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エッセイ集:自己・意識・生死をめぐっての随想

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文藝同人誌に掲載したエッセイを中心に、新たなエッセイも加えていきます。
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#胎児

産道を通ったときのこと

── 生まれる前の記憶 ──  小学校一年か二年のころ、何日も続けて同じ夢を見た。そのあと決まって目が覚める。  粘液にまみれた暗い洞窟で、ひだのような壁に押しつぶされ、身をよじり、あがいている。肉のひだは膨らんだり縮んだりしながら圧迫してくる。頭がどこかにつっかえる。軟体動物にのみ込まれたような不安感。暗い。寒くはない。手も足も動かせず、壁の隙間に頭から突っ込んで行く。そしてまたつっかえる。  息苦しさが極限になり、もうだめかと思った瞬間、まっ白い光のなかに解放さ