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サくら&りんゴ #35 予想外のそのまた予想外は日常?

カナダ不動産事情と湖畔の危機

突然の弁護士からのメールで私は、予定外の276624CAD(約2千百万円)を請求されている。

詳細#33~

湖畔の家を売らなければならない危機である。

この地にいると予想外のことが起こると予想しておくという予想のそのまた予想外の事が起こることを予想しておくことを忘れていた。。。あー頭の中がとっ散らかっている。。。

自分の状況の把握が落ち着くと、弁護士に会うための準備である。
銀行で全く頼りにならない銀行マンたちと出くわしてきた経験から、今回の事もできる限り自分で調べた方がよさそうである。
まずはこのあたりの住宅事情を調べるのに忙しい。
不動産関係のウェブに登録して、過去半年に売れた家、今売りに出されている家の詳細を見る。

だいたい日本とは違って不動産は、土地よりもそこに建っている家に注目される。
しかし最近売れたという住宅の詳細には


Age(築年数))30-50年
サイズ 1000-1500 sq ft

数字が適当過ぎる・・・

1square foot は大体0.09平方メートル。
私などはさらに坪換算しないとピンとこない。
1500Square foot だと42坪あたりか。
土地ではなく住宅面積の事である

日本では去年母が亡くなって空き家となり、姉と相談して売ることになった。奈良市内の住宅地である。
周りの家との境界を確かめることは必需。大抵十字の印が埋め込まれている。隣家だけでない。斜め後ろの家とも連絡を取り、その印の確認をした。隣との境界塀は、その十字の内側に立つか真ん中かあるいは外側か、境界線に沿っているかはみ出ている個所があるか等、そんなことも問題になった。
しかしここ湖畔の家のあたりでは・・・ご想像の通りである。

隣家との間には頼りないワイヤーフェンスがあるが、いつ誰が取り付けたのかわからないしろもので あっちやこっちでたわんだりゆがんだり穴があいたりしている。ちろん十字の印などない。ドライブウェイではそこに止められている隣人のボートのキャリア(?)が日々ずれてこちらまで侵入してきている。境界線がないので正確には判別しにくいが、さすがに侵入しすぎでこれだとこちらの芝が刈れないと文句を言った。しかしウチ側のデイリリーがフェンスを越してぼうぼうと育っているのでお互い様かもしれない。

売りにでている住宅の詳細をさらに調べる
Water supply :well
水の供給が井戸水。

言っておくが湖畔の家は一応シティに管理されている水道である。

ある時、湖に長い長いパイプを引っ張り込んでいる人がいた。なんでもガーデン用など飲料でない使用に湖の水を勝手に引いてもいいらしい。しかし夏場はいいが氷の張る冬は無理だろう。車が走れる厚さの氷が張るわけで浅瀬ではパイプが凍って使えない。

さて、現時点で公開されている売約済みのものは例えばこの家

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425000CAD 日本円にして3千6百万くらいだろうか。
広々とした緑のスペースが見える。


一方でこの家。現時点でマーケットに公開されて2日目。

画像2

東京並みに両隣とキツキツに建っている。

バックヤードもあまりスペースがなさそうである。
しかし見ての通りの豪華な見栄え。
1288000CAD 日本円にして1億1千万円。

値段に差がありすぎる・・・
しかし東京ならともかく、この広大な土地を有するカナダで どうしてこんなにキツキツに建てなければいけないのかと疑問に思ったりする。

そういば東京の府中に住んでいた時、屋根に上って作業をしてもらっていたおじさんが足を滑らせた。しかしありがたいことにおじさんの足は隣家の屋根樋にひっかかり、落ちて怪我をすることはなかったのである。

