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週刊金融日記 第529号 金融関係者たちの手のひら返しっぷりにワロタ、プーチンにサハリン2を没収され物産と商事が暴落、香港の粥にハマっています、個人向け国債について補足、他

// 週刊金融日記
// 2022年7月4日 第529号
// 金融関係者たちの手のひら返しっぷりにワロタ
// プーチンにサハリン2を没収され物産と商事が暴落
// 香港の粥にハマっています
// 個人向け国債について補足
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 スマホを見ると、僕が口座を持っているHSBC香港の担当セールスから着信履歴がありました。もちろん折り返したりせず、基本は出ることはないのですが(どうせ変な金融商品とか勧められるだけなんで)、昨年、たまたまHSBCに用事があったので、電話に出て、久々に会ったときのことを思い出しました。

●当時、金融商品(その時は変な生命保険)の購入を断わった際に、なんかいろいろ対応が悪くて腹が立ったのですが、まあ、なんかお土産的にちょっと手数料を落としてやらないと悪いな、とも思って日本円→香港ドルのトレードをしたんですが、いま思うと、めちゃくちゃこれで得してました! ありがとう、HSBC!

 昨年は、世界的に日銀と同様なゼロ金利政策になっていて、ユーロやスイスフランはマイナス金利になっていました。米ドルとほぼ米ドルと同じ香港ドルも短期金利はほぼゼロでした。銀行のビジネスは、基本的には顧客から低い金利で預金を集めて(顧客はいつでも引き出せる)、そのお金を企業に貸し出したり、余ったお金は長期国債などに投資します。金利は期間が長いほうが高いし、企業にはさらに高い金利で貸せるので、こういう長短金利差で稼ぐのが銀行本来のビジネスモデルです。
 しかし、日本のようにゼロ金利が続くと、もうふつうの銀行のビジネスでは儲かりませんから、お年寄りに変な投信をたくさん売ったりして稼がざるをえません。HSBCも同じでした。HSBCは日本円からもマイナス金利を徴収していませんでしたから、円などを預金してただ放置している僕のような口座は、HSBCから見たら赤字口座です。こういう収益を産まず、むしろコストになっている口座をなんとかしないといけないし、金利がほとんどなければ、通常の銀行ビジネスでは儲からないわけで、僕の担当セールスは、明らかに上のボスから金融商品の販売ノルマを課せられてそうで大変そうでした。

週刊金融日記 第492号 富裕層だけが受けられる特別な金融サービスとは

 先週号で解説したように、いまは米国債の金利が上がりましたから、銀行もふつうのビジネスができるわけで、やっぱり金利がゼロという世界は異常だったんだな、と改めて思います。日本も日銀が金利を引き上げて、早く正常化してもらいたいものです。

 さて、地味なニュースですが、文科省が私大の入学定員厳格化の基準を、毎年の入学者ではなく、大学全体で見ることになりそうです。日本は大学をたくさん作りすぎましたから、地方の大学などで定員割れが目立つにようになってきました。そこで、こうした大学をすこしでも救済するために、大学の入学定員厳格化ということをして、これまでより定員オーバーへのペナルティを強化していました。東京の人気の私大に学生が集まり過ぎるのを防いで、地方の大学に学生を回す作戦です。
 私大は定員を超える学生を入学させて文科省から補助金をカットされたらたまりませんから、慎重に合格者数を絞って補欠合格を増やすようになります。こうして早慶やMARCHなどの東京の人気私大が難化しました。また、繰り上げ合格が起こりやすいので、そうすると滑り止め大学は辞退され、そこでまた繰り上げ合格が起こり……、となり玉突き状態で受験生はいろんな大学に入学金を支払うことになり、大変に不評でした。これが、単年単位の入学定員ではなく、大学全体の定員で見ることになります。
 つまり、今年、想定より多くの学生が入学してしまった場合は、来年の合格者を減らし、全体として調整できるようになります。これは、大学と受験生双方にメリットがあり、素晴らしいと思います。
 これで何が起こるかと言うと、いったん入学させた学生は、まずは入学金や授業料で搾り取り、進級を厳しくして留年させて、最終的には退学してもらう、ということで、大学側はより優秀な新入生を迎え入れる枠が増やせるわけで、進級を厳しくしてドロップアウトさせるインセンティブが出てきます。昔より、今のほうが大学の進級はかなり厳しくなっているようなんですが、これがさらに厳しくなりそうで何よりですね。大学生はちゃんと勉強しましょう。

