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交響曲 《少女・関裕美》第一楽章『楽園』

 こんがお!

 どうも、苗輪和音です!

 今回は、久しぶりに歌詞の個人的解釈回です。

 突然ですが皆さんは「関 裕美(せき ひろみ)」というキャラクターと「楽園」という楽曲をご存知ですか?

 関裕美とは、『アイドルマスター』シリーズの一つである『アイドルマスター シンデレラガールズ』ブランドに登場するアイドルの一人です。

 そしてその関裕美が初めて歌ったソロ曲が「楽園」です。

 その「楽園」について、関裕美という少女がどういうキャラクターなのかを交えつつお話をさせていただこうかと思います。

 関裕美という少女について、この記事の前提知識をお求めの方はこちらのサイトをご覧ください。関裕美Pの有志が作成し運営している関裕美の情報がまとめられたサイトです。クオリティが凄いから見ていけ!な!

「楽園」を紐解く

さぁ 光射す方へ 近付く夜明け 眩しいな
ねぇ 遠くで聞こえる 全てを包む 暖かな海

 Aメロ

 イントロから続くピアノが中心に据えられたメロディーに乗せて関ちゃんの可愛い声で歌われる抽象的な歌詞。

 これは恐らく敢えて聞き手がどうとでも捉えられるようになっているのだと思う。
 その証拠として上段の “さぁ 光射す方へ 近付く夜明け 眩しいな” は「うつむきがちな暗い自分から光り輝くアイドルへ近づいていく過程の心情」とも「ライブ開演前の真っ暗な会場がライブ開演と同時に照明やペンライトなどで輝いていく情景」とも取ることが出来、下段の “ねぇ 遠くで聞こえる 全てを包む 暖かな海” のも「出会った頃のうつむきがちでつっけんどんな自分を受け入れ成長を見守ってくれたプロデューサーや他のアイドルたちへの想い」とも「ライブ開演と同時に鳴り響くファン達の声援やペンライトの光の比喩」とも取ることが出来る。

 他にもいろんな意味が含まれていると思うので、聞く人によって解釈が変わるのは当たり前っちゃ当たり前なのである。画面の前の関裕美Pも自分の解釈を考えてみよう!

スイスイと 泳ぎたいけど
どちらに 行けばいいかな
目を閉じてみて ドキドキしたら
私の中に 答えはあるよ

 Bメロ

 Aメロに引き続きこちらも比喩表現の使われた歌詞。

 前半の “スイスイと 泳ぎたいけど どちらに 行けばいいかな” はそのまま関ちゃんの心情が表れているように感じる。
 手作りハイクオリティアクセを作れるほど手先は器用なのに生き方や性格的にはとんでもなく不器用な関ちゃんは今まで何度も道を見失い自信ゲージをガンガン削ってきた。初期の関ちゃんなら歌詞もここで終わっていたかもしれない。しかしアイドルとしてデビューし、いろんな人の温かみに触れてきた関ちゃんは一味違う。

 後半の “目を閉じてみて ドキドキしたら 私の中に 答えはあるよ” の歌詞はまさしく関ちゃんの成長の証だと思う。
 迷って立ち往生して流されやすかった関ちゃんは、自分で進みたい道を選んで進めるようになったのだ。しかも「即決」ではなく「立ち止まって目を閉じる」という事をする。焦っていると「立ち止まって目を閉じる」なんて事自体発想できない。でも、広い世界を知り自分を信じられるようになった関ちゃんは一度立ち止まって考えられる余裕を身につけ、そして自分の中の「答え」を信じられるようになった。これを成長と呼ばすしてなんと言うか!

 関ちゃんに限らず誰にだって生きていれば道を見失ってどこに行けばいいのか分からなくなってしまう時がある。そんな時は関ちゃんが言うように一度立ち止まって目を閉じてみて、ドキドキする「答え」の方へゆっくりとでも歩いていけば良いのではないだろうか。

 Aメロ後半からBメロ前半で比喩表現の方向性が「海」なのも良いよね……作詞の渡辺量さんの作家レベルが天元突破してるわ……!

