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第8話 │ 椀物

先日、専門学校にて日本料理の授業をした。

メニューは以下の通り。

・カツオのたたき
・蜆の赤だし
・白ご飯
・香の物(小梅・きゅうりの浅漬け・塩こぶ)

私自身、このメニューを前日に知って実習までの間とても楽しみになっていた。

それは、カツオの平造りがこの上なく好きだったからだ。
また、串をさしてガス火で焼くというのではないか。

いざ、実習当日。
先に結論から言うと、タイトルの通り赤だしに感動してしまった。
久しく感じられなかった心の高揚だった。

まさに、日本料理に魅せられてしまったのだ。

普段、何気なく飲む味噌汁。
うちの家庭では、毎日出るということは無いのだが父親の趣味の釣りで、よくあら汁は作る。(潮汁という分類分けに当たるらしい)

実際自分の作ったものだから手前味噌になってしまうが(赤だしだけに)こんなに美味しく、楽しい味噌汁は初体験だった。

楽しいとはどういうことか、先に作り方を載せておく。

◻️作り方◻️

1. しじみ(ヤマトシジミ)を、1パーセント程度の塩水に漬け、上からアルミホイルをかぶせて暗くしておく。

2. 泥を抜いたシジミを、流水で殻どうしを擦り合わせて洗い流す。

3. お鍋に昆布と一緒に入れて沸かす。

4. アクを取りながら、シジミの空が完全に開いたら越して出汁と身に分ける。

5. 出汁をもう一度沸かし、火を止め赤味噌をといていく。

6.   身と合わせて椀に盛り付け、三葉と粉山椒を散らして直ぐに蓋を閉めて完成。

この赤だしは、飲む人がおわんの蓋を開けた時に全ての山を持っていくのだ。

太字で強調した通り、盛り付ける時に汁物がいちばん美味しいと感じられる温度、60~70℃に落とし込み、最高の香りと共に召し上がっていただく。そのための作業なのだ。
山椒や三つ葉といったものは香りと見栄えを演出するために、散りばめられる。

山椒や味噌は水蒸気と共に空気へ香りが逃げていく。
だから、散りばめた瞬間におわんという空間内に香りを全て余すことなく閉じ込めてしまうのだ。

実習が終わり、試食にはいる時に私は椀物を開けるのが楽しみで仕方なかったのだ。

気分を高揚させながらカツオをひとくち食べ、お汁に移る。
その蓋を開けた瞬間広がった、ツンとした山椒と濃厚で味わい深い赤味噌の香りがマリアージュして鼻腔を循環した。
これこそが馥郁かと。そう感じとても感動したのだ。

コハク酸とグルタミン酸の相乗効果でもちろん、味も至極のものだった。

私の家庭では、お吸い物の椀も無ければしじみ汁を食べた覚えもない。
そんな初体験をさせてもらった私はこうしてまた、新たな動きが出来そうである。

うーん、、旨い。

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