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天城越え

時々の新幹線の窓から景色を眺めているのは心地よい。 急転暗転好転する風景は実にスリリングで飽きない。時折、街中では新幹線の窓と住居の窓、 二枚のガラス越しに人の生活が見える。
森林地帯では何らかの動物が住む古木の洞が見える。停車駅から離れていくとその距離の負側に乗じて建造物は減り、田畑として開拓された土地や原野が増えてゆく。駅に近づくと測らったようにその真逆だ。降りる支度の合図でもある。
ものすごい勢いで山から熊が人里に降りてきているそうだが福島県喜多方という駅前に熊が出没したとか盛岡の市内の中心部に流れる川にまで熊が出没したという驚くべきニュースが聞こえる。街の中にはノラ犬、ノラ猫が普通にいる。 限定的ではあるが地方都市の街中には 加えてノラ熊がいるかもしれないということを普通に認識しておかなければならない。

昔、中央アルプスの宝剣岳というかなり厳しい山を登っていた時のこと。 急峻な岩場を這いつくばるように上り終え最後の一山に手をかけて よっこらしょと岩の上に顔を出したら目前に小さなヘビがいた。 やる気のなさそうなヘビは批判的な目で僕を見て自ら去っていった。 その間、後にも先にも進めなくなった。その時、それが小さなヘビではなく大蛇若しくは熊だったら僕は間違いなく後方にいる 友達を道連れにして滑落していたのだろうな。

昔々、春先の月明かりの夜、天城峠を越えて夜桜お七に逢いに行く道中、もうひとつの難所は冬眠明けのまだ眠たい眼をした月の輪熊だったのかもしれないですね。



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