Ai原

藍原知音(あいはらかずね) 詩・エッセイに挑戦中です

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  • ジャンル問わず、創作した詩をまとめたものです。

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詩を書きはじめるまで

 昨年、大学に入学してから遠のいていた文芸創作の再開を試みた。詩を選んだのは少しだけ欲が出たからである。  高校時代に所属していた文芸部では、実質二人の部員でありながらも全国大会への機会をいただくなど、とても楽しい活動ができていた。二人で活動していた頃の相方は今は関東の大学へ進学してしまい、ここ2年で個人的に連絡は交わしていないものの、何か書こうと思うと彼がチラつくからどうしようもない。彼は同年代の高校生に比べて、頭ひとつ創作の才能がある。何を読んでも面白い。小説も詩も、短

    • 地獄の蓮

      針のない時計が 血潮の波の中で揺れている 長針と短針が体を重ねて はじめて姿を見せる 鼓動や思い出が 確かに私のものなのだと 零時の鐘が始まりと終わりを告げる 未来が掠れているのに 来世を信じる優しい心を 絶望のゴールに並べている 過去の見聞を恨んでしまう 輪廻転生 極楽浄土 閻魔の裁きをご都合主義で逃れている 極楽の蓮のように咲く 地獄の池でもがく手は どうしても憎めない 穴のあいた眼差しの先に 言葉に姿を変える鬼が佇んでいる なんという幸福 喉を千切り取った感情を

      • とある祈り

        畳の上で正座をして 手を合わせて 明日の幸せを祈る 何となく守られているような気がする 祈りは最古の防衛本能 その姿勢は何よりも無防備で 肉体と精神を 自分に埋まる文明へとさらけ出す 表裏一体の告白 傾いで流れる前髪が影を捕らえる 懇願ではない 私は私のために何かに祈りを捧げている 捧げものなのです ありがたいものを受け取るために こうしてへりくだっているのです 自分が自分であるために とある一面で弱者であると 告白をしているのです 名を知らず口も利かない 被崇拝者という

        • 騒がしきもの

          咲き誇る一輪の花を愛していた 花は私の愛にも寂しさにも気づかないまま 天の太陽を見上げて種を残していくばかり おしべとめしべの狭間を 仲人の蜂が無関心に飛び回っている 愛を信じずとも生きるために 生かしあっている彼らがひどくうらやましい 私たちは愛だの性だのに 生き残るための貪欲さと賢さを いくつも重ねているからかしましい どこかで産声と走馬灯が交差して 無関心な蜂が魂を運んでいると知らずに 騒々しさに虚勢を張っている 愚かに賢く生きよう 人類最愛のスローガン 蜂や花の生

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        詩を書きはじめるまで

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        • 9本
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          2本
        • 作品エッセイ
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        記事

          ゆめごとき

          第32回 詩と思想新人賞に応募し、第一次選考通過になった作品です。 まさか自分の名前が誌面に並んでいるとは思わず、声が出ました。独りよがりの詩ですが、10代を終えるまでに言語化できてよかった記憶の一部です。 熱がこもったままの目頭に 眠りの中で放たれた叫びが金槌を落とす 数年ぶりの悪夢に 幼子の頃と同じ味の涙を 私は止めることが出来なかった 六畳間の真ん中の薄い敷布団の上で 昼前の陽の光を浴びながら涙を拭う 私はまだ逃れられていなかった そんな悲しみを初めて嘆いた あなた

          ゆめごとき

          心の覗き穴

          覗き穴に注がれる人間の本性 心は小さな小窓から 全てを託されてこちらを見ようとする 美しい君がこちらを覗くことを 光が差す心地で信じて 緩やかに扉をたたく 言葉はいくらでも嘘をつく と言った君には 口紅をプレゼントして 君が嘘をつく時さえも 心浮いて浸れるように 防衛線を張っていたりする 正しいものだけじゃないという正しさを 悲しい思い出から学んでしまった 君の過去も嘘も愚痴も知っている 口紅を引かずに言葉を言い放つ唇に 目を奪われた 君の言葉は間違っているよと 君の瞳を

          心の覗き穴

          【結果発表】詩の公募と詩作

           そろそろ11月。沖縄も涼しくなってきました。私が詩を書き始めて一年が経とうとしています。たしか去年の涼しくなり始めた頃、衝動的に詩を書いたのがきっかけでした。高校の時にやっていた文芸活動が懐かしくなり、在学中の大学が出していた公募に挑戦することをスタートラインに定めました。そこから一年、現時点で結果の出ている公募を振り返ろうと思います。 令和4年度(2022年度)  初めての公募で入賞までするとは思っておらず「詩作を始める」「公募にトライする」という意味ではいいスタートを

          【結果発表】詩の公募と詩作

          堕天一夜

           第19回文芸思潮現代詩賞に応募し、佳作をいただいた三作品の内の一つです。  物語チックな詩も書いてみよう!と作ったところ、ショートショートを書いてみたくなりました。実際書ける力があるかどうかは分かりませんが… 月が胡乱な海を照らす 楫が波を切る音さえも 悲しさを歌うから 小さな帆に開いた穴を繕って 満潮の波打ち際に 帆のつかない舟を浮かべている 地上の光を嫌う星々や 惑星を食べてしまおうという烏滸がましさを 無垢を演じて隠していた ままならない愛し方を 下手糞なささやき

