カッコいい辞典「あ」

さて、カッコいい辞典を想起してから今で五つほど書き記した。

そもそも50音作る目的で始めたカッコいい辞典だが、未だ先頭文字「あ」について記す機会を設けてこなかった。

よし、設けてこなかったならそれなりに納得せしめる理由があるのかと言えば、全く無い。

ただただ頭に思い浮かぶよしなごとを書き綴るのみであった余はそこに一ミリも頭を使ってこなかったのだ。

畢竟、無頓着なのだ。

だがここにきて運命なのか、気まぐれなのか、「あ」を記す運びとなった。

完全なる気まぐれである。

それでは参ろう。

「あ」から始まるカッコいいとは


『雨男』『雨女』である。(以下雨男に統一する)

先にも記した通り五つほどカッコいい辞典を記してみて(下書きも含めてではあるが)一つの結論がでた。

余は限定条件に弱い。

『雨男』はまさにである。

その男が或いは女が外にひとたび現れると天候ががらりと変わり、天からの恵みが舞い落ちてくる。

なんと神々しいことか。

現実の特殊能力である。

然し聡い読者なら一つ疑問を持つのもやぶさかではない。

『晴れ男』『晴れ女』ではだめなのか?

ここに明言する。

だめだ。カッコよくない。

何故か。

晴れたらみんな気分がいいし、メリットが多いじゃないか。との声は余の耳にも届いている。

しかし、だから故カッコよくないのだ。

『雨男』は雨を降らせてしまう。

気持ちのいい晴天の日に、どこからか雨雲を導いてしまう。そして雨が降り、暗澹たる気持ちになる。そして一人こう吐露する。

「ああ、ついてない」

これがカッコいいのだ。

雨を降らすと言う一つの超人的能力を携えつつもそれ故報われないのが、たまらなくカッコいいのだ。愛おしいのだ。

そして忘れてはならないのが、雨は天からの恵みであるということだ。

満たされた日々を過ごすものにとって疎まれる能力であるものの、雨を欲する一種危機的状況の人々を救える能力であるということが、最大の魅力なのである。

晴れを起こすヒーローよりも、干ばつなどの状況でを降らすことのできるヒーローの方が何倍もカッコいいのだ。

わかっていただけたであろうか。

外に出ると雨を降らすという限定条件に更に、干ばつと言う限定条件に最大の力を発揮するという限定条件。

『雨男』『雨女』は究極の限定条件なのだ。

カッコよくないわけがないのだ。

よし、雨男が限定条件なのはわかった。しかし晴れ男だって同じ限定条件だし、雨が降り続く地域では限定条件としての能力を十二分に発揮するではないか。との声があるやもしれぬ。

しかし考えてみたまえ。

雨は必ず止む!

このことも『雨男』として見逃せないカッコいいポイントではなかろうか。

この雨を降らすと言いう限定条件は必ず終わりがあるのやだ。

それは一瞬で来るかもしれないし、一週間続くかもしれない。

然し必ず雨はやむのだ!

その後、燦燦と照らされる太陽と心地の良い風から湧いてくるすがすがしい気持ちはだれが作ってくれたというのか!

そう!『雨男』『雨女』なのである!!

もうこの件について語ることはない。

カッコいいのだ。

読了誠にありがとうございます。
次回また逢う日まで。

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