 サビ行ってみよ〜

揺れる 揺れる 光の中
私らしく 笑えるかな
特別なこと 何もできないよ
たくさんの笑顔 見せてあげるね あなたに向けて

 サビ

 ここは比喩……に見せかけた情景描写だと個人的には思っている。

 前半の “揺れる 揺れる 光の中 私らしく 笑えるかな” の歌詞からはライブのステージに立った関ちゃんから見えるペンライトやサイリウムが揺れている景色とそれを見た関ちゃんの少しの緊張と不安が垣間見える。「自分は自分を迎えていれてくれる皆の期待に応えられるのだろうか」という考えもよぎったのかもしれない。それを受けてか歌い方も心なしか不安そうだ。

 けど成長した関ちゃんに心配はご無用。関裕美Pにとってとんでもない嬉しい爆弾歌詞である “特別なこと 何もできないよ たくさんの笑顔 見せてあげるね あなたに向けて” が投げられる。
 初期の関ちゃんは「自分は何か特別なことが出来るのだろうか?自分にしかないものなんかあるのだろうか?」とアイデンティティを探していました。しかし関裕美の魅力は特別なものではない。関裕美の魅力、それは『笑顔』なのだ。

 関裕美にとって『笑顔』とは、とてつもなく重要な意味を持っている。
 笑うことに苦手意識が強くあった以前の関ちゃんは時間が空くと手鏡を使って笑顔の練習をしたり笑顔が素敵なアイドル達の笑顔を観察して研究していたりしていたのだが、やはり最後にして最大の壁である「誰かを笑顔にさせる笑顔」に苦心していた。

 そんな関ちゃんが、“たくさんの笑顔 見せてあげるね あなたに向けて” と言っているのだ。泣くしかないだろう。あの関ちゃんが『笑顔』をたくさん見せてくれるのだ。成長を感じざるを得ない。一番だけで感情が第二宇宙速度で拡大していく。

 だがまだこれは『楽園』の序章に過ぎない。

 2番へ進もう。

さぁ 思い出作ろう 大切な日々 重ねて
ねぇ 言えない秘密に 気付いてほしい 夕暮れまでに

 A‘メロ

 自身のコンプレックスから思い出を作ることに恐怖心や抵抗感のあった関ちゃんが、遂にこんな事を言えるようになったのだ。乱舞するしかない。
 事実関ちゃんは、アイドルになってからアイドル仲間や学校の友人、事務所の人たち、ファンのみんな、プロデューサーと思い出を重ねていっている。特に同世代でユニットを組んでいる松尾千鶴・白菊ほたる・岡崎泰葉・森久保乃々たちと仲が良く、よく一緒に遊びにいったりしているのでめちゃくちゃ最高なのである。大切な日々を重ねていってほしい。

 そしてこの『楽園』の最大の謎である「言えない秘密」。これは一体なんなのか。

 これはあくまで僕の考えなのだが、「今まで自分を支えてくれたプロデューサーや家族、友人たちへの想い」なのだと思う。そこに関ちゃん元来の恥ずかしがり屋な部分が作用して「言えない秘密」というか「敢えて言わない」んだと思う。「自分との信頼関係がしっかりあるのなら言わなくても気付いてくれるよね?」と言わんばかりの圧力。関ちゃんにジッ…と見られたら覚悟しなくちゃなりません。その直後 “夕暮れまでに” という文言が出てきているので、これにより「言えない秘密」に気付けるタイムリミットが設定されている事が分かる。

 では「夕暮れ」とはいつなのか。もちろんそのまま受け取って普通に1日の中の午後4時ごろ〜午後6時ごろまでとしても良いのだが、相手は稀代の作家・渡辺量である。そう簡単にいく訳がない。

