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パーティー・イズ・オーバー2【プレリリース版】

マーカスはケブラー繊維のコートの襟を立て、タバコに火をつけた。合成煙草のオイルのような味が口内に拡がり、唾がじわじわと満ちて行く。

漆喰の剥がれた壁、中身の散乱したごみ袋、痩せて死んだ犬に、その腐肉を食い散らかしまるまる太ったウジ虫、赤いスプレーで壁に落書きされているのは、フロム・ヘルの一節──。眠っているか死んでいるか判断のつかないジャンキー、それらが横たわる裏路地をマーカスは行く。

アフターアワー規制法案。かつて力あるナイトクラブが政治的権力を握る黄金時代は終わりを告げた。マーカスと、マスターは羽根をもがれただけではなく、マスターは死に追いやられた。 マーカスは地獄に落ちた。しかし、再び這い上がってきた。復習を果たすために。

ナイトクラブ『ガル』に、アフターアワー規制法案を画策した議員がいると、なけなしの金を払って知ることが出来た。むき出しのオーグメント・アームが殺意に唸る。

地獄より来た俺は、地獄に戻るだろう。だが、お前らも道連れだ。

鼓動が8ビートと同期する。まばゆいネオンが殺意を駆り立てる。扉の前のバウンサーが、マーカスに止まるよう指示する

「失礼、IDの提示を」

刹那、バウンサーはドアを巻き込み、壁に貼り付けにされた。酒瓶のおいてあった棚も巻き込まれ、彼はワインを浴びる。神の血にまみれたとは、実に"パッション"な出来事だ。

煙を吹くオーグメント・アームを構えながら、マーカスは入店する。

「これがIDだ、Basterd.」

【続く】

アナタのサポート行為により、和刃は健全な生活を送れます。