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地下蒸機都市ノ想ヒ出

 こんがお!

 どうも、苗輪和音です!


 今回は私が好きな物語について語らせていただきます。

 その物語とは……ズバリ!

〈蒸機公演 クロックワークメモリー〉

 です!!!

 突然大きな声を出して申し訳ありません。ついテンションが上がってしまいました。

 そもそも「なんそれ?」という方もおられると思うので、説明させていただきます。

〈蒸機公演 クロックワークメモリー〉の想い出


●蒸機公演ってなに?

 まず〈蒸機公演 クロックワークメモリー〉(以下、蒸機公演)とは、ブラウザゲーム『アイドルマスター シンデレラガールズ』(以下、モバマス)2018年10月に開催された一つのイベントを指します。

 様々な種類のイベントがあるモバマスの中でも特に物語性が強いイベント形式である「アイドルLIVEツアー」形式で開催された蒸機公演はその世界観やシナリオの完成度の高さから開催直後から反響を呼び、物語が後半に差し掛かる頃には「SNSで最近見かける蒸機公演が気になったから」とデレステのみだったユーザーがモバマスを始めたり引退していたユーザーが復帰してくるといった事が起こり、中には「シンデレラガールズに触れた事がないけど気になったから」とモバマスを始めるユーザーもいました。

 これまでも「アイドルLIVEツアー」形式のイベントは架空の物語をアイドル達が演じるというイベントの性質上「アイドルの新たな一面が見られる」事「様々な世界観でアイドル達が活躍する姿を見られる」事といった点やいわゆる「公式の二次創作」のような点などがモバマスユーザーから評価されており、「アイドルLIVEツアー」の開催告知が出されるたびにシナリオを楽しみにする声もよく見られます。

 そんな「アイドルLIVEツアー」の中で特に評価が高いもの、それが蒸機公演なのです。


●蒸機公演ってどんな話?

 なんとなく蒸機公演がどういうものか理解してもらえたと思うので、次は蒸機公演がどういったストーリーだったのかを簡単に説明させていただきます。(私の説明能力の不足により今一つ分からないわ。となった方はお手数ではございますが、ご自身でお調べください。申し訳ございません。)

まず、蒸機公演に登場するメインキャラは4人

・ヤスハ:蒸機公演の主役。岡崎泰葉が演じる自動人形(オートマトン)。廃棄されていた旧型だったがヨーコの手により修理されヨーコたちと共に花を咲かせるべく地上を目指す。現在のオートマトンとは異なりエゴチップと呼ばれる意識中枢を担うパーツが入っており、それにより自立した行動や思考が可能になっている。

・ヨーコ:もう1人の主役。斉藤洋子が演じる地下都市の最下層で蒸気義体から生身の人間まで相手をするスチームドク。物語開始前より地上を目指して様々な工作を行っており、地上に出る事を固く禁じている都市管理機構と敵対している。蒸気戦闘術スチーム=テの達人である。

・ナオ:神谷奈緒が演じる都市管理機構の行き過ぎた統制に反抗するレジスタンスの中心人物。ライフルやスチーム=テを使用した距離自在の戦闘能力を持つ。ヨーコに育てられたらしくスチーム=テの腕はヨーコ譲り。ヤスハやヨーコと共に地上を目指す。

・ユカ:中野有香が演じる地下都市の最高権力者。都市管理機構の最高幹部である蒸貴官のトップ・首席蒸貴官であり、ヤスハたちと敵対する存在。ヨーコに匹敵するほどのスチーム=テの使い手。元々ヨーコの教え子であり、どちらかと言えば地上に夢を見る性格だったが現在は冷酷無比な性格に変化している。

続いて、全体の大まかなあらすじ

・第一幕

 舞台は蒸気の力で全てが管理された地下都市。
 地上を目指す為に様々な活動を行っているヨーコは都市管理機構に追われる最中に廃棄された旧型のオートマトンを発見、回収。
 都市管理機構の追っ手を出し抜いて地下都市下層の住処へと戻ったヨーコは回収してきたオートマトンを修理し「ヤスハ」と名付ける。
 大昔に失われた古い言語で「葉がゆったり生い茂る様」を表す名前を貰ったヤスハは初めて出会う「葉」や「生い茂る」、「花」などの概念に戸惑いつつも自分を修理してくれたヨーコの夢を叶える為に地上を目指す事を目標とし、ヨーコと共に地上を目指す。
・第二幕

