#02 Netflixドキュメンタリーからみる社会課題と資本主義の未来
1.ドキュメンタリーから見る社会課題
何気なく毎日見てしまうオカルト系のYoutube都市ボーイズで興味を持ったNetflixドキュメンタリー「事件現場から: セシルホテル失踪事件」を先日見ました
制作が「ジェフリー・エプスタイン: 権力と背徳の億万長者」の方と一緒だったこともあり、単にオカルトを解き明かすだけの作品ではなく、社会的なテーマも含まれているのではないかと期待していました
結論としては、期待以上の内容で、考えさせられるものでした
1-1.プロフェッショナルとアマチュア
・職務として取り組むプロフェッショナル(警察や検視)とそれ以外の一般大衆の前提とする情報の格差
・情報を元にしたプロフェッショナルの知見・洞察の鋭さ
・プロフェッショナルでも陥るミス
1-2.個人の正義感
・事件に直接の利害がない一般市民が、正義感から事件の真相を暴こうとする
・SNSという武器を手に入れ、個人メディア化したYouTuberがそれをリードし、ネット上での共感を獲得していく
1-3.扇動者不在の大衆扇動による被害者
・事実解明という動機が、存在するかもわからない犯人特定へ変容していくネット民による被害
・誤認であっても責任を追及されないネット民と取り残される風評被害
1-4.事件を生み出す貧困という社会環境とそれを置き去りにする資本主義社会
治安の悪い事件現場の一帯が、歴史的にどのように形成されていったのかが、丁寧に説明されています
一方で、事件後も、その反省が生かされないまま、巨大資本によって都市開発が行われようとしている現実が描写されています
「一つの悲しい事件」という以上の価値を受け取れない人類の悲哀のようなものを感じざるを得ませんでした
社会課題を学習できない資本主義社会に疑問を感じる結末でした
2.これからの資本主義
「新自由主義」を唱えたFriedmanによって、近現代の企業活動は株主資本主義を前提としてきました。
一方、近年では企業のステークホルダーは、「株主」だけに限られず、顧客・従業員・社会を含むとするマルチステークホルダー的な考え方への修正が進みつつあります。
ただ、今なお悩ましい問題は、株式会社等の特徴として「営利性」が要件となっていることです
つまり、株式会社を株式会社たらしめているのは、「営利性=金を稼ぐこと」であり、それ自体が目的の一部となることが不可欠であること、そして、それ以外の事業目的が明確に営利性に優先するとは言い切れず、かつ、企業を取り巻くマルチステークホルダーにとっていつも一様であるわけではないように思えます
したがって、企業は、その企業を特徴付ける本来の事業目的と、株式会社を特徴づける営利性という目的を両立して達成しなければならないという潜在的矛盾を抱えていえると考えられます
B-Corpの登場やFink Letter2020,2021は、株主資本主義の修正を期待できる大きなパラダイムシフトではありますが、根本的な問題を解決してはいないような気がしていました
先日、RIETIのColin Mayer先生の講演を聞いて、この先の資本主義の未来を感じることができました
Mayer先生によれば、「企業のパーパスは、利益をあげることではない。問題を解決するソリューションを創出することが目的。利益は、ソリューションを提供するプロセスで得られるに過ぎない。」と述べていました
つまり、事業目的(社会課題の解決)と営利性は、並存する2つの目的ではなく、目的と過程の関係に過ぎないということです
そもそも、会社法の前提とする営利性という要件自体の見直しが必要になるということかと思います
4月2日発売の新刊が今から楽しみです
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