「StayHome」のパラドックス
(※ いろんなニュースや記事を読んで、個人的に感じたことをまとめる。私は医療の専門家でも、経済の専門家でもないので、間違ったことを書いているかもしれない。と予防線を張っておく)
2020年3月下旬くらいから、政府、多くの芸能人やYouTuberがこぞって「StayHome」と叫ぶようになった。
テレビCMやネット広告で見たことがある人も多いだろう。
皆さんはこの流れに関して、どのような感情を抱いただろうか。
私はこの啓蒙に関して、初めは肯定的な感情を持っていた。
ただ、今となっては肯定でもなく否定でもない微妙な気持ちになってしまっている。
原宿のビックビジョンで流れる人気YouTuberの「あなたが家にいることが誰かの命を救います」という訴えに、少なからず負の感情を持ってしまったのだ。
「StayHome」を叫ぶことだけで、この未曾有の危機を乗り切れるのだろうか。
大学生の20%が退学を考えている現状
ネットで行われた「コロナウイルス感染拡大の影響」を調査するアンケートによると、大学生の約20%が「退学を考えている」という。
参照: 「コロナ休学・退学」に怯える大学生の困窮実態
都心の大学生の多くは、日々の生活費を稼ぐためにアルバイトをしていることが多い。
そして現状、多くのアルバイトのシフトが削られ、生活費を十分稼ぐことができなくなってしまっている。
私自身、大学生のときはアルバイトで生計を立てており、さらに言うと、アルバイトをしていたとしても毎月の生活はギリギリだったのを覚えている。
給料日まで残り1週間、1000円で過ごさないといけない、なんてことはザラにあった。
もし私が大学生のときに、このコロナウイルス感染拡大が起こって、アルバイトを削られてしまっていたら、この「StayHome」の流れには賛同仕切れなかったと思う。
「お前らは、家にいても問題ないくらい十分稼いでいるから、そんなことが言えるんだろう」
こんな言葉が出てしまいそうだ。
(※ 現状では、困窮学生に最大20万円の「学生支援緊急給付金」が創設されたいる。但し、その対象が学生全体の10人に1人に過ぎず、対象が狭すぎる、またどれくらいの早さで給付できるのかという問題は残っている)
参照: 困窮学生に最大20万円「学生支援緊急給付金」創設
7年ぶりに倒産件数が1万件を超える見通し
帝国データバンクによると、今年の倒産件数は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、アベノミクスが始まった2013年以来初めて1万件を超すという見通しを明らかにした。
参照: <新型コロナ>倒産 1万件超見通し 休廃業は2万5000件
さらに、中小企業だけでなく資金的にも余裕があるはずの上場企業の倒産も出てきている。
企業が倒産すれば、自ずと上がるのが失業率である。
下のグラフは直近の失業率のグラフである。
参照: 新型コロナが雇用・就業・失業に与える影響
このグラフから分かるように、2020年に入ってから失業率がグンっと上がっているのが見て取れる。
このまま倒産数、休廃業数が増えるのであれば、このグラフは右肩上がりになる可能性は高い。
失業率と自殺者数
失業率と一緒によく語られるのが、自殺者数だ。
この2つの指標は、相関係数が0.72(1に近いほど強い相関がある)であり、人口が1億2000万人である日本では、失業率が1%上がれば、約2000人自殺者が増えると言われている。
参照: 失業率とシンクロする自殺率の推移
ちなみに、日本の自殺者数を年間3万人ほどと記憶している人は多いかもしれないが、最近では2万人を割る勢いで減少している。
参照: 警察庁発表 自殺者数の統計
その原因は直接の関係があるかどうかは分からないが、アベノミクスが始まった2013年から徐々に失業率が下がってきたことに起因すると言われることが多い。
ただし、このまま失業率の増加が続くと、2021年には再び3万人を超すのではないかというデータもある。(参照: 自殺の影響は広範囲にわたる―新型コロナウイルスによる失業が健康や自殺に与える影響)
個人的にはここまでは増えないような気がしているが、少なくとも減少傾向は止まるのではないかと思っている。
ちなみに2020年4月の自殺者数は前年比で、20%も減少したことが大きなニュースになっていた。(参照: 【日本】4月の自殺者数は大幅減少で過去5年で最少。自宅生活が奏功か。厚生労働省発表)