 地下都市下層にてヨーコを発見した都市管理機構は捕縛の為にすぐさま攻撃を開始。多勢に無勢の状況に陥りピンチとなった時、レジスタンスのナオが救出にくる。
 ナオの活躍もありなんとか逃げたヨーコとヤスハはそのままレジスタンスの基地へと向かう。そこでの生活、ヨーコやナオとの関わりの中でヤスハは自己を形成していきスチーム=テを習得する。
 しかしそんな生活も束の間、レジスタンスの基地を突き止めたユカが大勢のオートマトンを引き連れて進攻してくる。
 混戦状態となる中、ユカと相対したヨーコはヤスハやナオたち、他のレジスタンスメンバーを逃がす為にユカとの一騎打ちで時間を稼ぐも病に蝕まれていたヨーコは皆を逃がした後、ユカに捕らえられてしまう。
・第三幕

 地下都市最上層にヨーコが捕らえられている事を知ったヤスハとナオたちレジスタンスはヨーコ奪還の為の作戦を開始する。
 都市管理機構に対して攪乱作戦を行いつつヨーコの愛銃を取り戻したヤスハとナオはユカに奇襲を仕掛け、一瞬の隙をつきヨーコ奪還に成功する。
 レジスタンスの作戦が成功し都市管理機構の戦力を大幅に削る事が出来たかに思えたが、ユカは蒸気で駆動する巨大ロボ・スチーム・ユカを起動して攻撃を仕掛ける。激闘の末、ヨーコの攻撃にスチーム・ユカは倒れ、地上への道が開かれる。
・第四幕

 地下都市最上部の固く閉じられた扉を開き地上へ出てきたヤスハたちは、想像していたものとは全く違う荒れ果てた地上を目の当たりにして愕然とする。
 実は大昔に起きた最終戦争により地上は生命の住める環境ではなくなっていたのだ。そしてヨーコを蝕む病はヨーコが過去に地上へ来た時に汚染された環境に長く曝されすぎた故のものだという事も明らかとなる。
 地上の環境は生命にとっては毒でしかないが、オートマトンに対しては特に害が及ぶものでもないを知っていたヨーコは初めからヤスハに夢を託すつもりで地上を目指していたのだ。
 するとそこへユカが現れる。そしてヨーコと同じく地上の真実を知っていたユカは「統制こそが人類が生き延びる理想だ」と思想を説きながらヤスハに拳を向ける。そしてヤスハのスチーム=テとユカ独自のアレンジが加えられた蒸気格闘術カラ=テによる最終決戦が始まる。
・第五幕

 激闘を制したヤスハはヨーコやナオたちに別れを告げ、たった独りで汚染された地上を花でいっぱいにする為の旅を続けていく事になる。
 そしてそれから数千年後、役目を終え、機能を停止していたヤスハをヨーコに似たエンジニアが修理する。実は彼女はヨーコの子孫だったのだ。そして彼女はヤスハのエゴチップの隣に別のエゴチップを挿す。それはヨーコが己の終わりを悟った時にナオやユカに協力してもらい作ったヨーコの人格を移したエゴチップであった。
 数千年の時を越えて再会したヤスハとヨーコはお互いの夢だった緑で満たされた地上へと旅立つのだった。

まあまあ長くなりましたが、これが蒸機公演のあらすじです。

これ書いてるだけでちょっと泣きそうになりました。感動で。


●蒸機公演ここすきポイント

 それではここからは私が蒸機公演で好きなポイントを少し紹介させていただきます。

・作りこまれた緻密で重厚な世界観

 実際に蒸機公演をプレイした方やあらすじを読んでくださった方なら分かると思うんですけど、蒸機公演、一回きりのイベントとして終わらせるには惜しいくらい世界観が作りこまれているんです。

 蒸機公演のストーリーはいわゆる「スチームパンク」です。そしてスチームパンクによくある「ディストピア」の要素を割合の多くを占めます。しかも現代的なスチームパンクものというよりも古典的なものだと個人的に感じています。

 それはスチームパンク要素の描き方は勿論、ディストピアの描き方に表れていると思います。具体的な例を挙げると『1984年/ジョージ・オーウェル』『華氏451度/レイ・ブラッドベリ』のような雰囲気を感じるのです。

 また世界観に合った「市民ランク」による居住階層区分「中央演算母(セントラル・エンジン)」「都市管理機構」「蒸貴官(スチームクラート)」「執行官(エンフォーサー)」といった管理組織図や「思想燻蒸」といった思想の矯正方法などのスチームパンク要素と上手く絡めたオリジナル要素も魅力の一つだと感じます。

 文字だけだと何をされるのか全然分からない「思想燻蒸」とか想像をかき立てられますよね。いったいどういう矯正方法なんだ……。

 また映画『リベリオン』に登場する架空の格闘術『ガン=カタ』のような『蒸気戦闘術スチーム=テ』の要素も魅力です。どんなものなのか全く分からないけどなんかカッコイイ。だがそれが良い。

