会話の鎖を敢えて飛ばすという話

以前、日本語を正しく理解するだけで、あなたは「空気が読める人」になるという素晴らしい記事を読んだ。日本語の会話というものを我々素人でも分かりやすいように分析して、それに基づいてどう会話すべきかというのを示してくれている。コミュニケーションが苦手だと自覚している人はきっと参考になるだろうし、そうでない人も自分の会話を見直すきっかけになったり、さらに良い会話をするヒントになったりするだろう。

さて、上述の記事の中にもあるが、会話というのは相手が何を意図して話しているのかを正しく読み取り、それに対応した内容を返すことで成立する。
これは鎖に例えることが出来る。輪っかをつなげていくチェーンである。相手の発話という輪っかに対して、自分の輪っかをちゃんと繋げてあげる。これを繰り返すことで会話の鎖は長く伸びていくのである。こちらの輪っかを無視して勝手に別の場所で鎖を作り始められてしまったら会話が成り立たない。

が、たまに「あえて輪っかを繋げていないのに話が正しく成立する」という場合があると思っている。
別にすれ違いコントの話がしたいのではない。そうではなくて、本来なら必要なはずの輪っかを敢えて1つや2つ飛ばしているのに、1本の鎖として成立することがあるのである。

そういう会話が発現するのは、頭の良い人同士が話している場合である。特に仲の良い相手だと起こりやすい。それは何故か。

数年前、「頭の良い人と悪い人の物の見方の違い」というツイート(リンク)が話題になった。
このツイートで示されているように、頭の良い人は物事に触れた際に一瞬で多くのものを連想することが出来る。そのため、会話の最中であっても話題の周辺の情報が瞬時に脳内に広がっている。これは決して会話に集中していないわけではなくて、ただ無意識にそのようなことを行っているのである。

こういう頭の良い人同士、特に仲が良くて相手が考えていることを想像しやすい間柄の場合、会話しているテーマの周辺情報はお互いに分かり合っている前提で話を進めることができる。すると前述のように途中の鎖を1つ飛ばしたところで、相手は脳内で正しく補間してくれるのである。
こういう状態になると話がとても速くなる。聞いた瞬間に想像できることはいちいち口に出さなくて良くなるから、物凄いスピードで話が展開するようになる。そしてそれを横で聞いている凡人には、なんで会話が成立しているのかよく分からなくなるのである。

自分のことを頭の良い人間側に入れるのもアレだが、ただ少なくとも自分が詳しい分野に関してはこういう会話が出来る場合があるのも事実である。そういう間柄の相手はそうはいないが、逆にそういう会話が出来るとこの人と話すのは楽しいなと感じる。自分の思考速度を妨げられないし、常に想像力を働かせて会話する必要があるので、ある意味夢中になって話せるのである。

とはいえ、いきなりそういう会話を投げつけてはいけない。もはやこれは相手の取りやすいところに投げてあげるキャッチボールではないのである。用意の出来ていない相手は当然困惑するし、こいつは私が言ったことを本当に理解できているのか、と逆に分かっていない人だと思われてしまう。何度も会話を重ねたうえで、お互いにある程度意思疎通がスムーズに図れる間柄になって初めて少しずつ輪っかを外し始めるのである。

とにかくそういう会話は実在する。そしてずっと話していたい相手というのはそれが出来る相手なんだと思う。
まぁもちろん、なるべくそうできるようになるためにも常に自分の知力を磨いておかなければならないのであるし、一歩間違えれば全然話の通じないやつと思われかねないので大いに気を付けなければならないのであるが。

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