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デジタル化する新興国①

デジタル化する新興国
伊藤亜聖 著
中公新書

先進国のみならず、新興国でも2010年代にスマートフォン化普及し、関連サービスが続々と登場した。
2020年代からデジタル新興国というべき概念が浮かび上がってくる。
デジタル化は新興国の何をどう変えているか。そしてデジタル新興国がありえるとすれば、それはどのようなものか。
第1に、売り手と買い手の間にたち、取引を成り立たせる「プラットフォーム」の登場と普及は新興国に先進国以上の変化をもたらしている。多くの新興国が長年直面してきた、「信頼と透明性」の問題を劇的に解消しつつあるのだ。
インターネット産業はアメリカ西海岸から生まれた。だが、スマートフォンによるモバイル・インターネットの時代になり、先進国とは経済的・社会的環境が大きく異なる新興国でより多くの試行錯誤が行われている。この結果、新興国からも有力企業が登場し、現地ならではのデジタル化のアプローチが世界に提示されるようになった。
第2に、新興国に元来あった「可能性」だけでなく「脆弱性」までもがデジタル化によって増幅される。このことはデジタル化には新興国に住む人々の潜在力を発揮させる。すなわちエンパワーメントの効果がある。一方、人々の権利がより制限され、また、侵害されるリスクも同居していることを意味する。
第3に、デジタル化を新興国の文脈において理解するうえでは、戦後の新興国、途上国論の系譜を踏まえることが有用である。
デジタル化がもたらす変化について、特に工業化と異なる論点と類似した論点があることを念頭に置くことで、これまでの議論と接合した理解が可能となる。

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