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週刊金融日記 第492号 富裕層だけが受けられる特別な金融サービス プライベートバンク入門、岸田首相が楽天三木谷社長に怒られる、香港で流行っているプライベートキッチン、本格家トレメニューの決定版、他

// 週刊金融日記
// 2021年10月12日 第492号
// 富裕層だけが受けられる特別な金融サービス プライベートバンク入門
// 岸田首相が楽天三木谷社長に怒られる
// 香港で流行っているプライベートキッチン
// 本格家トレメニューの決定版
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 週末は香港は台風が来ていて、お店が閉まったりしておりました。また別の台風も接近中とのことです。それで、家でNetflixで、最近世界的な大ヒットとなっている韓国発の「イカゲーム」をついついぜんぶ見てしまいました。

★生産的なことをしていない人たちはまったくけしからんですな。

●世界90カ国で1位、韓国ドラマ「イカゲーム」の圧倒的リアリティ
https://forbesjapan.com/articles/detail/43705

 いろいろな理由で借金を抱えてどうしようもなくなった社会の敗残者たちを秘密の島に招待して、ゲームに負けたら死ぬ、最後まで勝てば莫大な賞金を手にできる、というデスゲームをやらせる、という日本の漫画に似たような話があったよね、というストーリーです。
 これを見たからと言って、何か実用的な知識を得られたり、教養が身についたり、といった実益はありません。グロなのである意味で趣味の悪い娯楽作品です。僕たちのような英語非ネイティブかつ英語を勉強しないといけない人たちは、Netflixなどで英語字幕にして英語の連続ドラマを見ると、どんな作品であれ、英語の勉強ができるのでそれなりに生産的な時間を過ごすことができます。しかし、韓国語であっては、まったく生産的な時間とは言えません。
 次から次に理不尽なゲームを押し付けられ、出来が悪いとあっさりと殺されていく様子は、韓国をはじめとした先進国での受験や就活、そして、就職活動が成功した後の企業内での出世競争など、理不尽な競争社会のメタファーであり、全力で走るのをやめてしまえばすぐに下まで落ちていく現代社会そのものです。そういうところが世界で共感されている、というような社会学風の解釈も可能でしょう。
 そして、この大ヒットドラマは日本の人気漫画「カイジ」のパクリだ、とも非難されているのですが、監督自身が売れなくて貧乏時代に読んだカイジからインスピレーションを得た、と特に隠すこともなく話しております。

●『イカゲーム』パクリ論争の背景にある「なぜ日本のコンテンツは売れない!?」怨嗟の念
https://www.cyzo.com/2021/10/post_293451_entry_2.html

 イカゲームを見終わったあと、そういえばカイジを読んでなかったわ、と思って、読み始めたんですが、これがなかなか面白いではないですか。トレーディングとかポーカーとかゲーム理論とか好きな人は楽しめるかなりの名作ですね。イカゲームのあとは、カイジのシーズン「賭博黙示録編」をついつい読んでしまいました。
 漫画家の福本先生は、高卒で建設会社で働いていたそうですが、麻雀はプロ並みに上手かったそうです。絵は下手ですが。そして、カイジが大ヒットして金持ちになったわけですね。建設現場や場末の雀荘で人間観察したおかげなのか、サラ金ですぐお金を借りて行き詰まるような社会の底辺を生きる人たちの描写にとてもリアリティがあります。

『賭博黙示録 カイジ』福本伸行 https://amzn.to/30dMWQs

 ひふみ投信で有名な藤野英人さんが日経新聞で生い立ちを語っていて、なかなな面白かったので紹介したいと思います。
 10年前は、藤野さんは、ゴールドマン・サックス・アセットマネジメント(セルサイド・バイサイドという言葉は拙著『外資系金融の終わり』 http://amzn.to/2ixif2n でくわしく解説しましたが、セルサイドである証券会社の方のGSとはそんなに関係はないです)を辞め、自分の投信会社を起業し、まだまだこれから、というときでした。僕の方は、外資系証券会社に務めながらベストセラーを何冊か書き、Twitterをはじめたころでした。

★10年ぐらい前は、僕が作家で哲学者の東浩紀さんをTwitterで煽ったら、すかさず藤野さんが、ワロタとか返してくれていた、そんなツイ友でした。いまではあまりに偉くなりすぎてしまったのと、本業が多忙で、Twitterには現れなくなってしまいました。

 藤野さんとは、10年ほど前にダイヤモンド社のWebメディアで対談させていただきました。

●ファンドマネージャー藤野英人氏 TOPIXを50%超上回る藤野氏の運用哲学とは?
https://diamond.jp/articles/-/17572

 僕は藤野さんが成功するとは思っていましたが、ここまで大成功して、日本の金融史に残るような方になられるとは、失礼ですが当時は想像していませんでした。一方で、僕は偉くなるということはなく、こうして細々とメルマガを書き、わずかばかりの個人資産を運用しながら、香港の片隅でひっそりと暮らしております。

●運用資産1兆円、藤野英人さん めざすは「理想の投信」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD05B5R0V01C21A0000000/

 藤野さんは旭丘高校という愛知県トップの公立高校出身で、東大・京大・名古屋大学医学部に行くのが当たり前という超進学校出身です。そして、日本の芸能界トップのDaiGoさんやいまや日本の名実ともにトップになられた岸田文雄首相と同様に「超進学校トラップ」にハマっていたことが、この日経新聞のインタビューで明らかになったのです。以下、リンク先の記事からの引用です。