 これだけでやろうと思えばゲーム一本作れますよ。

・魅力的なサブキャラクターたち

 1つ目と被ってしまう部分ではありますが、イベントに登場する様々なサブキャラがより一層の世界観拡大に一役買っています。

 例えば、「偉大なる冒険家ヘレン」はヨーコたちレジスタンスとはまた違った形で地上を目指す謎の人物として描かれていますし「遺物探索チーム」は本編とは別のストーリーを描くサイドストーリーで描かれているようにレジスタンスの一員として地下都市最下層B300Fから地上までを探索し、旧時代の遺物を見つけながら最終的にヨーコの人格が移植される事になるエゴチップを発見してきます。

 そして特に私が好きなのが「弱気な見張り兵モリクボ」「歴戦の銃士・ツインリボルバー」「進撃のレジスタンス」で描かれるレジスタンスの猛者とルーキーの話と「ベテラン狙撃手とルーキー兵」で描かれる都市管理機構の猛者とルーキーの話。そして「ラストスタンド・ソルジャー」で描かれるレジスタンスと都市管理機構それぞれのルーキーたちの成長と哀愁です。

 レジスタンス側では弱気で逃げたいながらも皆を守るため戦うモリクボとその若い戦士を守り自由をつかみ取る為に戦う歴戦の銃士メグミとノアの話が描かれ、都市管理機構側では都市や思想を守る為に戦うベテラン狙撃手シノブと彼女を慕うルーキー兵イブキの姿が描かれます。

 そして最後の「ラストスタンド・ソルジャー」で描かれるのは戦いを生き残ったモリクボとイブキが地上を目の当たりにし、それぞれの信念の揺らぎや先の戦いで自らを守るために散っていった者たちへの言葉に出来ない感情を発露させます。そして、「この戦いに勝者なんてはじめから居なかった」
という言葉を残します。

 この一連のストーリーは客観的に見た蒸機公演全体のストーリーへのアンチテーゼとなっており、レジスタンスも都市管理機構の兵士も「地上に花を咲かせる」というエゴで多くの人々を巻き込んでしまったヨーコとヤスハ、「思想を管理し地上への想いを断ち切った方が幸せである」という自己満足で全てを管理した都市管理機構の被害者なのだという事を暗に示してるようにも思えます。

 現実に起きる戦争や紛争、革命もそれぞれの中心にいる人たちにとっては劇的な物語になりますが、それに巻き込まれた大多数の人々からすればたまったものではありません。

 それがモリクボとイブキのやり取りから感じたものです。

ブラウザゲームのいちイベントという数少ないリソースの中でこれだけの物語を紡いだのは本当に称賛されるべき事だと思いますし、これからも語り継いでいかなければならない事だと思います。


●最後に

 ここまでつらつらと書いておいて今更身も蓋もありませんが、蒸機公演の良さは実際にプレイしたり読んでみないと真に理解するのは難しいのではないかと思います。

 「岡崎泰葉が人形の役をする」という事の重大さや「斉藤洋子が不健康な役をする」という事の意外性などなど挙げていけば枚挙に暇がありません。

 そういう意味でもモバマスやデレステをプレイしてアイドルへの理解を深めてから蒸機公演に挑むのが一番良いルートだと思います。

 しかし、そんなモバマスも2023年3月をもってサービスを終了してしまいます。そうするともう見る事は叶いません。

 もちろん有志の方が外部サイトで蒸機公演を閲覧できるように色々してくれるかもしれませんが、それは"もしも″の話です。

 だから私は少しでも蒸機公演の魅力を残せればと思い今回の記事を書きました。

 まあこの間公開された『ETANITY MEMOIRES』で蒸機公演の補完があったのもあるのですが!

 ただこの記事だけだとどうしてイベント最終日にTwitterのトレンド上位に「蒸機公演」が入ったのか分からないと思いますので、何処かで実際にテキストを読む機会があれば是非とも読んでいただきたいと思います。読めば分かるので。

ちなみに蒸機公演でヤスハを演じた岡崎泰葉は、関裕美・白菊ほたる・松尾千鶴の3人と「GIRLS BE NEXT STEP」というユニットを組んでいまして、この2018年の蒸機公演を皮切りに2019年の空想公演、2020年の天冥公演、2021年の幻妖公演とおよそ4年間の秋のアイドルLIVEツアーは上記のユニットメンバーが毎年1人ずつ主役として活躍するイベント内容となっていました。

そして私は彼女たちのPでもあるのでまた機会があればそれらの公演(GBNS四部作(勝手に言ってるだけ))についても書いていけたらと思っています。

 またこの「アイドルLIVEツアー」という形式のイベントには他にもたくさんの名作があるのでまだ読んだ事がない方はちょっと色々調べてみてください。なんかこういう話ないの?って聞かれたら答えますので~!

刑事公演とか玩具公演とか美食公演とか友星公演とか輝劇公演とかとかとかとかとか!!!!!!!!!

 いっぱいあるのでね……!

 という訳で終わります。


 本日もここまで読んでいただきありがとうございました!

 それじゃ、おつがお~!

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