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「三菱の至宝展」に行ったら三菱創業四代のことが知りたくなった番外編③翻訳と異読のはなし

岩崎久彌が収集したコレクションには異なる言語で書かれた同じ本や異なる時代に書かれた同じ書物の写本、異なる版で印刷された同じ本などが数多く収蔵されています。今回の展示では、ベルギー、フランス、オランダで出版された翻訳本が揃っている《東方見聞録》がこれに該当します。

複数の言語で書かれた同一の書籍を収集することは、翻訳の過程において生じる記述のズレを突き止めるために非常に重要です。聖典などの場合、些細な翻訳の違いがその言語圏の宗教教義や宗教文化に対して大きな影響を及ぼすことがあります。

また、翻訳以外にも、組版や写本作成時の人為的なミス、改版に伴う記述の再編も、1つの書籍に対して複数のバリエーションを与えるきっかけになりえます。「異読」と呼ばれるこれらの差異は書籍資料を扱う研究にとって非常に重要な検討要素であると同時に、多くの研究者が頭を悩ませる部分でもあります。

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