044_20240111_クワトロバッテリー
基本情報
高嶋栄充(たかしまえいじゅう)さんによる野球漫画
別冊少年チャンピオンで2019年12月号から連載されている
既刊12巻
大まかな紹介
ノーコンスピード狂投手のイチタ、愚直で優しい捕手のユタロウ、
長身天才投手のアマミヤ、冷静沈着頭脳派捕手のヒナミ。
想いの方向が一方通行である4人の球児の運命が交錯!!
4種のバッテリーは完成するのか…!?
秋田書店の作品ページ より
導入
開始3ページで主題
二人のピッチャーと二人のキャッチャーが各々ののぞみを言ってる
「バッテリーはよく夫婦に例えられるが、皮肉にもこの四人 全員片思い」
場面変わって、中学校同士の試合の前の練習風景
一組目のバッテリー、一汰と優太郎(ゆたろう)が投球練習している
一汰の東急は凄いスピードだが、とんでもなく暴投である
それを優太郎がバッチリ捕球している
監督からは「練習すらやらせてないのに、ピッチャーとして使わん」と激怒され、チームメイトからは「二人揃ってクズ」と馬鹿にされてる
対戦チームに「二人の天才」と評される、もう一組のバッテリーが居る
地大(ちひろ)と蓮(れん)、関東ナンバー1といわれる天才バッテリー
地大は「羨ましい」という声に「まるで寝てたらうまくなったかの言い草だな…退屈だよ」と笑顔で不機嫌
観客席に四葉高校野球部スカウトの田中・マイケル・奏矢(そうや)という男が居る
「信じられないよ、まさかあの天才バテテリーが我が校に進学を決めてくれるなんて」
「ただ、お互いに我が強すぎて譲ろうとしないのが課題かな?」
試合が始まるのだが、一汰と優太郎のバッテリーが、勝手にブルペンで練習し始める
その豪速球と捕球技術に、観客ベンチ選手皆度肝抜かれる
試合中の地大と蓮のバッテリーも意識し始める
地大がスピード勝負をし始め、連が「スピードを競う競技じゃない、それにアイツらは野球すらやってないだろう?」と諌める
100球以上投げ、バテてきた一汰
最後の一球で最高の速球を投げる
天才・地大は「彼らは野球を舐めてない、投げる・受けるそれだけを純粋に追い求める、誰よりも野球に誠実なバッテリーだよ」と評する
地大は連に問いかける
地大「彼のノーコン、どうにかならない?」
連「断る、面倒くさい」
地大「無理とは言わないんだね、あと嘘つくときのクセ出てるよ?」
地大は一汰に話かける…が逆に質問される
「お前の行く高校教えろよ!そこで俺が勝つ。そしたら俺が最強の一番だ!」
やりとりを見たスカウト、田中・マイケル・奏矢は色めきだつ
もうバッテリーごと四葉に来てもらおう
二通りの強力バッテリーが誕生する
違う、4人で四通り…クワトロバッテリー
ここで一話終了。
感想
開始3ページ目で「物語の核心的な構造」を説明し終えている
「バッテリー、皮肉にもこの4人…全員片思い!」
感想文を書く人としては、ネタバレを気にしなくて良いのと、説明が要らずなのでありがたい
こういう始まりだから「組み合わせの奇跡」みたいな4組み合わせの違いでドラマ作ってく…のだろうと思ってたら
割と「完成している組み合わせ」ヒト組と、「全然成ってない組み合わせ」のヒト組があり、成ってない側を育てていく話に見えた
組み合わせ的には「完成しているが仲悪い」1パターンと、それ以外の3パターン
野球的にも、マンガの盛り上がり的にも「完成している組み合わせ」側ばっかり使ってられないから、それは切り札として別の組み合わせを軸に描きましょうね、という感じに見える
が、まだまだ10巻程度なので、これから全然ひねってくると思われるが
野球漫画に見られる「クソ指導者問題」を描く…のかと思いきや?
野球漫画、特に高校野球マンガにおいて「権威主義」「序列にこだわりすぎた選手起用」「無能」など、意味なく選手を潰し勝てないチームにする監督・コーチを描く「クソ指導者」の話しは割と描かれる
結果的に良く出た例としての「タッチ」とか
物語の真ん中に添えると「砂の栄冠」みたいに、最後の最後までそれと戦う物語になる
本作もそれを一つの軸に据えてやる…のかとおもいきや、割と序盤でしれっと解決する
そもそも「クワトロバッテリー」を構想し連れてきたフロントが、指揮取ってない上、立場が弱かったため、ストーリーが先進まないから、既定路線であろうとは思うけど
なんか「ふわっと解決してった」ので、再び再燃する可能性もあるけれど、それはそれで楽しみかも?
「当時の常識、今の愚策」みたいなモノを、注意深く描いている
「ダウンスイングが小柄の日本人に向いてるから皆倣え」から「フライボール革命」のエピソード
少しのサンプル数での局地的な成功例を、壮大に伝言ゲームした結果、歪んで伝わり、高校球児に届くころには理屈のないオカルト化している、という話
そういうのは医療だったり科学だったりの分野で「迷信・オカルトとの戦い」も相まって繰り返されてきた歴史
個人の責任や因習とかではなく、それを「仕組み・構造の問題」として批判してるのが、注意深い
過去の指導者を全て無能とはしない書き方をしている
そういう「最新の理論では」という時系列に踏み込んだ歴史的な言及しているのが、自分の琴線に刺さった
先の「クソ指導者問題」とも関係して、”選手を潰さない”に立脚しているのが好き
なにより「高校球児たちに3年間無駄なく活躍してほしい」って気持ちが作品に出てる
「フライボール革命」をあとがきで触れるくらい
モチベの引き出し方や個性の伸ばし方の描き方が素晴らしい
過去の指導者が「変えろ」「直せ」と否定し変化を迫る中、「やりかたの少しの工夫」を与え、その後は自分で気づかせる
「サイドスロー」を教えたあと、自分で「スリークオーター」に気づく展開とか
「ラストジョイント」や「(選手が自分で)考える重要性」の話しとか
「否定でなく自主的に」「気づきを大事に」「得意を伸ばす」という、理想的な育成、それを選手間で行ってる
マンガなので理想とは言え、教育や育成に有用なことを教えてくれる
総評
行き詰まってる人、閉塞感を感じている人に読んでほしい作品
少しの発想の転換と行動によって、なにかを変えられるかもしれない勇気をくれる
もちろん、スタンダードな野球漫画としてもよくできてる
ピッチャーの継投戦略が中心のマンガと捉えればプリミティブな野球漫画として楽しめそう
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
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