これだけ見ると、「なんだ減少してんじゃん」と思うかもしれない。
しかしこれは、日々のストレスである会社への通勤や学校に行くことが極端に減ったことによる減少で、経済苦による自殺はもう少しあとになるのではと考えている。
この予想がはずれてくれるのを祈る。
命を救う最適解を探す
以上で説明してきたことが、私が「StayHome」ばかりを叫ぶことに違和感を感じてきた由縁である。
経済を優先させて医療崩壊を招けば、アメリカやヨーロッパの一部の国が辿ったような、死者を1万人以上出すような事態になる可能性が高い。
かと言って、「StayHome」ばかりを優先させてしまうと、今度は経済的に貧困に陥り精神を病み、自殺を考えてしまう人が出る可能性がある。
医療崩壊も経済も同じくらい重要な要素なのだが、「StayHome」で医療崩壊は防げても、経済を戻していくことはできないのだ。
ネット上では、おおよそ2つの考え方(医療崩壊抑える派、経済優先派)が対立し、論争を巻き起こしているように見える。
果たしてこの2つの派閥は相容れないものなのか。
ちなみに日本の取っている戦略は、医療崩壊を起こさないように自粛要請をし、ある程度収まったら段階的に自粛要請を緩める(6月1日現在はこの緩める段階に来ている)といったものだ。
これはつまり、「ワクチンや治療薬ができるのを待つ」という戦略で、長期的(1〜2年ほど)にこのウイルスと付き合っていくということである。
ということは、どっちの派閥の要素も取り入れた戦略と言える。(第二波が来たら、また自粛要請が強くなる可能性が高い)
ここで問題になってくると思うのが以下の2点だ。
①自粛要請の間に経済的に困窮してしまった人を”素早く”救えるかどうか
②陽性反応が出ている人を見える化し、行動を制限できるかどうか
つまり「StayHome」ではカバーできていない、経済を戻していくのに必要な要素だ。
法律の整備が急務
以上で示した2つの要素を実現していくためには、今の法律では対応できないことが多い。
まず「自粛要請の間に経済的に困窮してしまった人を”素早く”救えるかどうか」に関しては、国や自治体が個人の口座情報、所得状況などを網羅的に調べる術がないのが問題である。
6月1日にTwitterのトレンドで「マイナンバーカード」が入っていたが、政府は国民が開設する全ての預貯金口座情報とのひも付け(連結)を義務化する検討に入ったようだ。(参照: 政府、マイナンバー「全口座ひも付け」義務化検討 来年の法改正目指す)
これで給付が素早くなるかは、まだなんとも言えないが(システムの統合がすんなり行くとは思えない)、その第一歩になるのは間違いないだろう。
そして「陽性反応が出ている人を見える化し、行動を制限できるかどうか」に関しても、法整備は必ず必要になる。
まず私がこの要素が必要と考える理由は、このウイルスの一番怖い点が「若い人は感染していても症状が出ないことが多い」ということだ。
つまり知らない間に自分が感染してしまい、その状態で高齢者や基礎疾患がある人と接触してしまうと、その人に感染させてしまい、重症化させてしまう可能性があるのだ。
このような懸念があるのにも関わらず、今まで通り街中を歩く気にはならないし、ましてや県外に旅行にいこうとも私は思わない。
なので、今まで通り安心して街を歩くためには、抗体検査やPCR検査をして、その上で陽性反応が出た人は、しっかりと隔離した上で、外に出たら罰金を取るなどの法律の縛りが必要になってくる。
ちなみに韓国では、陽性者を監視し、隔離エリアにちゃんと滞在しているかどうかを確認できるアプリがある。(参照: 韓国政府が新型コロナ感染者に専用アプリ、GPSで外出監視も)
日本でもこのようなアプリを導入するかどうかの議論は、最近になって聞くようになってきた。
ただし、このようなアプリはプライバシーの問題とも深く関わってくるので、慎重な議論は必要だ。
6月1日現在、一度落ち着いた感染者数も5月中旬からの気の緩みで、すこしづつ戻ってきているように感じる。
一刻も早くワクチンができることを願いながら、これからも気を引き締めて生活していこうと思う。
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