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何者でもない

私は何者でもない。

何だか哲学的な書き出しだが、そんな意味などなくて、言葉の通り私は何者でもない。
社会的な地位も特別資産もない。特定の分野で実績を残したわけでもない。本当に何者でもない。

変った人生を歩んできた。仕事の関係で国内外を転々として、米国・ロシア・ウクライナ・CIS諸国に住んで現地で働いていた経験がある。これらの国で生活してきたのは日本人として珍しいと思う。特にロシア・ウクライナ・CIS諸国での政治・行政の腐敗、アメリカでの犯罪、そういった物を生活しながら経験出来たのは貴重な経験だった。そのせいで日本に戻ってからも物事を違った角度から見るようになった。

世の中、表と裏があるのは誰でも承知している事。だが、実際に裏の世界に遭遇したり、体験する機会は滅多にない。ここでいう裏の世界というのは、何も犯罪組織の話とかだけでなく、一般人の話でもある。一般人でも置かれた状況によって、人間はいとも簡単に恐ろしい存在に豹変する。

2022年2月に始まったロシア・ウクライナ紛争。私は両国に住んだ経験があり、公私に渡り付き合いのある人達がロシアにもウクライナ両国にいる。そして中には実際戦場に行った者もいる。仕事で彼らと付き合いのあった頃、彼らはとてもフレンドリーでプライベートでも良く食事に行ったりした。家族付き合いもした者もいる。彼等とは日本との文化の違いから国際情勢、一般常識・道徳に関してまで本当に色々と語り合った。

語り合って感じたのは国や文化の違いはあっても道徳面や常識といった部分では結局お互い人間として価値観を共有出来ているものなんだな。っと思っていた。でもこれはあくまでも表向きな面、建前の話だった。

ロシア・ウクライナ紛争が始まると状況は一変した。ロシア・ウクライナ両国の知人達は、皆政府のいいなり。というより政府の主張に疑いもなく熱烈に支持する姿にビックリした。日本にいるとロシアがやっている事は不条理だとの印象だが、ウクライナに住んだ経験のある者としては、ウクライナも東部において不都合な真実を抱えていたのは事実。だからといって勿論ロシアの侵攻を全く支持出来る物ではないが。

ロシア人の知人の多くは、政府の言う通りロシア軍はネオナチと戦っている。全てはアメリカが悪いという論調で、熱烈に政権を支持しています。しかし一般人にも動員が掛かったとたん国外に避難した者もいる。迷う事なく戦場に向かった者もいた。現在彼らがどうなったかは判らない。

人間という物は自分が属している国の政府を善悪で判断せずに、基本は政府を肯定するものだと知った。政府の指示であれば戦場にも行くし、そこで人を殺めても全く罪悪感もない。戦時下であれば非情な事も躊躇なく出来る。勿論例外のケースもあるだろうが、実際は殆どの人々は政府に従う。それが第三者から見たら論理的に破綻しているような事でも。

そして政府に指示されれば平気で相手国の一般市民を虐殺する。昨日まで友人だと思っていた人間が平気で殺人を肯定して兵士になる。正に豹変するのだ。それを実際に目の当たりにすると本当に人生観が変わる。

​私が物書きとして活動を始めたのは、人間の裏側と恐ろしさ、残酷さ、そういった物を形として残したいから。
裏側から世界・社会という物を見るといかに表の世界が虚像まみれであるか。それをこれから綴っていきたいと思う。

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