          堕天一夜

          フェンスの街

           2023.9.2 琉球詩壇へ掲載された作品です。  琉球詩壇の存在は知ってはいたのですが、ずっと尻込みしていたので意を決して投稿しました。初めての投稿だったので掲載が叶ってとても嬉しかったです。  普段は西原裕美さんが選者を務められていますが、今回は代理選考で宮城隆弘さんが選者をされています。 あの街やこの街は 戦争の残り香がする 先の戦争から再び立とうとした 美しき人々の足跡がよく見える 横切る少女を目で追えば 女衒の背中が夜を歩む 踊りと酒と歌の狭間から 空を掻っ捌く

          フェンスの街

          特別と色眼鏡

                                                         個性を見つけたくて 自らの正体を知りたくて 無理して特別を見つけて オマージュな日々を続けながら はぐらかしている 生きていくと 目に入る全てに色がついていく 高く真っ白で鮮やかな雲に夏の到来を知る いかに美しくとどめようかと 景色に言葉を見つけて ノートの端に書き留めた 私は何色だろうか 鏡に映る私は言葉にない色で 特別な私の形など微塵もない ノートの端にぐるぐると彷徨って そ

          特別と色眼鏡

          嵐あと

          嵐の尻尾が残る朝 ざわざわと動き出す人々 未だ灯らない信号を譲り合いながら 粉々になった木の葉を車につけて 変わらない日々のルーティンでアクセルを踏む 風の中で気の急いたセミが鳴き 倒木と枝の間に鳥たちの声 木々や草花はみんなすっかりやつれて 風が駆け抜けた方へ倒れこんだ 海はまだ大しけ いつもと違う潮の匂い 大橋は鈍く揺れて 大風が口笛を吹いている 加減を知らない嵐は 困り果てた人々に満足したのか 島から離れた海の上で 大漁から逃れた魚たちを脅かしている まだ去らぬ嵐

          嵐あと

          心を救う

          一度でもこの心が灰になってくれたら 土に還れるのなら 海の底で横たわれるのなら 渇きを恐れることはないのに 命の聖域へ行くには この心は無力すぎる 身勝手な「愛して」を この世界が許すのなら この顔が消えてしまってもいい 緩やかな病を抱えた私は 毒蛇の牙を隠して 小刻みに震えている 「愛してる」が 私を孤独にする ニライカナイを恨んで ニライカナイに焦がれている 緩やかな病は 誰よりも近くにいる 形も色もない愛よりも 地平線の向こうで輝いている 初恋は殺人現場

          心を救う

          詩の公募を経て 2022年度②

          《詩の公募を経て 2022年度①》に引き続き、作品に対する何かをお伝えできれば、と思います。  作品自体は琉球大学附属図書館のサイトから読めるようになっているようです。受賞した作品はこちらには載せることができないので、そちらから作品を読んでいただけると幸いです。他の受賞作品もとても素敵ですので、是非ともよろしくお願いいたします。審査員の先生方の講評も閲覧できます。  第16回琉球大学びぶりお文学賞の詩部門にて、佳作をいただいた『欠落』について。  公募に向けて書いた初めての

          詩の公募を経て 2022年度②

          詩の公募を経て 2022年度①

           昨年(2022年)、私は三つの詩の公募へ作品を出し、そのうち二つに入賞した。公募というものに人生で初めて挑戦し、右も左も分からぬまま原稿用紙に書き殴った。まずは同年代の多い土俵で自分の力を試したい、と大学が公募を出している賞に限って応募した。特に琉球大学びぶりお文学賞詩部門・名桜文学賞詩部門の二つは以前から耳にしたことのある地元の公募であったために是非とも挑戦したかった。  詩を書きながら学ぶうちに、今の沖縄には同年代(10〜20代)の若い詩人が何人もいることを知り、たくさ

          詩の公募を経て 2022年度①

          冒涜者の祈り

          以前、投稿した同名作品を加筆修正した作品です。 お願いしますと手を合わせる 誰に願うわけでもなく ただ神や仏がいるらしい という噂をスマホで知ってから 美の神はアフロディーテ 火の神は加具土命というらしい 雷の神はトールといい 貧乏神は貧乏神 これまたよろしい姿になって 推しだと言われる 透過素材の聖母子像 線香がわりの紙たばこ 天使の絵文字スタンプ 神の名を得たスポーツ選手 連なる鳥居が彩るスマホ画面 ネオンにはじける涅槃像 信じたものへ 信じるといいらしい何かへ

          冒涜者の祈り

          白鳩の背

          第8回うえだ七夕文学賞 詩部門に応募した作品です。 落選ではありましたが、今年も挑戦してみたいです。 白鳩の背から 膨れ上がったわがままが零れ落ちた 小さな白鳩は見向きもせずに 一面の青に吸われていく 地に足をつけた人々は 零れ落ちたものをただ見つめるだけ 誰も手を伸ばそうとしないわがままは 灼熱のアスファルトに散らばって 静かに静かに消えていく 涙を浮かべた誰かが 零れ落ちる無数のわがままへ腕を広げる 知らない誰かのわがままを 力強く抱きしめた 小さな白鳩の背に乗せては

          白鳩の背