湖畔の家を守るためにいくつかの不動産屋にも連絡を取る。
私の立場としては、なるだけ低い値段での査定が欲しい。
しかしこの湖畔の家も住宅価格高騰の渦に完全に飲み込まれてしまっている。
だがそのやり取りでわかった新しい事実。それは
売買の時は日本のように土地ではなく建物にフォーカスが当たるため、まだ完成していないこの湖畔の家は どうやらローンが下りるのにハンディがあるらしい。
ある不動産屋のパトリックに湖畔の家の未完成部分を強調する写真を送った。彼は明言はしないが、
いくつかのlenders(銀行などお金を貸す側)は担保として問題ないかもしれないけれど、自分にはよくわからないと言う表現である。
それに住宅価格だけではない、このパンデミックで住宅を作る材料費も高騰している。
この家を仕上げるには今だと多分200000CAD(約1700万円)近くまでかかるのではないかという。
これまたひっくり返りそうな値段である。
私は完全に夫のやってきた仕事も侮っていた。
住宅の古い材料が地下にいっぱい残されていて、いつ処分をしようかと考えていたのである。
しか未完成では担保としてうまく使えない可能性。今の私の立場には有利に働く。弁護士に伝えよう。メモメモ。

日本の80年代当時、奈良の家もバブルの渦に巻き込まれて高騰した。父も母も口をそろえてその値段に驚愕していた。今の私と同じである。しかし、だからと言って家を売る話が出たわけでもなく、終の棲家として両親は、家だけでなくその地も愛して、そこを離れることはなかった。

デザイナーでダンスドレスなどを縫う仕事をしている知り合いが、2年ほど前に離婚をしていた。ティーンエイジャーの娘と自分の母親との三人家族は、スーパーマーケットSobeysがまん前にある一軒家に、彼女の離婚後も住んでいた。
しばらく連絡が途絶えがちだと思っていたら先日、家を売ったのでオタワに引っ越すと連絡がきた。住宅価格が上がっているという話をお互いしていたが、もう売っていたとは!
す、素早い!!
新しいボーイフレンドも見つけていて、娘と二人でオタワの彼の家に住むのだという。
彼女の家もついでに売却のページで探してみる。770000CAD(6千6百万円くらい)で売れていた。
す、素晴らしい!
仕事を一緒にしていた時(まったく収益ないまま一応今も)、チラシを作るのに私の英語を訂正してくれと頼んだところ、コスタリカから移民している彼女もまた英語はしっかり第二言語であった。お母さんは全く英語を話さない。それでもマーケットで娘がデザインして自分が縫った商品を売るために客の相手をすることに全くの戸惑いがない。
彼女らはほんとうにたくましい。


そう言えば、政府に申告する色々を夫の代わりに取り扱っていた会計士が私のTax return(タックスリターン)、つまり納税書類について度々聞いてきた。リターンと言うのだから私はてっきり、源泉徴収の還付金申請書の事だと思いこんで、私には関係ないとすまし顔でいた。しかし私も申請しなければならない納税書類のことだとわかり、それだけでなくグローバルタックスの申請が必要だと訳の分からない言葉を言われ、日本での確定申告書をわざわざ英訳して渡さなければいけない羽目になっている。

きみの稼ぎはもともと国のものだから、国に戻せってことでリターンなのさ、きっと。
真偽はわからないがご近所に住むマークが笑いながら話す。なんだか知らないでいるといくらでも持って行かれそうである。

教訓
人任せにせず自分で調べる。

やれやれ、この地の人になるにはまだまだ時間がかかりそうである。
湖畔の家を追い出されなかったらの話ではあるが。


エリックが4歳の娘を連れて来ると言っていたのに来る様子がない。メッセージを送ると娘がひどく機嫌が悪くなっているという。夜全く眠らない上に昼間ハイパーテンションになっているらしい。
彼女はいくばくかの光を感じることができるようだが、生まれつきの盲目のため昼夜の判別ができない。生物時計が上手く働かないためらしい。

世の中には私の知らない困難が数えきれないくらいあって、人々は日々それぞれに奮闘して暮らしている。

気づけば夜明けが近い。眠れなくて朝の5時前からパソコンで情報を集めていたのだ。

太陽はフォックス島の端から昇ったあと折り返して、日の出地点は南のスネーク島に近づきつつあった。
そして今朝、灰色のグラデーションから突然現れたのはショッキングピンクの太陽である。その端はもうスネーク島に接していた。

画像3

確実に夏が去って行く



日本とカナダの子供たちのために使いたいと思います。