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ポメラ日記72日目 知らない街でものを書くこと

 お久しぶりです、kazumaです。はじめまして、の方もいらっしゃるかもしれませんね。今日は新しい街に引っ越した話です。

 とりあえず、グループホームのアパートへのお引っ越しが終わりました。

 ここ二週間くらいは引っ越しの手続きや新生活の買い出しでばたばたしており、ようやく今日で落ち着いた(?)感じです。

 新しい部屋に来るとエアコンが故障していたり、隣人の方に引っ越しの物音で注意されるなど、けっこうなトラブル続きでした。

 そもそも引っ越しで何事もない方が珍しいので、こんなもんかなと思っています。

 とりあえず仕事をしたり、ものを書いたりするデスクは用意していただいたので、文章は書けそう。

 生まれてはじめてベッド(備え付け)がある部屋で生活することになって、マットレスと枕はちょっといいものを買いました。

 いつも寝具で使っている「西川」のマットレスと「羊のいらない枕」です。

 とくに「羊のいらない枕」は百貨店で見掛けて、さわり心地が「ぽよんぽよん」としていたのでお気に入り。

 僕の好きな作家のトルーマン・カポーティは、自分のことを「水平作家」と呼んでいて、ベッドやカウチに横たわりながら文章を書いていたという逸話があります。

 僕も一度くらいは「ベッドの上でものを書いてみたい!」と思ったので、ベッドの上で胡座(あぐら)をかいて、手持ちのノートブックとボールペンで執筆してみることに。

 これがかなり居心地がよく、カポーティやパトリシア・ハイスミスがベッドの上で書きたくなるのはよく分かるなあ、という気持ちになりました。

 僕はこれまで、執筆といえば「机と椅子」ありきだったので、きっと英米で生まれた作家なら、ベッドで書きたくなるものなんだろうなと思ったりした。

 おかげで止まっていた原稿がちょっと捗った。

 執筆が進まないときに「場所や環境を変える」のはひとつのテクニックだと思っています。

 よく言われるのが「カフェ」など人目のあるところで文章を書く方法。

 たとえば、作家のなかには「一日に何軒もカフェを巡って、場所を変えて小説を書いた」とインタビューで答えている方もいた。

 ハリー・ポッターを書いたJ・K・ローリングがカフェに行って珈琲一杯で粘って書いていたのは有名な話。

 それも幼い娘さんをベビーカーに乗せて寝かしつけるために、わざわざ外で書いていたそうです。

 この「やむにやまれず書く」という状況を作ることが一番執筆が捗る方法かもしれません。

 執筆を進めるには、「何も考えずに机の前に座れ」とよく言われますが、「書くより他にはどうしようもないよな」という状況のなかに身を置くことが一番の特効薬かなと思います。

 僕の場合は、グループホームのアパートに引っ越したことで、仕事や執筆に関わるもの以外、部屋のなかにはありません。

 最低限の必需品しかなく、娯楽に関わるものは実家に置いてきました。

 あとはスマートフォンの電源さえ切れば、この部屋でできることは、ものを書くか、本を読むかぐらいのことしかできません。

 断捨離もして、退路も断ったので、あとはマイペースにもの書きをしていこうと思っています。

 昔、大学に「頻繁に引っ越しながら暮らしているが、その度に身軽になってよい」と話していた風変わりな教授がいたのですが、いまならその気持ちが分かる気がします。

 はじめて上京した頃、何の縁もない街で暮らすことになって、ブックオフで100円で買った本を日付を跨ぐまでアパートで読み耽ったり、書店が閉まるまで棚の前にいて、お店の人に追い出されるまでカポーティの文庫本を立ち読みしたりしていました。

 思い返すとそうやって過ごしていた時間が、いまの自分を作っていたと思うことがあります。

 十年前は頼る伝手もなく、いまよりもずっと厳しい状況にいて、思ったような大学生活は送れないまま、病院へ入ったのですが、いまはもう一度やり直すチャンスを貰ったのかなと思います。

 子どもの頃にできなかったことをずっと周回遅れでやっています。アダルトチルドレンの特徴かもしれません。

 でも、たとえ何周遅れになっても、やらなきゃいけないことってあると思うんですよね。

 僕がいなくなって残せるものは言葉しかなくて、そんなつもりで残した言葉も、あさってにはすぐに泡みたいに消えると思います。あとには何も残らない。

 それでもこの人生で他にやりたいことはなかったから、書くだけ書いて、あとはいなくなれたら一番いいなと思う。

 書くことを生きるための口実にしているところがある。

 どの街で暮らしても居場所がなかった人の話を書きたい。それ以外には何も書きたくない。ほんとはね。

 2024/05/30 17:39

 kazuma

 (了)

 ※引っ越し先にはポメラしかないので、画像は簡略化しています。昔はこのスタイルだったから「書いて出し」がしやすくて、いいかも。

もの書きのkazumaです。書いた文章を読んでくださり、ありがとうございます。記事を読んで「よかった」「役に立った」「応援したい」と感じたら、珈琲一杯分でいいので、サポートいただけると嬉しいです。執筆を続けるモチベーションになります。いつか作品や記事の形でお返しいたします。