吊り下げ型のティースタンドに特別な効果はない

こんにちは。かずです。
今回は巷で流行っている釣り下げ型のティースタンドで練習しても普通の置き型のティースタンドで練習しても特にスイング軌道に変化は出ないよっていうテーマでお話をしていきたいと思います。

最近、メジャーリーグの影響を受けて釣り下げ型のティースタンドが紹介されることが多くなりましたよね。確かに理論は分かるんだけど、ほんとに効果があるのって思ったことはありませんか?
もし思わず言われるがままに練習しているようでは危険ですよ!
なので今回は、釣り下げ型のティースタンドの効果について解説していきたいと思います。

背景としては、2015年からメジャーリーグでは選手やボールの動きをすべて数値化する「スタットキャスト」というシステムが導入されました。それにより、球速はもちろん、回転数とか、打球の飛距離、角度、打球速度など、今まで感覚でしか語られることのなかったあらゆる野球のデータが数値で、表示されるようになりました。

それによると、打球速度が158㎞/h以上で、打球の角度が26~30度の角度で放たれた打球のほとんどが長打になっていることが分かりました。長打が多ければ得点に繋がり、勝利に繋がるので、多くの打者がフライを意識して打つようになり、メジャーリーグの総本塁打数が過去最多を記録するようになり、これをフライボール革命と呼ばれ、日本でも注目されるようになりました。
日本では昔から「転がせばなんとかなる」とか「フライを打ってもどうしようもないぞ」なんていうふうに指導者からは指摘されることが多かったと思うので、この考えはホントに今までの常識をひっくり返すような理論でした。
正直、長打と、フライはホントに紙一重で、当たる場所が数ミリずれていればフライがホームランになっていたりするので、フライを打つことをダメとするのは、無理があるなとは思っていたので、私は割としっくりきましたね。

で、実際にこのような打球を打つ為にはどうしたら良いかというと、もちろん打球速度を速めるために、スイング速度が速いことと、打球に角度を付けなければならないので、ヘッドの軌道が約9度、上向きになるようアッパースイングで振ることが理想であると結論付けられました。

これもかなり、驚きの結果ですよね。日本では昔からアッパースイングが悪で、上から振るように指導されますから、この考え方を受け入れられない指導者が多いのも今の現状です。

実際に外国人選手と日本人選手のスイング軌道を比較した研究でも、日本人選手の場合、ダウンスイングでスイングを行っており、長打を打つのに適したスイング軌道ではないことが明らかにされています。
これに関しては日本人選手と外国人選手はパワーが違うからスイング軌道も違うべきという考え方がありますが、確かに一理あります。というのも、長打を打つ為にはまず打球速度が158㎞/h以上でなければいけないので、いくら打球角度がよくても、打球速度が遅ければそれはただのフライにしかなりません。
打球速度を出せない選手であれば、ダウンスイングで叩きつけて内野の間に転がすようなバッティングをするのもありかと思います。
なのでここでの話としては、打球速度が158㎞/h以上は出せる選手という前提のもと話を進めていきますのでご容赦頂ければと思います。
実際打球速度が158㎞/h以上というのは、高校生くらいで力のある選手なら出ますので、特別難しいことではないかなと思っています。

じゃあどうしたら長打を打つのに適したスイング軌道を獲得することが出来るのか、どんな練習をしたらよいのか、という点に関しては、最近では置き型のティースタンドではなく、釣り下げ型のティースタンドが推奨されています。
日本従来の置き型のティースタンドの場合、どうしてもボールの上半分を打つことになり、
そうすると叩きつけるようなスイングになってしまうので、良くないと言われています。
メジャーから入ってきた釣り下げ型のティースタンドの場合、ボールの下半分を打つことになり、その練習によって、長打を打つのに適したスイング軌道が得られると考えられています。確かに理屈としては、理にかなっているような感じはしますよね。

果たしてこの考えは正しいのでしょうか。
この考えが正しいのかどうかを調査した研究が、中京大学の中島先生らが2020年に報告された「野球の打撃におけるティー台の違いがスイング軌道に及ぼす影響」という論文になります。今回はこの論文を紹介していきたいと思います。

対象が高校時代に硬式野球部に所属していた男子大学生8名です。ここで現役じゃないんかい!という突っ込みと8人だけかい!という突っ込みが聞こえてきそうですが、ご容赦頂ければと思います。なので、あくまで今回の対象ではこういう結果だったよという報告なのでご周知ください。たまに論文紹介している人でも、論文をよく読んでみると対象がおかしかったりするので、みなさんも元の論文をしっかり読んでみるといいですよ!

研究のやり方としては、置き型のティースタンドと釣り下げ型のティースタンドでティーバッティングを行ってもらい、その動作を高速度ビデオカメラで撮影し、どのように変化するかを調べています。
実際に何を調べるかというと、スイング速度と、踏み出し脚が接地してからバットがボールにインパクトするまでのスイング時間、スイング角度、バットの角度です。最初に上げた理論通りであれば、置き型のティースタンドの場合、上から叩くようなスイングになり、釣り下げ型のティースタンドの場合、アッパースイングになるはずです。さあ果たして結果はどのようになるでしょうか。

結果はなんと、すべての項目において置き型も吊り下げ型も有意な差はみられませんでした。感覚的にはたしかに置き型の方が叩きつけていて、吊り下げ型の方が下から打っている印象があると思うのですが、実際に動作を正確に調べてみると差はなかったということが分かりました。これは非常に面白い結果ですよね。
つまり、ただティースタンドを変えて練習するだけでは、正しいスイング軌道の修正はできないので、正しいスイング軌道とはどういうメカニズムなのかを理解し、それに伴う力発揮を理解し、それを踏まえて練習することが大事だということですね。

もともとダウンスイングが体に染みついている選手の場合、それを改善しようと思えば、もっと大げさに変えるようなドリルから初めていかないと動作は変わらないと思います。
ここからは私の持論になりますが、ダウンスイングとアッパースイングでは特に上半身の使い方が変わり、アッパースイングの方が体幹の側屈(横に倒す動作)が大きくなります。まずはそこの柔軟性を獲得し、側屈しながら回転していく使い方を獲得していく必要があると思います。
その練習方法としては、ゴルフスイングだったり、低めの打球を打つ練習だったり、最近流行りのシークエンスバットでのティーバッティングなどが有効ではないかなと思います。

また、違う論文では、ボールの半分にマーカーで色を塗り、その色を注視しながらティーバッティングを行うと効果があったというような論文もあります。
なのでアッパースイングをするために、ボールの下半分をより注視して見るような工夫が必要かもしれませんね。

以上で今回の話は終わりにします。
私が言いたい事としては、巷で流行っているもののを試すのは良いと思いますが、何も考えずにただ盲信して実行するのはあまり意味がないのかなと思います、よく考え本当に効果があるのか、自分に合っているのか、もっと効果を出すためにはどうしたらいいか、そんなところをよく考えながら行っていくことが重要ですね、ぜひ皆さんも試してみてください!
また次の動画でお会いしましょう!またね!

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