 ここで考えてほしいのが、この楽曲のタイトルにもなっている『楽園』についてだ。ここで言われる『楽園』がなんなのかが分かれば、「夕暮れ」がなんなのかがなんとなくではあるが理解できるのではないだろうか。

 ずばり『楽園』とは、「関裕美のアイドル人生そのもの」だ。

 初っ端の「夜明け」はアイドルとしてデビューする直前のことで、ここの「夕暮れ」はアイドル人生の絶頂期を過ぎ少し落ち着いた時期、有り体に言えば「引退」という物を考え始める時期のことだと考えられる。

 つまり、ここの歌詞は「私が言えないホントの気持ちに引退を考えるまでに気付いてほしい」という関ちゃんなりの想いの伝え方なのだ。最高。

何度でも 繰り返したい
そう思えるヒト・コトに
この胸の音 止まないうちに
背伸びしながら 巡り会いたい

 B‘メロ

 ここの歌詞は『楽園』という言葉がこの曲で意味するところを念頭に置いた上で考えると案外スルッと入ってくる。

 まずは前半の “何度でも 繰り返したい そう思えるヒト・コトに” から考えていこう。
 関ちゃんが「何度でも繰り返したい」と願っているのはもちろん『楽園』=「アイドル人生」である。アイドルになる前は自信が持てず「2度と同じ人生は送りたくない」と思ってる雰囲気さえあった子が、「何度でも繰り返したい」と思えるくらいまでに自信がついたのだ。

 ではなぜ「何度でも繰り返したい」と思えるようになったのか。その答えが直後の「そう思えるヒト・コト」なのだ。

 アイドルになっていろんな経験をして心を通じ合わせられる友と出逢ってきた関ちゃんはこれからもそういうヒト・コトに巡り合っていきたいという関ちゃんの未来へのドキドキとワクワクが溢れているとても良い歌詞だと思う。
 そしてこの「ヒト・コト」という歌詞、実際に歌っているのを聞くと「一言」となるようになっている。そうするとこれは関ちゃんが実際に言われて心に残ってる言葉があるという事ではないだろうか。
 関ちゃんPが関ちゃんに言った言葉として思いつくのは一つしかない。賢明な関ちゃんPならもうお分かりであろう。

 そう、「君はアイドルになる」だ。

 もしこの言葉を関ちゃんが心に留めていてくれていたなら、それはプロデューサー冥利に尽きるほかないと思う。

 そこから続く “この胸の音 止まないうちに 背伸びしながら 巡り会いたい” もそのままの意味として捉えて問題はないだろう。

 やっぱり関ちゃんはアイドル人生にドキドキしてワクワクしている。関ちゃん風に言うなら「世界が輝いて見えている」のだ。だからこそそのドキドキとワクワクを忘れないうちに心と体が成長して今の気持ちが変わってしまう前にいろんな大切でときめくヒト・コトに巡り会いたいのである。

 自分にとってとても魅力的なコトに出逢った時にそれについてもっとたくさん知ってもっとたくさん見たい!と思った経験は誰にでもあるのではないかと思う。関ちゃんはまさに今それの真っ最中なのだ。それは割とすぐに消えてしまう興味の炎かもしれないし死ぬまで続く興味の炎かもしれない。どちらにせよプロデューサーは『アイドル』を探求する彼女が迷子にならないように先導して一緒に歩いていく事が重要だと考える。

廻る 廻る 旅の途中
出会い 別れ 繰り返して
愛し愛され 生きる喜びを
今始めよう かけがえのない あなたと二人

 サビ‘

 もう何も言いようがない完璧な詞。渡辺量先生、ありがとうございます……!!!

