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追懐の登山

子供ができてから初めて山登りをした。小学校から仲良くしている親友の家族が子供と一緒に是非と誘ってくれたのだ。

父は山登りが趣味だった。山岳会のチームリーダーを務め、本格的に険しい山を登っていた。それでも、私が興味を示すと、近場の難易度の低い山に一緒に登り、登山のいろはを教えてくれた。

父の癌は若年だったこともあり進行が速かった。山岳会の仲間たちと梅を見に行きたいと前向きに語っていた父が、同年の初夏には息を引き取った。

久しぶりに山を登っていると、父と山道で交わした会話がよみがえってきた。親友は、私がどれだけ父を慕っていたかをよく知っており、私が延々と父の話をするのに嫌な顔一つせず付き合ってくれた。

山に行ったのはちょうど父の誕生日の二日前だった。毎年父がいないことを実感して悲しくなる時期だったが、いい形で追懐できて良かった。

長男が生まれたのは父が亡くなった2年後だ。長男は父の名前の漢字を一文字受け継いでいる。これからも子供たちに、父に関するあれこれを笑顔で語り継いでいきたい。



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