見出し画像

週刊金融日記 第495号 Facebook社はメタに社名変更 人類は辛いリアル社会を離れ仮想世界に引きこもる、衆院選自民単独過半数獲得、香港で一番得する税金の払い方、資産1億円で大企業を辞めてもいいか、他

// 週刊金融日記
// 2021年11月2日 第495号
// Facebook社はメタに社名変更 人類は辛いリアル社会を離れ仮想世界に引きこもる
// 衆院選自民単独過半数獲得
// 香港で一番得する税金の払い方
// 資産1億円で大企業を辞めてもいいか
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 日曜日は衆議院選挙が行われ、自民党苦戦が予想されていましたが、蓋を開けてみれば、自民党はやや議席を減らしたものの余裕で過半数を獲得しました。入稿前に結果がわからなかったのか、一部の大手報道機関が、自民党がかなり負けることを前提に、反省せよ!みたいなコラムを月曜朝に配信しておりました。それぐらい、各社の予想が外れたのかもしれません。やはり、いくら自民党に不満があっても、日本には政権担当能力がある野党がないんですよね。

●衆院選予測はまたも各社が外す結果に、情勢調査の実情と限界
https://news.yahoo.co.jp/byline/oohamazakitakuma/20211101-00266038

 香港の週末はハロウィンで盛り上がっておりました。渋谷なんかでは毎年仮装した人たちで溢れかえりますが、香港も同じです。やはり、今年は「イカゲーム」の仮装が多かったです。あの赤い顔が覆われるユニフォームを来ている人がたくさんいました。イカゲームが世界的に流行ったのは、ゲームに負ければすぐに殺されてしまうあの理不尽な無理ゲーが、現代の厳しい競争社会のメタファーになっているからなのかもしれませんね。

週刊金融日記 第492号 Netflixでイカゲーム見ました

 そして、日本ではハロウィンで仮装ではなく本物になっちゃった大馬鹿者がテロ事件を起こしてしまいました。犯人は仕事や恋愛で上手くいかず、やぶれかぶれになっていた若者です。バットマンに出てくる悪役のジョーカーが、どのように誕生したかを描いた映画「ジョーカー」が2019年に世界的にヒットしました。犯人は、そのジョーカーを本当にやってしまったわけです。
 社会の底辺を生きる心優しい非モテ男性のアーサーは派遣ピエロの仕事をしていました。彼は突発的に笑い出す病気を持っていて、それゆえに社会に溶け込めずにいます。ピエロの仕事をしているときに、不良少年たちに面白半分にボコられたりするんですが、それを見かねた同僚がアーサーにお守りのための拳銃をわたします。しかし、次に派遣された小児病院にこの拳銃を持っていってしまい、それが理由で解雇されてしまいます。クビにされ、ピエロの格好のまま地下鉄で帰宅していると、酔っぱらいの金融マン3人が若い女性に絡んでいるところに出くわします。ここでアーサーは病気で笑い出してしまい、今度はアーサーが絡まれ暴行されます。このとき、彼は耐え切れずに、持っていた拳銃で男たちを射殺してしまうのです。
 ピエロの格好をした犯人が、女性を守るためにいけ好かない金融マンたちを射殺する、という事件が大きく報道され、逃亡するアーサーは富裕層への反感を持っていた市民たちの間で何かダークヒーローのようになっていきます。そして、ピエロの仮面を被った人たちが「金持ちを殺せ」と暴動を起こしはじめます。アーサーはさらに犯罪を重ねていき、ますます、こうした市民たちのヒーローとなっていくわけです。
 そして、日本の京王線で、不遇な若者がジョーカーを本当に模範する事件を起こしてしまいました。

●《京王線刺傷》ジョーカースーツの男が狂った“恋人との破局”と“盗撮事件”「仕事や友人関係がうまくいかず死にたかった」
https://bunshun.jp/articles/-/49769

