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ちがさき・さむかわこどもファンド公開審査会に参加して

「こども基本法」(令和5年4月1日施行)の第3条に、全てのこどもについて、「意見を表明する機会及び多様な社会的活動に参画する機会の確保」が、第11条に、国及び地方公共団体のこども施策に対するこどもの意見の反映が定められる中、各地で、基本的に行政主体で様々な取組、試行、検討がなされていますが、令和4年7月に、第1回の公開審査会が行われ、活動が始まった「ちがさき・さむかわこどもファンド」は、民間のNPOが主催する取組として、当初から注目を集めていました。
9団体の応募に対し、8団体が審査を通過し、令和5年2月までの活動期間を終了しての活動発表会が、3月11日に行われました。中には茅ケ崎市のふるさと納税の対象に3つの提案が採用される等のものもあり、全体として大人のサポート体制も含めて、初年度として大いに成果のある活動であったと評価されるものと考えます。

令和5年7月16日(日)、4年ぶりの浜降祭(市内各神社からの神輿が海に入って戻って町内を回る夏の祭)を翌日に控え、沸き立つ茅ケ崎市内。外気38度の灼熱日でしたが、13時から茅ケ崎市役所分庁舎6階コミュニティーホールで開催された、特定非営利活動法人NPOサポート茅ケ崎主催の、「公開審査会deチャレンジ ちがさき・さむかわこどもファンド2023」には多くの者が集まっており、私も冒頭から参加しました。ちがさき・さむかわこどもファンドのアドバイザーの池田美砂子さんが、私が一箱本棚オーナーをしている「Cの辺り」のオーナーで、昨年、「ちがさきこども選挙」を実施した関係でNPOサポートちがさきの益永律子代表とも知り合いとなっていたこと等から、情報を得ました。

茅ケ崎市、茅ケ崎市教育委員会、寒川町、寒川町教育委員会が後援となっており、来賓として、佐藤光茅ケ崎市長が挨拶。その後、こども審査員の紹介、大人アドバイザー・サポーター審査員紹介、そして審査のポイント(後掲)がこども審査員から発表されました。以下、このファンドの取組についてNPOのパンフレットや配布資料、当日説明等から改めて説明しつつ、今回の第2回の審査の事例等も紹介していきたいと思います。

茅ヶ崎市長の挨拶

1.ちがさき・さむかわこどもファンド
(1)ちがさき・さむかわこどもファンドの仕組み
茅ケ崎市と寒川町の小学3年生から17歳までのこども3人以上のグループが考えた活動を公開審査会でプレゼンし、「こども審査員」が助成するかどうかを決定。「さぽちが」が1件最大5万円の活動資金を提供する民間初の仕組みです。
(2)「さぽちが」認定特定非営利活動法人NPOサポートちがさき
2002年 任意団体として茅ケ崎市民活動サポートセンター(「サポセン」)の管理運営を行う。(委託)
2003年 「ユースボランティア事業」茅ヶ崎市社会福祉協議会と協働
2005年 サポセン指定管理者として情報の収集・提供、協働の拠点運営
2012年 「企業とNPOのパートナーシップに関するアンケート調査」を茅ヶ崎市と協働で実施
等がパンフレットに記載され、長い歴史の中で、市等との関係も持ってきたことがわかります。

2.第2回公開審査会
(1)こども審査員等
・こども審査員5人:高校2年生、中学1年生、小学5年生、小学5年生、小学3年生。この5人で助成するかどうかを決めます。多数決なので、3人以上が良いとすれば、助成対象となります。
・(大人の)アドバイザー:
卯月盛夫(早稲田大学社会科学部、社会科学総合学術院教授、こうちこどもファンド大人審査委員長、なとりこどもファンドチーフアドバイザー)、池田美砂子(「Cの辺り」オーナー、インタビューライター)、田中藍奈(Plant Pitty代表、BENIRINGO共同代表)、皆川恋音(2022こども審査員)、山口順平(湘南100CLUBリーダー)、吉野由美子(チームミツバチ、子どもの居場所ふじポケ)
・(大人の)サポーター:
阿部汐里(BENIRINGO共同代表)、廣田純也(Hearts代表)、渡辺健(NPO法人湘南スタイル理事長)、鐘ヶ江麻子(イラストレーター)
(2)こども審査員が話し合って決めた審査の基準
①少し先に、未来に目を向けた時に、その活動がどのようにみんなのためになっているか
②茅ケ崎・寒川らしいか
③提案内容にふさわしい予算になっているか
④こどもファンドでないと、実現がむずかしい活動か
(3)審査の前に、さぽちが代表の挨拶
「昨年、5年分ぐらいの実施の目途がついたので、始めた。今回13組という大勢のエントリーがあり嬉しいが、全部助成対象とすると60万円を超える。今後のことを考えると、40万円ぐらいになればと考える。助成するとしても、本当に5万円の上限まで必要か調整させてもらうことがあるかもしれない。」との旨が、審査の重要な要素として、こども達の前で、あえて話をされたのだと考えます。

