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彷徨う夜の光」

夜、なんとなく外に出て、一人で散歩に出た。特に理由はなかった。ただ、じっとしていると頭が重くなるばかりで、少し歩いてみようと思ったんだ。夏の夜の蒸し暑さが、体にまとわりつくようで、気持ちもさらに沈んでいく。

歩きながら、心の中に染みついたモヤモヤした思いが、頭の中でぐるぐると渦巻いていた。これまでの人生を振り返ってみると、職を転々としては、いつも同じようなところでつまずいてきた気がする。うまくいかなかったことばかりが頭をよぎる。あの時、もっと我慢できていたらとか、別の道を選んでいたらどうだったんだろうか。そんな考えが後から後から浮かんでくる。気まぐれに近所を歩いていたけど、特にどこへ行くあてもなかった。

その夜、ふと立ち止まって見上げると、頭上に小さな光が見えた。星だ。それはいつも空にあるはずのものだが、なぜかその夜はやけに目についた。まるで僕を嘲笑っているような気がした。「お前、まだ生きてるのか?」ってさ。いつもなら見逃してしまうような、ほんの小さな光だったのに。

しばらくその星を見上げていた。なんだか知らないけど、その光を見つめていると、ほんの少しだけ心が軽くなった。いや、正確には「軽くなった気がした」だけだろう。でも、その一瞬だけでも、何かが違って見えた。

あの夜の散歩は、特に意味があるわけじゃなかった。ただ歩いていただけだ。それでも、あの星の光が頭の片隅に残った。「いつだって、どこかに光はあるんだ」なんておめでたいことを信じているわけじゃない。でも、少しでもマシになるなら、それでいいんだろうな。結局のところ、何かを探しているのか、それともただ迷っているだけなのか、自分でもよくわからない。

※この物語はフィクションです。登場する人物や場所、出来事はすべて架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

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