見出し画像

「あつぎ気候市民会議」が凄い!

 「あつぎ気候市民会議」の情報公開ぶりが凄い状況になっています。

 「かながわ気候市民会議in逗子・葉山」を傍聴する機会があり、本年、同様な期間で「あつぎ気候市民会議」が開催されていることから、そちらの傍聴も考えてHPを見てみたところ、そこでの情報公開が大変凄いことになっていました。これなら、現地に行かなくても、ある程度の状況の把握ができるのではないかと思えるほどのものでした。もちろん参加市民の自由な発言を確保すべく、グループ討議の様子は除外されていますが、それ以外については、動画での記録が公開されており、かなりの臨場感で追体験ができます。
https://sites.google.com/kikoshiminkaigi.atsugi-shiminhatsudensho.net/public/home?authuser=0
多くの人々に知ってもらいたいという意思により、情報公開ぶりが「凄い状況」になっている「あつぎ気候市民会議」について、「かながわ気候市民会議in逗子・葉山」の傍聴ではあまり把握できなかったこと等、いくつかの点をここに掲げたいと思います。

1.経費について


 あつぎ市民気候会議のHPでも、これが「厚木市市民協働提案事業」と記載されています。ブラジルのポルト・アレグレが発祥の地とされる、いわゆる参加型予算の一種とも言えるものと考えます。平成24年(2012年)10月11日に公布・施行された厚木市市民協働推進条例の、第10条第8項に、「市長は、前項の規定に基づき処分された基金の額を財源として、市民活動団体に対して、助成することができる。」等と規定しています。

 あつぎ市民気候会議実行委員長の鷺谷雅敏氏の挨拶を文字起こししたので、それらの点も含めて、見ていただければと思います。

「(略)今日は次に、他の都市でやりたいっていう方も来てるので、我々がなぜここでできるようになったのか、それを若干(略)。我々はもともとソーラーシェアリングしているあつぎ市民発電所というグループで資金はありません。今回、結局予算が650万に膨れ上がったんですけども、その内、自己資金は基本はゼロです。ゼロでやろうとしてる市民がいるということで、(略)成功すればそれは他の市でもできると、ということで頑張っていただきたい。」「これはひとえに厚木市が市民協働提案事業という、条例を持って、(略)そこで採択されれば、200万円まで上限で出していただけると。というところから、それが採択されたので、実現しました。」「その時には、我々、こんな立派な会議を開くとは思ってもいなかったんで、せいぜい何十万円かでできるだろうと。200万円もらえるんだったらば、いいだろうっていうことでやる決心を、背中を押してもらったわけです。」「その後、実際に具体的にやっていったら、前例として、川崎市が前例としてあったので、勉強させていただくと、とんでもない何十万円レベルじゃないよ何百万円だよという話になって、これは200万円でももしかしたら危ないということで、さらに、寄付を募って、民間企業で採択されて、そこでまた200万円を補助していただけることになる。なおかつ国の補助機関である地球環境基金というところに出して審査を受けて、そこでも250万円の出してあげるよということになって、トータル650万円ということになって、結局は資金がゼロだったんですけども、650万円までの予算でできるようになった。きっかけは、厚木市の市民提案事業というのがあるからそれを利用していただいて、これができてるということで、改めて厚木市の皆様には感謝申し上げる次第です。」

 実際、どれだけ経費をかけるのが適正化ということは議論があるでしょうが、一つの参考になるかと思います。会場費、通信費、講師謝金等がすぐ思い浮かびますが、HPのよくある質問のところには、「ご参加いただいた方へは謝礼金(交通費込み)をお支払いいたします。(3,000円/回)駐車場をご利用の方は市役所本庁舎西側駐車場を無料でご利用いただけます。」「育児中の方でも会議に集中して参加いただけるように、無料でご利用いただける託児サービスをご用意いたします。託児室は会議の行われる同じ建物内のなるべく近い場所に確保し、お子様の様子に応じてすぐに行き来ができるような体制でお待ちしています。対象:1歳以上~小学校3年生以下(要事前予約)」等の記述もあります。52人の市民が参加しますので、参加市民の謝礼金だけで1日で156,000円。6回で936,000円となります。
 第1回会議全体スライドを見ると、第3回以降の講師で21人かと。市役所職員等、謝金対象者でない人もいるかもしれませんが、それなりの講師謝金が必要かと思われます。

HPに掲載されている第1回会議全体スライドより(以下の資料も同様。)https://drive.google.com/file/d/1gHvElV6SrQo2K2p9lJwVUycTJnlmmlZT/view

