創作戯曲

 ふるさとを想うとき

    プロローグ 

 頭の中に次々と物語が浮かんでくる。それが、わりとマジメな小説的物語のようだったり戯曲的だったり、エッセイのようなものだったり、童話っぽいものだったり、自分が関わるオリジナル楽曲を主体とするロックバンド用の歌詞だったりと様々なハナシが止むことなく浮かんでくる。これはどうやらそういうおかしな体質らしいと数十年の時間をかけてやっと解ってきたような気がする。頭の中に次々と浮かんでくるハナシの展開を文字に変換する作業だから面倒くさいを基本として表現方法、あるいは文法的な致命的なミスも多々あることは間違いないことだと認識する。僕は文章家ではない。だから文章家に容易く見破られることも心苦しい。しかしそう言ってるとハナシは始まらない。単に能力の問題だと諦めざるを得ない。分かって頂くしかない。

 そんな僕の空想想像話ではあるがご一読いただけることを願ってやみません。

 時節柄、冬や雪をイメージしたふたり芝居の戯曲風物語です。

 何卒、よろしくお願いいたします。


     ではまた。


MIZUNO式 創作戯曲

   故郷を想う時        

 山形県、新庄市。二月の下旬を迎えているその街は、テレビや新聞で報じられている春の予感を思わせるニュースなどとはうらはらに、厳しい寒さが街を囲む山々から吹き付けている。
新庄の駅から歩いて数分のファミリーレストラン。午後六時を過ぎたその店は家族連れやカップルで賑わっている。先に一人でその店に入っている原田涼子。コーヒーを飲んでいる。左手の逆さ時計を見る涼子。そのまま窓の外を見る。窓は外との激しい温度差で曇っている。外を走っている車のヘッドライトが滲んでいる。再び時計を見る涼子。そのままの視線で店の入り口を見る。
タイミングよく店に入ってくる女性、川瀬里奈。小走りで来た様子で少し肩で息をしている。神妙な面持ちで店内を見回している。そして涼子を見つけ、胸の前で小さく手を振る。涼子、満面の笑顔になる。

里奈    「早かった?」
涼子    「ううん、ついさっき。」

あわただしく手袋とマフラーをはずす里奈。

手を息で温め、大げさに震えるしぐさをする里奈。

里奈  「やっぱ、こっち、寒いわ。」
涼子  「今年は特別よ。雪はあんまり    多くないんだけどさあ。」

 ウェイトレスがオーダーを取りに来る。外国産のビールを注文する里奈。

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