配布資料

2.プレゼンテーション。
(1)ちがさき・さむかわ こどもファンド応募申込書
会場では、全組の応募申込書が本となって配られていました。
【こども記入用】
(a)グループ名、(b)活動の名前、(c)グループのこどもリーダー(非公開も可)、(d)グループのメンバー名簿(非公開も可)、(e)活動の目標(自分たちの活動で、地域やまちをどんなふうによくしたい、楽しくしたいと思いますか?)、(f)活動内容(いつ、どんなことをしたいと考えていますか?できるだけくわしく教えてください。)、(g)これまでの活動、(h)協力者、(i)自由記述コーナー
【大人記入用】
(a)申請グループ(非公開も可)、(b)申請金額、(c)申請する活動の予算(収入、支出)、(d)グループのルール(会則)(ひな形の穴を埋める形)
大人記入用の内容も、審査対象となり、質問にはこどもメンバーのみが回答します。こどもが内容を理解していなければならなりません。こども達が考えたものを大人がまとめて記入した感じにはなっていました。
(2)プレゼンテーション
3分のプレゼンの後で、こども審査員から4分間の質問に応えます。休憩を挟んで、前半6組、後半7組のプレゼンが行われました。
13組のこどもリーダーの年齢(あるいは公開されているチームメンバーの主な年齢)は次のとおりです。(a)7歳(小学2年生)、(b)9歳、(c)12歳、(d)12歳、(e)9歳、(f)10歳、(g)9歳、(h)9歳、(i)9歳、(j)10歳、(k)9歳、(l)9歳、(m)14歳。
このように、小学生12組、中学生1組。小学生のチームの協力者は、「ちがさきKID‘s」(学童保育)が3、松波小の先生が1、小出小学校の2人の先生が8となっていました。

プレゼンテーションの様子

3.公開協議
(1)1次判定
プレゼンが終わり、休憩時間の後に、5名のこども審査員による1次判定の結果がホワイトボードに貼りだされました。
1次判定は、各組を「いいね」「もう少し質問」「もうちょっと」の3つの評価に分類するもので、この段階で、「いいね」に5人中3人が丸をつけたのが2組しかありませんでした。助成対象となるものが2組だけだったということです。
(2)公開協議
ここからは、チーフアドバイザーの卯月教授の司会で、進められました。卯月教授にしても、この段階での2組のみの助成決定は少ないと考えられたのか、こども審査員に向けて、まず、まちを良くしようという考えに基づく取組の応募の重要性、それを助成して、実施させることの大切さ等を述べられました。公開審査は、それぞれの組のプレゼンについて「もう少し質問」としているこども審査員からの質問を取り上げ、プレゼンした組からの回答を求めることを中心に行われました。宣伝についての対応があまり示されていないことへの不安、予算積算の不明点、購入予定物品の利用法、活動の方法、活動の目的と実施内容の矛盾、大人との協力等、卯月教授のサポートで活動のより具体的な内容を浮かびあがらせようとするやりとりが行われました。出された質問に、大人の視点からは若干実効性に疑問がなくはないものも含めて、明確に回答するところもあれば、なかなか答えが出て来ないところもありました。この間、卯月教授が、他の大人アドバイザーを指名して、意見を述べてもらうことも行っていました。
(3)結果発表
予定より長めの時間を使って、公開協議が行われました。1時間ぐらいでしょうか。その後、5人のこども審査員が再度判断をくだします。今度は「もう少し質問」はなく、「いいね」か「もうちょっと」に丸をつけます。その結果、13組中10組が助成対象として選ばれました。この発表の際に、助成額については、本当にそれが必要か等、事務局と調整する、いわば「査定」することがあり得るということも大人のアドバイザーから言及されました。助成対象として選ばれた組の発表の時は歓声と拍手が沸き上がりましたが、落選した組の時は、シーンとしてしまったのは仕方がないのかなと思います。

4.実施に向けて
助成対象となったことはスタート地点に立ったといことで、これから活動が具体化していきます。活動期限は令和6年2月までです。
公開協議の中で、市の公園を使ったイベントの実施、市庁舎に宣伝のパンフレットを置いたりポスターを貼ったりする等の話が出てました。茅ケ崎市長もかなりプレゼンを聞いた後に途中退席されましたが、市の担当者がずっと残っていたので、実施に向けて市と協議しなければならない部分は大人の協力者とも連携し、調整が行われることになるのでしょう。その他、こども達が作った活動計画を基に、大人のサポートを受けながら、実施がなされていくと考えます。令和6年3月の活動報告が楽しみです。

5.おわりに
日程終了後に、卯月教授と少しだけお話することができました。「果敢な応募としっかりした準備が必要ですね。」と私が問いかけると、「当然ですね。」「他の地域でのこういう取組でも、質問に応えられないところには厳しい評価が出てしまう」との旨の話がありました。
私の右隣には、埼玉県のある市の関係者が視察に来てました。「ちがさぽ」の方の話では、その市でも、同様な取組を行う予定だが、市が中心となって行うので、実施は再来年になりそうだとのことでした。
「ちがさぽ」は、2002年から茅ヶ崎市民活動サポートセンターの管理運営にかかわり、市との協働事業の実績も豊富で、市内企業とNPO等の交流事業も行っているという存在。それだからこそ、市も含む多くの関係者との信頼関係を持ち、また寄附も集められているのだろうと考えます。そうした存在が、このまちを愛し、よくしていこうという人たちの思いや願いを形にするサポートの対象に、こども達を加えて始めたこの事業は、行政主体の事業と比べて、より柔軟性と大きな広がりを持って実施していけるものだと考えます。そこに行政(市)がうまく繋がれば、これはこれで良いのではないかと考えます。こどもの社会参画の場として、この取り組みを整理して示すことに意味があると考えて、まとめさせていただきました。

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