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スケアクロォグ

吹き抜ける風が、黄金の海原をなでる。晴れた青空を不吉な雲が侵食して行く、黄金を宿す畑から光が喪われ、風は、これから起こるであろう凄惨な戦いを予感するように、強く、強く吹き付ける。

見渡す限り、黄金の穂がさざめく畑に男が一人、つばの広い帽子に、外套姿。どちらも雨風にさらされ、あるいは銃火にさらされのか、よれよれのくたくただった。しかし、外套の襟と帽子の隙間から覗く目は、餓えた狼のごとく爛々と輝き、獲物に牙を突き立てる瞬間を待っていた。

やがて、地平の彼方からけたたましい嘶きと、土を強くうがつ音が響き渡り、土煙をあげながら野盗の集団が、黄金の畑目掛けて突撃してきた。

くそ共、この黄金は俺のものだ。

外套姿の男は、裾をひるがえした。そこには刀に銃器数丁。敵は四人、この武器ならば殺しきれる。

刀を抜き、銃を構える。さあさあ、来い欲深なブタども。お前らの腐った肉は、土のこやしになり、穢れた魂は草花となり浄化される。おれがその手助けをしてやろうというのだ。免罪符もいらん。この黄金の畑に免じて、お前らの信じる神の元へ送ってやる。

距離が詰まる。殺意が風となり、外套を打ち据える。

やがて赤い血が、畑に撒き散らされる。

『純金』を実らせた、黄金の畑に!

【続く】

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