●私大入学者超過基準見直し 文科省、収容定員で判断
https://www.sankei.com/article/20220606-Z2B6KKIHBJNXTP5W4BZNLG7SRQ/

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- 日本の個人向け国債はいわゆる債券ではなく政府が途中解約でも元本を保証しています
- 所長の株式投資での人生最大の損失のお話をお聞かせください
- 自宅とラブホテルでは女性を連れ込むのにはどれくらい難易度に差がありますか
- 大企業の子会社に転職したのですがやりがいが感じられずこのままでいいのか悩んでいます
- 年収3000万円の外国人妻(インフルエンサー)が都心の不動産を買いたがっています
- 巻末に「Cakesインタビュー記事 IT革命と恋愛市場の変相 その3  三低なんて大嘘、仁義なき女の見栄の張り合い戦争」掲載

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.金融関係者たちの手のひら返しっぷりにワロタ

 昨年、米国株式市場が日々最高値を更新し続けているとき、株式市場へのエクスポージョーがほとんどないままここまで来てしまった僕は、毎日のようにくちゃくちゃの1万円札と1000香港ドル紙幣で涙を拭っていました。Twitterを見れば、その辺の素人が米国のグロース株投資などでFIREを実現した、などというつぶやきが溢れ返っていて、彼らは自らの投資理論を自信満々に語り、フォロワーたちはそれを聞き入っているようでした。また、クリプト民たちの鼻息もとても荒かったです。
 金融関係者の多くもTeslaやZoomやNetflixなどのキラキラしたグロース株の成長ストーリーを語り、まるでこれから利益が永遠に増え続けると言わんばかりで、50倍、100倍といったPERなど当たり前といった調子でした。もっとも、TeslaやZoomやNetflixなどはかなりの利益を計上しており、現在でもそれなりの成長ストーリーがあり、ずいぶんと堅実な投資先であると思われ、実際にいまでも素晴らしい会社です。ただ昨年は株価があまりにも高過ぎただけでしょう。ここで具体的な銘柄を挙げることは避けますが、他の多くのグロース株は利益を一度も出しておらず、ウォール街のアナリストたちは売上高株価比率であるPSRを使って株価を評価していました。
 また、マクロ経済環境も「たしかに2020年、2021年は金融緩和の影響も若干あってほんのすこしだけ株価に過熱感が出ているから、2022年はこれまでと同じようなパフォーマンスは期待できないかもしれない、そうだな、S&P500で言ったら、まあ、+5%とか+10%ぐらいの平凡なパフォーマンスになるかもしれないな」などと言っておりました。なお、この時点で、FRBがこれまでのコロナ緩和をやめて、利上げとともにバランスシートを縮小させていくQT(Quantitative Tightening、量的引き締め)を実行していくことはすでに決まっていて、それはみんなが知っていました。インフレ見通しについても、ちょっとぐらいのインフレは起こるものの、それは一時的なもので、FRBはうまい具合いに金融正常化させるだろう、と思われていました。なぜだか誰もQTのことを気にしていなかったようで、実際に利上げがはじまって急に慌てだしたようです。
 僕はこの人たちの過度な楽観を見ていて、こんな狂ったバリュエーションで株が買えるか、と思っていたのですが、そんなことをつぶやくのは憚られました。なぜならば、儲かっているのは彼らであり、何のパフォーマンスも産まずゴミ同然のキャッシュを握りしめ、歴史的な株価の高騰に乗れなかったのは僕の方だったからです。
 結果が全てです。そして、市場は常に正しいのです。

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