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製造より大変な設備洗浄の手順を決めるポイント【製薬会社での働き方】

医薬品の製造で、製造と必ずセットになる設備洗浄。最近はマルチ製造の設備が当たり前になり、洗浄の重要性が高まったと感じています。

設備洗浄は正直、製造作業より大変だと感じます。製造で1日ヘトヘトになった後の、「今日中に洗っといて」。ツラさ倍増です。

かく言うわたしは製薬工場勤務9年、数多くの設備洗浄をしてきました。その経験から、洗浄手順を決定するポイントを書きます。

設備洗浄の大変さ

まずは、設備洗浄の大変さを述べさせてください。

わたしがこれまでに感じた設備洗浄の大変さは、主に3つです。少々愚痴っぽくなりますが、お付き合いいただけると幸いです。

①研究部門は洗浄データをほとんど取らない

会社の未来の利益を生み出す、研究部門。新しい製品を工場でつくるために、毎日大量の実験とデータ取りをしています。

こと製造においては、豊富なデータを取って工場に持ってきてくれます。原料仕込量の許容幅、各パラメータの管理幅、製品や製造途中状態の性質、安定性、その他たくさんの実験データをもとに工場製造をします。製造に関して、研究担当者に聞けば必ず返ってきますね。

一方で、設備洗浄に関してはほとんどデータを取っていません。もらえる情報は「洗浄液は何か」くらい。製造担当者は、その情報だけで設備を洗わねばなりません。

以前わたしが新製品の製造に携わった際、設備に汚れがこびり着いたことがありました。どんな洗浄液をかけても落ちず、挙げ句の果ての研究担当者の言葉は「スポンジでこすって落としてください」。設備の中に入らないといけないんですけど……。毎回やるの?それ?

製造データを取るのに精一杯なのか、研究部門にお願いしても洗浄データは一向に増えません。製造担当者は、泣き寝入りするしかないことが多いです……。

②設備が効率よく洗浄できる設計になっていない

実は設備自体も、洗浄に関しては甘いことがあります。製造することに関しては性能がピカイチ!でも洗浄は疑問に思うときがあります。

現在わたしは、高薬理活性物質(少量でも摂取すれば人体に影響が出る物質)を取り扱う工場の立ち上げに関わっています。その製造設備でも、「あれ?」って思うポイントはいくつかあります。

例えば高薬理活性物質を漏洩させないために、設備の一部を袋で覆っています。その袋、洗浄の時は取り外さないと、設備に汚れが残り続けてしまいます。でも外したら製造担当者が吸い込む危険があるよね……。

製造担当者が吸い込まないために、手順をつくり込まないといけません。設備側で対応できないことは、製造側で手順を厳しく規定しないといけない。なんだか尻拭い感があって、モヤっとします……。

③洗浄不適合で永遠に終わらない…

設備洗浄をなぜするのか。次つくる製品に、今回つくった製品が混入しないようにするためです。そして混入しないことを確認するため、評価も行います。

この評価で不適合が続くと、イヤになりますね……。洗浄は、適合するまで終わることはありません。ヒドい時は10回洗っても、まだ終わらないことも……。

不適合が続いて、スケジュールを圧迫することもありました。設備洗浄は終わらないし、いろんな人に迷惑がかかるし、地獄です……。

設備の洗浄方法を決定するポイント

研究部門も設備メーカーも、かゆいところに手が届いていない設備洗浄。その分製造担当者が担うウェイトが大きく、逆に考えると、製造担当者の腕の見せ所です。

では、どのようなポイントを考えて洗浄方法を決めればよいでしょうか。わたしが洗浄手順を決める際は、次の3つを意識しています。

①設備の洗浄手順は製品で変わらない
②洗浄しにくいポイントを把握する
③洗浄する順番を考える

設備洗浄を考える参考になれば幸いです。

①設備洗浄の手順は製品で変わらない

設備の使い方は、たとえ製品が変わっても大きくは変わりません。汚れが残る箇所もだいたい同じです。

ですので、設備に汚れが残るポイントをピックアップして、網羅する洗浄手順にすればOKです。どんな製品をつくっても、その手順1つで洗浄液を変えるだけで洗い切れるはずです。

もちろん製品によっては、使わない設備もでてきます。そのときは、手順から使わない設備を除けばいいだけ。網羅的に洗える手順を1つ決めておけば、全製品に汎用的に使えます。

②洗浄しにくいポイントを把握する

設備には必ず、洗浄しにくいポイント(ワーストポイント)があります。洗浄液が通りにくい、開閉でかみこむバルブなど、洗いにくい箇所を把握しましょう。

ワーストポイントは、洗浄評価を取るときの代表ポイントにもなります。しっかり洗える手順を確立すれば、洗浄に悩まされずに済みますよ。

③再汚染しない洗浄手順にする

洗浄するときに考えなきゃいけないことの1つは、再汚染を防ぐことです。せっかく洗った器具に、汚れが溶け込んだ洗浄液が付いてしまうと、洗浄が長引く原因になります。

・設備の上面から下に向けて洗浄する
・洗ったものは再汚染しない場所に移す
など、細かい手順を決めておくとラクです。例えばわたしの場合、グローブボックスのグローブを洗った後、テーブル面の汚れが付かないよう引っ込める手順にしています。

手順が細かくなって担当者は大変かもしれませんが、全体で見れば効率よく洗えるかたちになるはずです。どこで再汚染する可能性があるか考え、防止する洗浄方法にしましょう。

設備洗浄は製造担当者の力量が試される

わたしも数々の失敗をしてきた、設備洗浄。研究部門や設備メーカーが考えきれてない分、製造担当者の力量が試されます。

しっかりした洗浄手順ができると、いい事だらけ。何度も洗うことはないし、スケジュールに遅れは出ないし、関係者みんなストレスフリーです。

洗浄手順を確立するには、知識と経験が必要です。そのためには常日頃から「なぜ?」を大切にして、知見を増やしていきましょう。

あなたが不都合なく設備洗浄を終えられることを、心から願っています。


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