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酒場の照れ屋

酒場の隅っこに坐った。ひとりの場所だ。だが、次の瞬間、明らかに年下に見える女性が隣に座った。彼女の目はキラキラとしていて、香りは甘く、吐息は魅惑的だった。

「ねえ、一緒に飲んでくれない?」彼女が言った。声はソフトで、かすかに甘い。

「もちろんだ。」と答えた。でも、心の中では「なんてこった、ハードボイルドな俺がこんな風に照れるなんて…」と思っていた。

彼女がオーダーしたのは、甘いカクテル。俺はウィスキーを飲んでいた。彼女は笑いながら、俺のシャツのボタンを弄んで言った。「あなた、かっこいいけど…ちょっと照れ屋さんね。」

俺は、何も答えられなかった。ただ、うつむいて笑った。ハードボイルド失格だ。

「何でそんなに照れちゃうの?」彼女がきょとんとして俺を見た。

「君のような女性の前で、男はいつでも照れるものだ。」俺は冷静を装って言った。だが、真実は、彼女の若さと魅力の前に、俺の心がガタガタと震えていた。

時間が過ぎ、二人はさらに飲んで、笑って、話をした。そして、夜が明ける頃、俺は彼女に「また会おう」と言い、彼女は笑顔でうなずいた。

ハードボイルド失格の俺だが、その夜は、若い女性との出会いに心が踊った。でも、心の奥では、この瞬間が続くことはないだろうと思っていた。それでも、生きているって素晴らしい。

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