手法でNMNサプリを販売していたからだ。

私は、イケダハヤトさんの違法性を指摘する動画を、いくつかYouTubeに上げた。たぶん、私は火元のひとりなのだろう。いくつか批判を頂いた。

しかし、私の考えは変わらない。イケダハヤトさんは違法な広告をした。また、現在も違法な広告をしている。そのことを、私は確信している。

ただ、イケダハヤトさんには同情できる面もある。現在のインターネット上には、違法な広告があまりにも多すぎるのだ。イケダハヤトさんは、その雰囲気に引っ張られて違法な広告を作ってしまったのではないか、と私は想像している。

法の秩序が及ばない世界

現在インターネット上にある健康食品系広告や美容系広告は、違法広告の比率がとてつもなく高い。法の秩序が及ばない世界だ。

Webメディアの記事下に、怪しい広告がたくさん表示されているのを見たことのある人は多いと思う。それらは、概ね違法な広告だと思っていい。

たとえば、私はニコニコニュースに表示される広告を継続的に調査している。私の調べでは、ニコニコニュースに表示される広告のうち71.9%が薬機法違反広告だった。

また、ニコニコニュースに載っている広告のうち、ログリー株式会社を経由した広告は、特に違法広告の比率が高い。ニコニコニュースの中に表示されているログリー株式会社の広告については、私の調べでは90.7%が薬機法違反広告だった。

ニコニコニュースについての調査動画はこちら
※非常に冗長なので強い興味がなければスルー推奨。

ニコニコニュースを運営する株式会社ドワンゴは、東証一部上場企業である株式会社KADOKAWAの子会社だ。また、ログリー株式会社は、ログリー株式会社自体が東証マザーズ上場企業だ。

上場企業ですら、違法な広告を大量に流通させ続け、それによって儲けている。それを考えれば、イケダハヤトさんのような小規模事業者が違法行為をしてしまうのは、無理もない。

イケダハヤトさんは、法に基づき、指導を受けたり、定量的な罰を与えられたりするべきだ。それは私も当然と思う。しかし一方で、今回のような違法広告が出てくる蓋然性は、業界構造として否めない。

薬機法違反広告で儲ける著名メディアたち

違法広告で儲けている会社は、上に挙げたドワンゴとログリーだけではない。多くのWebメディアが違法広告を表示して儲けている。

週刊誌系Webメディア

たとえば、文春オンライン女性自身デイリー新潮あたりはほぼ全てのページに薬機法違反広告が出ている。主に広告を仲介しているのは、それぞれ、ログリーpopInAkaNeGMOアドマーケティング株式会社)だ。

新聞社系Webメディア

新聞社のWebメディアでも同様のものはある。毎日新聞東京新聞神奈川新聞(カナロコ)などでも違法広告は表示されている。広告の仲介社はそれぞれOutbrainpopInuzou株式会社Speee)だ。

毎日新聞さんは、この問題で私を取材しに来てくれたことがある。現場の記者さんには問題意識があるようだが、Webメディア運営部門とは歩調が合っていないらしい。

また、株式会社Speeeは、昨年1月22日のNHKクローズアップ現代で、名指しで批判された会社だ。それからもう2年が経過しようとしているのに、まだ健全化されていない。Speeeは、もうインターネット広告業界から退場するべきだ。

その他のWebメディア

その他のWebメディアでも、同様の違法広告はよく表示されている。たとえば、バズフィードニフティニュースアゴラなどで違法広告をよく見る。主な広告仲介社は、それぞれpopInログリーpopInだ。

また、最近では新R25医療法違反の記事広告が出た。株式会社Oh my teethという会社の、歯科矯正サービスの広告だ。新R25の運営会社は株式会社Cyber Nowで、この会社は株式会社サイバーエージェントの100%子会社だ。上場企業の100%子会社だということだ。

上場企業の100%子会社なのに、違法行為をしてしまう。しかも、後から修正されることもない。悲しいことだが、これが今のインターネット広告業界の現実だ。

違法広告に出演する著名人について

なお、このOh my teethの一連の記事広告では、著名人である堀江貴文さんとはあちゅうさんが出ている。今回の場合、このおふたりに批判を向けるのは正しくない、と私は考える。

このおふたりは、この広告においては「演者」であり、編集権を持っていない。「最終的にどのような広告表現にするか」について責任を持つのは、今回で言えば、あくまでも、新R25を運営している株式会社Cyber Nowと、この広告表現を発注した株式会社Oh my teethだ。当然ながら、広告の適法性について責任を持つのもこの2社であるべきだ。

違法な広告が出ると、そこに出演する著名人は叩かれる。しかし多くの場合、追及の手はそこから先に伸びていかない。本当に悪いのは、演者にその表現を「指示」したり「追認」したりしている広告制作社と、その広告を依頼している会社だ。

演者であっても、一定の批判は向けられて当然だとは思う。けれども、最も悪いのは、広告制作会社だ。

演者に批判を浴びせるならば、それと同時に、その10倍、100倍の批判を、編集権を持つ広告制作会社へ向けてほしい。それらの会社を逃してしまえば、また別の著名人を担ぎ上げて、違法広告が制作され続けてしまう。