「浪人時代は全国トップクラスの成績でしたが、アクシデントが起き2度目も(東大文一受験に)失敗します。部屋が暖房で暑くて試験監督が窓を開けたため、私の試験用紙が風で飛んでいき、前の席の受験生が水筒から床にこぼした飲み物の上に落ちてしまいました。『試験用紙の汚損はカンニングとみなされる』と試験監督に退場を命じられました。」

 え!? 浪人時代に圧倒的な学力がありながらセンター試験の科目を間違えて東大を受けられなかったDaiGoさんと同様に、藤野さんも不思議な理由で東大受験に失敗して、早稲田大学に進学するのでした。岸田首相の開成から東大入試3回失敗もそうですが、何やら超進学校トラップにハマることが、長い人生で見ると、この歪みがすごいエネルギーを生み出すのかもしれません。

週刊金融日記 第485号 東大は楽勝に受かる学力があったがセンター試験の科目を間違えて受けられず、万年筆一本で受けた慶應に合格したと言うDaiGo氏(浪人)
週刊金融日記 第489号 学歴コンプ製造装置となりうる超進学校トラップ
週刊金融日記 第491号 開成から二浪して早稲田に進んだ岸田文雄首相

 ちなみに、僕と藤野さんにTwitterで煽られた東浩紀さんは、いまでは灘中学より上だと言われている東京の中学受験最高峰である筑波大学駒場付属中学に進学し、現役で軽々と東大文一に合格していますが、それだけではありません。東さんは、小学生の間の日能研時代には、全国模試で毎回表紙に名前が載っていたそうです。日能研の1学年は1万人ぐらいなのですが、成績優秀者の冊子の表紙に載るのは20人だけです。つまり、彼は偏差値50になるのも大変な中学受験の世界で、常に上位0.2%に入っていたということです。偏差値80の世界です。また、単に東大に現役で合格するだけではなく、駿台などの全国模試で一桁か二桁順位だったそうです。日本の受験勉強会のトップオブトップの秀才であります。
 やはり、経済的、あるいは社会的な成功と、日本の受験勉強の得手不得手はあまり関係ないのかもしれませんね。

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- 筋トレコーチですが家トレの決定版を共有します
- 子供2人育てるのに本当に5000万円かかりますか
- 眞子様と小室さんはどこでセックスしている(していた)のでしょうか
- Aフェーズのクリア率を高めたいです
- 身長が低い男子がコンプレックスを乗り越えるためにするべきこと

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.富裕層だけが受けられる特別な金融サービス プライベートバンク入門

 僕はそんなに大した金持ちではまったくないのだが、そこそこの金額を香港のHSBC本店に置いてあり、そのせいか担当者がついている。仮の名前をマイケル、としておこう。香港に引っ越してきたときは、クレジットカードを作ったり、いろいろめんどくさい手続きがあったのだが、あの宇宙船のようなHSBC本店ビルの中にある彼のデスクで、その場で教えてもらいながら書類をいっしょに書いて、ずいぶん助かった。2019年末ぐらいのことだったと思う。それから、落ち着いたらHSBCのプラットフォームを使った資産運用などについて相談しよう、と言われた。なかなか素晴らしい接客である。これが富裕層向けの金融サービスというものか、と僕はまんざらでもなかった。
 それで、いろいろ生活が落ち着いたころのタイミングのいい時期に彼から電話がかかってきて、また、HSBC本店を訪ねた。僕は香港で手数料の安いネット証券の証券口座を開き、短期的なトレーディング戦略などはそちらでやるが、手数料などすこし割高だが、長期保有して放置する株のETFや国債などはHSBCの口座でやろうと思う、生命保険やデリバティブが組み込まれた投信など、そういうものには興味がない、と言った。彼はすこし残念そうな顔をしていたが、他の担当者がすごくいい金融商品を説明するので、聞いてほしい、と言ってきたので、僕はもちろん、と答えた。
 その担当者は、パワーポイントの資料を見せながら、これはHSBCのプライベートバンクの特別な顧客だけに提供している金融商品です。あなたは(プライベートバンクの口座ではないですが)選ばれた客なので、今回は特別に紹介することにしました……、などと言って、デリバティブを使った投資と生命保険を合わせた複雑な金融商品を説明してきた。複雑で考えるのもめんどくさいので、僕は聞いているふりをして、ふんふんうなずいていた。こんなものはどう考えても間違いなくう○こ金融商品なのであって、聞くだけ無駄なことは、聞かなくてもわかる。それで、そういうのは考えてない、と断って、適当に茶飲み話でもして、また、何かあったら、ということで僕はHSBC本店を後にした。
 それから、1回か2回、口座の手続きの用事があったときに、HSBC本店でマイケルとミーティングをしたのだが、そのたびに変な金融商品を紹介するセールスを呼んできて、う○こ商品を僕に買わせようとしてきた。僕は適当にあしらった。まるで、フィリピンやタイのゴーゴーバーの売春婦が、どこの国から来たの?仕事は何?とみんなが決まった同じセリフを吐くみたいに、HSBC本店のセールスは、プライベートバンクの特別な顧客にしか提供していない金融商品なのですが、あなたは特別に選ばれた客なので紹介します、というセリフを吐いた。
 その後、マイケルから何度か電話がかかってきたが、僕は用がなかったので、すべて無視していた。そして、先日、たまたま気分が良かったときに電話がかかってきたので、1年ぶりに電話に出てみた。ちょうど、HSBCに行かないといけない用事もあったので、アポを取った。

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