トヨヒルブルーベリーの朝_episode1

2023年1月 とあるブルーベリー農園で見た夕暮れ

今日も夕暮れと共に一日が終わっていく。
このハウスの中のブルーベリーたちも、長い夜を越えて、朝をじっと待つのだろうか。
そんなことを思っていると、突然「びゅうっ」と吹いた冷たい風が、ある詩を連想させる。

カムチャツカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝陽にウィンクする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている

ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひととき耳をすますと
どこか遠くで目覚まし時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ

谷川 俊太郎『朝のリレー』


トヨヒル ブルーベリー農園にて

人の一生と同じく、ブルーベリーにも一生がある。

芽を出し、蕾ができ、花を咲かせ、やがて実をつける。

”人間の一生”という時間の尺度で測ってしまうと、あまりにもあっけないが、たしかにここに一つの命の物語がある。

「人は一人では生きていけない生き物である」
よく聞く言葉だ。

そしてまた、ブルーベリーも一緒なのだ。

ブルーベリーは、種にもよるが自分自身の花粉では受粉しにくい。
一つの品種だけを栽培しようと思っても、難しいのだ。
そして、異なる種を植えればそれでいいという訳でもなく、花粉を運んでくれる蜂の存在がいて初めて果実をつける。
(花粉を運ぶ蜂はマルハナバチが最もよいとされるらしい)

この小さなハウスの中では、花粉のリレーが昼夜おこなわれているようだ。

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