演者を隠れ蓑にして逃げ、違法広告を垂れ流し続ける会社がいる。そういう会社を、私は断じて許すことができない。

今回のイケダハヤトさんの場合

違法広告に出ている著名人を叩きすぎるべきではない、と書いた。しかし、今回のイケダハヤトさんについては、しっかりと批判すべきと思う。

今回のイケダハヤトさんの場合、イケダハヤトさんは、広告の演者であると同時に、広告の編集権を持つ広告制作社であり、なおかつ製品のメーカーでもある。今回のイケダハヤトさんの違法広告は、全てイケダハヤトさんの意思のみで制作されている。

だから私は、今回のイケダハヤトさんには、法に則った指導や罰を受けてほしいと願う。

今思うこと

少し前に、とあるテレビ番組から、この問題に関して取材を受けた。その際、消費者ができる対策はありますか、と聞かれた。

私は、「インターネット上の美容・健康食品系の広告は一切信用せず、近所のドラッグストアに売っているもの買ったほうが良い」と答えた。それを聞いた記者さんが苦笑したのを、よく覚えている。

インターネット広告業界に身を置くお前がそれを言ってしまうのか、と思われたのだろう。私だって、そんなことを言いたくはない。けれども、そう言わざるを得ない状態になっている。

前述の通り、現在のインターネット上の美容健食系広告は違法なものだらけだ。しかし、違法性を判断するには薬機法の知識が必要で、それを身につけることは簡単ではない。

もちろん、適法なインターネット広告もたくさんある。しかし、化粧品や健康食品は一般のドラッグストアでも買える。多くの場合、消費者側としては、必ずしもインターネット広告を経由してそれらの商品を買う必要はないはずだ。

「化粧品」や「健康食品」については、当面、1~2年くらいは、インターネット広告経由では購入しないことを、私としてはおすすめする。

美容健食系のインターネット広告は、あまりにも汚くなりすぎた。

違法性チェック機能の存在

インターネットが最強、マスコミはオワコン、というような文脈の言論をSNS上でよく見る。その論旨自体には、私も概ね同意する。

しかし、広告の品質に関しては、マスコミに圧倒的な優位性がある。マスコミから流れてくる広告は信用できる。インターネット広告は信用できない。

冒頭で、ニコニコニュースの違法広告の割合は71.9%、ログリー株式会社の違法広告の割合は90.7%、と書いた。インターネット上では、こういった高い割合で違法広告が日常的に表示されており、ユーザもそれを受け入れている。

もし、テレビ局のCMの70%が違法広告だったなら、そのテレビ局は倒産するまで叩かれるだろう。しかし、インターネットの世界では、それが実態として許容され続けてしまっている。

テレビ局には広告の内容をチェックする人たちがいる。テレビCMを流す際には、広告主からCMの素材を受け取ったあと、テレビ局側でもチェックが行われる。薬機法を含んださまざまな法律や、モラル面でのチェックだ。

もちろん、テレビ局は完璧だ、とは思わない。けれども、違法広告の割合は、インターネット広告よりも圧倒的に小さい。それは厳然たる事実だ。

インターネット広告では、チェック機能は無いに等しい。カネを出せば、違法な広告も流すことができる。新聞社運営のWebメディアなど、一般消費者から信頼度が高いところにさえ、違法な広告を出せる。

法律を守っている会社が潰れる

違法な広告を放置すれば、遵法性のある企業は潰れていく。広告を出せなくなるからだ。

一般的に、違法な広告は、適法な広告よりも訴求力が高い。だから、違法な広告で宣伝している企業の方が、広告にたくさんのお金を使うことができる。

現在の多くのWebメディアは、広告の適法性を気にしていない。違法だろうと適法だろうと関係なく、単純に、高いお金を払ってくれる会社の広告を優先して表示する。

その結果、法律を守っている会社の広告は表示されなくなる。そういった会社はインターネット広告から撤退したり、事業自体をやめたりする。

違法広告を放置すれば、法律を守っている企業が消えていく。遵法意識のある事業者が、一方的に損をしている。

私はこの現状を、絶対に許容できない。

そういう想いがあり、今回はイケダハヤトさんの違法性を指摘させて頂いた。

宏洋さんの動画について

今回のイケダハヤトさんのNMNサプリメントについては、さまざまな人が反応し、さまざまな意見を述べている。その中から、私個人の感情として、最も嬉しく心強かった動画を貼り付けて終わりたい。

宏洋さんというYouTuberさんがいる。私でもうっすら知っていた人なので、おそらく有名な人なのだと思う。下記動画だ。

宏洋さんは、「イケハヤ憎し」に留まらず、「正規のルールにしたがって販売してる人たちが損をしてしまうからダメ」というところまで言及してくれた。遵法意識の高い事業者を守る発言をしてくれたのだ。

宏洋さんは、おそらくこの問題について特別に知識があるわけではないと思う。いわば、一般消費者の立場の人だ。炎上が始まってから、手探りで丁寧に情報収集されたのだろう。

こういう言い方は不遜かもしれないが、そういう「一般消費者」の方が、事業者側のこと、業界構造のことまで考えを巡らせてくれたことが、心の底から、涙が出るほど、嬉しかった。

そして、一般消費者の方でもわかることを、業界内の人たちが実行できていない現実に、改めて暗澹とした気持ちになった。

美容健食系のインターネット広告業界は、腐り落ちつつある。復活できる、なんてことは、到底言えない。

違法広告は、毎日、星の数ほど産み出され、この瞬間にもさまざまな人のスマホやPCの画面の中に表示されている。

私は、せめて私ができることとして、私の目に入った違法広告の記録を、これからもやっていく。

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