★たとえ映画が犯人に影響を与えたとしても、映画などの創作物に責任はない、とするのが近代国家です。そして、それはとても正しいあり方です。ところで、映画「ジョーカー」はかなり面白い映画です。僕が見たときは、ちょうど香港では民主化デモが吹き荒れていた時期で、それが映画内のニューヨークの暴動シーンと重なりました。

『ジョーカー』 https://amzn.to/3jYwnyV

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- 柴犬コイン等の草コインバブルはいつまで続きますか
- 「日本のデジタル競争力が28位で過去最低」という記事を見ましたが子供のIT教育はどうしたらいいでしょうか
- 民間銀行は金利のある長期の国債を持てばいいのでは
- 日本の購買力平価で見るGDPは上昇しているのに平均賃金が過去30年間横ばいな理由
- 30代前半で資産1億円ほどですが大企業から脱サラしてFIREしようか悩んでいます

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.Facebook社はメタに社名変更 人類は辛いリアル社会を離れ仮想世界に引きこもる

 GAFAの一角を占め、時価総額も100兆円を超えているFacebook社が社名を「メタ」に変更します。ちはみに、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)というのは和製英語で、英語ではThe Big Fourと言ったり、Netflixを加えてFAANGと言ったりします。世界を支配している米巨大IT企業群のことです。

●Facebookが「メタ」へと社名変更しても、本質的に“変わらない”こと
https://wired.jp/2021/10/29/facebook-name-change-meta/

 大統領選挙でのフェイクニュース拡散や大量に集まる個人情報の不正利用などで、米国ではイメージが悪化しており、それで社名変更した、という見方もありますが、ザッカーバーグはSNSの次に来るものは「メタバース」だと本気で考えているようです。メタバースというのは、元々はSF小説「Snow Crash」に登場する仮想空間サービスに付けられた名前から取ったもので、インターネット上に作られた多くの人が参加できる仮想世界のことです。任天堂の「あつまれ どうぶつの森」もメタバースのひとつで、他には「フォートナイト」などのオンラインゲームもメタバースと考えられます。

●いまさら聞けない「メタバース」いま仮想空間サービスが注目される“3つの理由”
https://www.sankei.com/article/20210908-M5JPF6BL45O7DH27P5ZBSHXNZE/

"Snow Crash" Neal Stephenson https://amzn.to/3GJF9uz

 人類は物質的には豊かになり続けていますが、FacebookやInstagramなどのSNSによって、見栄の張り合い合戦が繰り広げられ、精神は疲弊していきました。
 僕は香港の知人とレストランに行ったり、ウエイクサーフィンに行ったり、ハロウィンパーティーに行ったりするたびに思うのですが、彼らや彼女たちは料理やスポーツを楽しむのではなく、美味しい料理を食べられる自分、こんなスポーツをやっている自分、友だちがたくさんいるイケてる自分をFacebookやInstagramで他人にアピールすることにいつも腐心しています。そして、多くのふつうの人たちは、しょっちゅう高いレストランに行ったり、お金のかかるスポーツをやったりしません。こうしたふつうの人たちは、SNSで常にこうしたものを見せびらかされることによって、いらぬ劣等感を抱き、惨めな気持ちになるのです。Facebook社の提供するサービスが、現実世界をどんどん酷いものへと変えていっているわけです。

 さて、現実社会があまりにも酷いため、人々はヴァーチャルな世界で多くの時間を過ごすようになる、というまさにメタバースの世界を描いた映画が「レディ・プレイヤー1」です。冒頭で紹介した「ジョーカー」とともに、これも見て損はないディストピア映画です。
 27年後の世界では、人類はゴーグルひとつですべての夢が実現するVRワールド「オアシス」で生きていました。このメタバースでは、誰もがなりたいものになれます。美男や美女、無敵のヒーローになれるわけです。このメタバースの中で物語が進展していきます。

『レディ・プレイヤー1』 https://amzn.to/3GFkhoa

ここから先は

12,906字

¥ 220

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?