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反乱が演出された地(ネタバレ注意)

陳勝・呉広の乱で、陳勝が居城とした「陳城」は、現在の河南省周口市にありました。以前の記事「呂氏覇権ベルト地帯」をお読み頂くと、より理解が深まると思います。

陳勝・呉広の乱も、「バック」で操る人や資金源があったと推測しています。この周口市、史記を良く見ていくとなぜか「反乱の起点」になっているのです。

ここから先は…キングダムで描かれるとは思うのですが、まだ先のストーリーになります。かなり大きな動きになるので、読みたくない方は決して読まないようにして下さい。

※閲覧注意
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実はこの陳勝・呉広の乱(紀元前209年)の前に、一度「仮想反乱」的なことが起きているのです。紀元前225年のことです。場所は陳勝・呉広の乱が起きた地、楚の旧都の郢陳(現在の周口市)なのです。

キーマンは、昌平君。

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もともと楚の公子でもある昌平君が、嬴政との意見の不一致から丞相を罷免された以降、この地の民の動揺・不満を抑えるために滞在していたのです。

あえてぼかして書きますね。

秦が楚の首都・郢(現在の安徽省淮南市寿県)を総攻撃する際、まさにドンピシャのタイミングで、昌平君がいる郢陳(現在の河南省周口市)で反乱が起きたのです。

秦軍のとある将軍が、これを鎮圧に向かいます。これから首都・郢を総攻撃するというタイミングだったので、郢から郢陳に向かう場合、形的には「敗走」と同じ格好になるのです。しかも、約250kmの敗走。

地図記載

やっぱり…ぼかして書くのが疲れたので、はっきり書くことにします(笑)

郢陳の反乱鎮圧に向かった将軍が、李信なのです。李信は結果的に敗走という形を取らざるを得なくなり、楚から討って出た項燕将軍の奇襲により、秦軍は壊滅的打撃を受けて敗北するのです。

なぜ李信は、嬴政からこの大敗北に対する処罰を受けなかったのでしょうか。

これもほとんど理論的な議論が見つからないのですが、登場人物の心理状況を紐解いていくと分かってきます。

まず、反乱を起こしたであろう人物は、昌平君で間違いないでしょう。昌平君は楚の公子です。今まで秦の大躍進に貢献してきたのに、嬴政とのとある意見の食い違いから、丞相を罷免されてしまいます。罷免され、滞在していた土地が郢陳なのです。ここで反乱が起きてしまった。まさに秦が楚を総攻撃しようとしていたタイミングで。もしかすると既に楚と連携していて、楚との共同作戦だった可能性もあります。いや、そう考えないとダメでしょう。

李信は、恐らく地理的にも秦の首都咸陽よりは郢陳に近い位置に布陣していたこともあり、嬴政から勅命で「郢陳の反乱の鎮圧」を命じられたはずです。地図を見ても、西にある咸陽から向かうには遠すぎます。既に平定した邯鄲からも遠すぎます。嬴政の信頼を得ていた李信しかいなかったのです。

テイチンの乱

李信は楚攻略を目の前にして、苦渋の選択を迫られていました。郢陳に向かうにしても、率いていた大軍を楚の首都近辺に残して移動するわけにもいかず、止む無く一度楚攻略を延期にして、郢陳に向かうことを決めます。直線距離にして、約250km。馬は時速6kmで走れますので、250kmを翔けるとなると休み無しでも40時間以上かかります。2日かけての行軍です。きっと李信も分かっていたでしょう。これは「敗走」と同じ格好になることを。相手に背を向けて2日も行軍しなければならないのですから、相当なリスクを背負っての使命です。嬴政も分かっていたことでしょう。それでも、李信に任せるしかなかったのです。

その最中、楚の奇襲により壊滅的な打撃を受けてしまうのです。

嬴政は、自ら昌平君を罷免してしまったこと、昌平君を滞在させていた郢陳で反乱が起きてしまったことに対し、負い目があります。難題と知りつつも、この反乱鎮圧という役目を李信に背負わせてしまった。最初から無傷では済まない反乱鎮圧を、李信は引き受けたわけです。その結果、楚に大敗してしまいました。

これでは、嬴政は李信に全責任を追わせて処罰することなど出来ません。お咎めなしです。

李信は相当悔しかったでしょうね。反乱鎮圧は出来たとしても、楚には大敗し、反乱を首謀したと思われる昌平君もどこかに雲隠れしてしまった。

そして…これも決して偶然ではないと思うのですが、この地(現在の周口市)で、「陳勝・呉広の乱」の首謀者・陳勝が居城を構え(陳城)、秦に対して大反乱を企てるのです。

地理的な情報・心理的な情報・人間関係を加味して妄想すると、なんとなく絵が浮かんできますよね。このあたりを原先生がどう描くか、気になるところです。




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