ガムテサンダル

宮城県の名取川上流の河原で缶ビールを飲んでいたら
妙に人懐こい犬がやってきた。
つまみに食べていた「やわらかさきいか」を少し上げると
その犬はよほどうれしかったようで笑いながら跳ね上がり宙を舞った。 そしてぼくはそのまま河原のごろた石の上でイヌを枕に寝てしまった。

目が覚めると「さきいか」は残っていた。 謙虚なイヌだなと思った。 ふと足元を見ると脱ぎ捨てた靴の左足だけがなくなっていた。 状況はすぐに理解した。 回収は不可能であることも理解。 かなりの田舎 仙山線の降りた駅 陸前白沢まで途中、履物やなどあるわけもなく。

まずい状況で少し大きな駅まで移動しなければならない。 困った。
リュックの中をまさぐった。 ガムテープがあった。ガムテは役に立つので小卷にして必ず持つ。
ガムテープでサンダルを片側だけこしらえた。
かくして僕は右足は普通のASICSのシューズ、左足は 特性ガムテープサンダルMIZUNOのブランド品(サイズ26.5)で隣の駅まで移動。途中、時速8キロぐらいで歩く背中のかごに大量野菜を背負ったおばあさん、時速2キロぐらいの自転車のおじいさんとすれ違い足元を見られる。そしてさっきのイヌ。ぼくの姿を見ると目をそらしてサッと畦道へ逃げた。おのれイヌ。
駅前の雑貨屋でサンダルを買った。サンダルに履き替えた。踵に小石が突き刺さっていた。
新幹線やら東京駅でサンダル履きはやや危ない人に見られていたのかもしれない。
去年の夏のはなし。
今年の夏はガムテサンダルの踵の強化に取り組むことにした。

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