2.推進体制


 推進体制のスライドは、後掲のとおり。
 「かながわ市民気候会議in逗子・葉山」も担当している一般社団法人環境政策対話研究所は、連携との位置づけですが、前例である川崎の会議を経験した貴重なアドバイザーとして紹介されていました。

 この際、柳下正治氏のこれまでの活動を調べたところ、曽根泰教、柳瀬昇、上木原弘修、島田圭介著『「学ぶ、考える、話しあう」討論型世論調査』(ソコトコ新書・木楽舎、2013年)によれば、東日本大震災以降のわが国のエネルギー政策を策定するための国民的議論の方法の一つとして、2012年の夏に政府(民主党・菅内閣)が正式に採用した「エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査」の1泊2日の討論フォーラムでは、曽根泰教慶応義塾大学教授が実行委員長、環境問題の専門家である上智大学の柳下正治教授が副実行委員長とされており、柳下氏は、日本におけるこの分野の数多くの案件に関わっていることがわかりました。

第1回スライドより

3.ターゲットについて


 前掲の取組は、「討論型世論調査」と呼ばれるもので、「世論調査」の強化としての意味は大きいですが、調査結果は、調査を実施した者の方でいかようにも使える印象が強いです。先の調査結果も民主党政権下で、与党内及び野党からの様々な意見から、政策への反映が滞っていたところで政権交代となり、十分に生かされなかったということがあります。

 気候市民会議は、熟議民主主義と呼ばれ、ある程度、成果の政策への反映がビルトインされている取組と通常認識されています。「あつぎ市民気候会議」について、山口貴裕市長の言葉をここに掲げます。
「(略)今、厚木市においても、市民の皆さん方、環境について大変高い関心を持っていただいているわけでございます。(略)世界的な気候危機、そしてまた地球温暖化現象という形の中での、対策をどうしていくのかといういろいろと報道もされているわけでございます。一人でも多くの皆さん方が、そうした関心事をしっかりと持っていただきながら、また意識高いそういった取り組みをしていただきたいという部分においても、この厚木市においてもカーボンカーボンニュートラルにおいての宣言をさせていただいたところでもあるわけでございます。」「そういった部分において道しるべとして今、ロードマップを作成させていただいているところでもあるわけでございますけれども、ただ、それだけではなく、国からも最新の情報でありますけれども、脱炭素重点対策事業実施地域の方にも指定をされたところでございます。(略)それだけ厚木市においても先進的な取り組みをさせていただいているところでもあるわけでございます。」「ゆえに今、厚木市の小学校中学校、そして公民館を全て太陽光発電の設置をさせていただきながら、またLED化も進んでいるところでもあるわけでございます。今、6月議会においても、カーボンニュートラルををしっかりと推進するためにも補正予算をしっかりと拡大させていただき、そして補助額も増大をさせていただいているところでございます。」「(略)これがしっかりと採決されれば、皆さん方の取り組みにおいてもしっかりと大きな応援をさせていただくことができるんではないかというふうに思っているところでございます。」「(略)やはりここにおられる市民会議の皆さん方のお力をいただきながら、アクションプランを作成していただき、そしてその船頭役となって、皆さん方が、市民の皆さんを引っ張っていただきながら我々が掲げるカーボンニュートラル、そして脱炭素社会という形の実現をしっかりと取り組んでいければというふうに思うところでございます。(略)」

第1回スライドより

 ここにあるように、最終的な脱炭素市民アクションプランを作り上げれば、厚木市ではこれを「公式プラン」として受け取り反映させるとしています。このゴールに向かって会議が行われます。
 第1日目に、専門家レクチャー2として、「わたしたちのくらしと温室効果ガス」をテーマに「かながわ市民気候会議in逗子・葉山」でもレクチャーを行った渡部厚志氏が登場し、脱炭素行動「オプションカタログ」も示されましたが、その後、グループワークを行うだけで、逗子・葉山のように2週間のチャレンジを市民に行わさせることはありませんでした。その辺りは、やり方の違いが生じています。ゴールの成果物との関係もあるのかもしれません。成果物の中で、それらがどう表れているか、認識できれば面白いと思います。
 グループワークの仕方は、逗子・葉山と同様に、丁寧な段取りでした。

 とにかく、6月18日から11月26日と、52人の市民が約半年をかける本格的な熟議です。この丁寧さは、参議院の調査会が、3年かけて調査を行い、時として立法勧告を行う活動を思い出させました。

 逗子・葉山とともに、この厚木の動きも、凄い情報公開ぶりを活用する等しながら注目していきたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?