エンジェル税制申請時の留意点など

1.はじめに

政府のスタートアップ支援の目玉政策であるエンジェル税制。
個人投資家がシード・アーリー期のスタートアップへ投資すると最大20億円の税金が免除されるというすさまじい税制と話題になった。
しかし、、、まぁ、、、普通の人が利用できるようなものではなく超絶複雑。一回やったくらいでは覚えられるわけがない。
そもそも対象が3つに分かれており、コースも3つに分かれており、要件も会社の状況に応じて15くらいに分類されている。経産省から出ているガイダンスが90ページを超える。
誰が、誰に、いつ、どうやって申請し、どのようなプロセスを経て税額の免除をゲットできるのか?その事務プロセスそもそも不明。
そこで、本制度を一度通した僕が理解したことを以下にまとめる。これが誰かの役に立てば幸いです。

2.流れ

  1. 事前確認(任意)

  2. 事前確認結果を受領(任意)

  3. 投資契約の締結及び投資の実行

  4. 本申請

  5. エンジェル税制の確認書の受領

  6. 投資家へ確認書の手交

  7. 投資家が確定申告

事前確認は任意

  • 事前確認は任意のため、確認以前に投資を実行しちゃっても手続上は問題はない

  • ただし、要件を満たさなかった場合、エンジェルは税の免除を受けれない。

  • そのため事前確認はやっておくのがよさそう

  • 事前確認の結果を受領した上で投資契約の締結、投資実行に移るのがよさそう

申請者はスタートアップ、VC、クラファンの3つ

  • エンジェルがスタートアップに直接投資をする場合のみならず、経産省が認定したVC、同様に経産省が認定したクラファンに投資をする場合も投資した個人はエンジェル税制のスコープとなる。

  • つまり、制度の対象者がスタートアップ、VC、クラファン運営者の3者なので、この3者がエンジェル税制の申請者となる

  • スタートアップにエンジェルが直投する場合、リソースが厳しいスタートアップがエンジェルに代わって申請をする必要がある。VC、クラファンの場合もエンジェルに代わって申請することになる。

  • エンジェルは黙って待つのみ

申請先は都道府県

  • 申請先は都道府県。各都道府県の産業振興課的なところ。

  • 都道府県が審査の上で、確認書を発行してくれる

  • 確認書の発行はだいたい1-2か月程度

  • 東京都は直接会社に投資をするケースと、VC経由では窓口が異なる

  • 東京都で直接投資をするケースはまずは以下にメール

    1. info-agtax@t-smeca.com

    2. 件名:エンジェル税制の申請(申請企業名)

確定申告の流れ

  • 会社、VC、クラファンが都道府県より入手した確認書をエンジェルに手渡しする

  • これによりエンジェルは個人の確定申告時に税の免除が受けれる

  • 個人の確定申告は暦年なので、12月は大量の申請が届く見込み。申告期限の3/15に間に合わない場合は、確認書を未入手状況で一旦確定申告。その後確認書入手というプロセスを取らざるを得ない

3.エンジェル税制の適用を受けれる要件

外部株主比率が最低5%以上いないとダメ!

  • エンジェル税制の申請予定の株主の持分含めて最低5%は外部株主がいないと制度の適用対象となりません。

  • つまり、申請予定のエンジェルの持分が3%であれば、既存の株主で2%以上あればOK

  • この外部株主の範囲ですが、共同創業者OK。一方で、創業者の近親者はNG

  • JKISS投資家は株主ではないので、制度上の外部株主に該当しない。よって、JKISS投資家以外で5%の外部株主が必要

経産省より公示されている投資契約が必要

  • 投資契約のひな型が経産省のHPより出ており、ここに記載の文言を投資契約に入れ込まないとダメ

研究開発費等の範囲

  • 出資額の30%を研究開発費等に使用されないといけない。この研究開発費等は広く解されており、CEOがコード書いたりすれば、役員報酬も研究開発費等に含めても差し支えない

毎年の営業キャッシュフローが赤字

  • 設立~直近の年度決算までの毎年営業キャッシュフローがマイナスであることが要件

  • 例えば初年度などに、給与を取らないなど支出を抑えつつ、単発のコンサル売上が入ったなど、もし営業キャッシュフローが黒字になっていたら、要件を満たさなくなる。

  • キャッシュフロー計算書の提出を求めてくるが、そんなの未上場スタートアップが作っているわけがないので、この税制のためだけにキャッシュフロー計算書を作る必要がある。

従業員数の証明

  • 開発者の人数が要件になるケースもあるが、この人数は「投資を受けた時点」となる。

  • この「投資を受けた時点」に何人開発者がいるかを証明する手段として、社保の納付や給与台帳などエビデンスの提出が求められる

4.エンジェル側の複数の免除措置(選択制)

  • キャピタルゲインの控除(20億円まで)

  • 総合所得の控除(800万円まで)

    1. ざっくり2パターンあるが、いずれのメニューを取るかは株主ごとに決定できる。

    2. キャピタルゲインの控除は、この投資をイグジットした時までに課税を延期できるタイプとキャピタルゲインそのものの課税の免除の2パターンあり、より厳しい要件を満たすことができるかによる

5.その他

「総合所得の控除」を取ると、etaxで申告できない

  • 総合所得から税務免除される措置をエンジェルが選択すると、マイナンバーカードなどをつかってetaxで確定申告できない

  • つまり、紙で確定申告が必要

  • なぜなら、キャピタルゲイン課税は分離課税で、総合課税の申告とは、etaxのシステム設計が根本的に異なり、1つのIT基盤の上でできないから

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