 人は誰でも人生という旅の中でいろんな人といろんな出会い方をして、また同じようにいろんな風に別れていく。

 その中で『アイドルとしての人生』を歩んでいる関ちゃんは、ファンのみんなや友達、事務所のスタッフや自分に関わってくれた全ての人たちを愛し、また同じようにみんなから愛されて生きるという喜びを今、かけがえのない「あなた」と二人で始めようと言ってくれる。

 ここで言う「あなた」にはこの曲を聴いてくれている人全てが当てはまると個人的には考えている。というかここが何処かに偏りすぎるとこの『楽園』が持つ絶対的普遍性が失われてしまう。だからこれで正解なのだ。
 まあ物凄くメタ的な事を言うと恐らく担当プロデューサーの事なのだろうが、あくまで作品世界では裏方の存在。作品世界で世界に向けて発表された曲にそんな指向性の高い詞を書く訳にはいかない。だから、これでいいのだ!

いつか やがて 旅立つ朝
笑顔 涙 あふれるでしょう
優しい言葉 消えない想いと
いついつまでも 輝き続ける 私の心

 Cメロ

 ここでは『楽園』から旅立つ時、つまり現在からすると未来の話が語られる。

 ここで注目してほしいのが、最初の「いつか」だ。これがあるのとないのでは曲全体が持つ意味や関裕美というキャラの深掘りにまで影響が出てくる。

 というのも「いつか」という予測だからここは確定した未来の話ではなく現在の関ちゃんが思い描いている旅立ちの場面なのである。

 あの関ちゃんが自分というストーリーの「笑顔 涙 あふれる」幸せな結末を思い描いている。この事だけで関ちゃんPは無限にツイートが出来、無限に意見を交わせるのだ。

 そしてみんなから貰った「優しい言葉 消えない想い」と「いついつまでも 輝き続ける 私の心」が関裕美というアイドルが去った後の『楽園』にも未来永劫消える事なく遺り続けていくのだ。『それ』が、うつむきがちで自分を変えたいと思っているけど踏ん切りがつかないどっかの誰かの背中を押してくれる事を信じているから。

 アイドルは、不滅なのだ。

あの日 抱いた 遙かな夢
いつか きっと 叶えるから
私のそばで 見守ってください
選んだ道を 歩き始めよう あなたと二人

 大サビ

 もうここまで読んでくださった方なら、この歌詞が意味するところがなんなのか分かってくれると思う。

 関ちゃんが抱いた「遥かな夢」がなんなのか、それは誰にも分からない。「私みたいな人でもトップアイドルになれるって事を証明する」という夢かもしれないし「自分が旅立った後も誰かの背中を押してあげられる存在になる」という夢かもしれない。

 その内容は誰にも分からないが、関ちゃんが「いつか きっと叶える」と言っているのだ。ただ信じて待っていよう。アイドルが急ぎ過ぎて消えちゃわないように隣でペースキーパーをしながら。選んだ道を、一緒に歩きながら。

 という訳で、『楽園』やっぱり名曲ですね。個人的にですが「アイマス楽曲TOP10ランキング」を作れと言われたら確実に選出する楽曲です。この曲の途中で関ちゃんがお辞儀をする振り付けがあるんですけど、それがまた良いんすよ……プロデューサーの涙腺が削り切られちゃう……!

 途中にもチラッと書きましたが、この曲の強みは神作家・渡辺量が作りあげた絶対的普遍性だと思っています。この曲は関ちゃんが歌ってこそ100000000%のパワーを引き出せるんですが、他のアイドルが歌っても1000%は引き出せるのではないかな。某大手事務所のVTuberさんもカバーされてますし、それくらい魅力があって誰の心にも響くものなんですよね。

 で、今回改めて歌詞読んでちょっと驚いたのが「言い方は違うけど同じ意味」な歌詞が一切ない事です。これ地味に凄い事だと思うんですけど、どうですかね?

 これはあくまで僕というオタクの一個人の勝手な妄想解釈なので、是非とも皆さんのオリジナルな解釈を考えてみてください。そうする事で楽曲の世界観は自分が思っている以上に広くなります。楽しいですよ。

 それでは、この辺で!

 おつがお〜!

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