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第六十一話【新年】(Vol.601-610)

Vol.601
新しい年が明けた。
乾杯の後、声をかける。

「ほな兄ちゃんは見回りしてくるからな。夜中やし、騒ぐのだけはあかんからな。それと、明日は元旦祭があるからボチボチ寝るんやで」

「はーい」

呑気な声で答える子供達。

そう。明日は元旦祭。
法人の関係者が集まってお祝いをする日なのだ。



Vol.602
子どもたちに一声かけて
見回りに行く。

小学生はすでに寝ていた。

周りはまだガヤガヤしているが
もう見回りにも慣れた。

女子コーナーはサトミ姉さんが担当だ。

改めて
「あけまして」と挨拶を交わして
宿直室に戻った。

夜はまだ長そうだ。



Vol.603
「兄ちゃん、明日もいつも通り起床やから先寝るで」

宿直室に入る前に子供達に声をかける。

明日は20時起床だが、朝食は自分たちで食べれるようにと教室に持ち込んでいるのでゆっくりだ。

元旦祭は10時から行われるので
それまでに身支度をしておけば良い。

ただ、職員は違う。



Vol.604
普段通りに起床して、
元旦祭の準備がある。

この日は、たくさんの来賓、関係者、またその家族が来るため普段よりも賑やかな食事会となる。

法人あげての行事だ。

食堂のおばちゃんも朝から少しお忙しい。
おせちにお雑煮
下準備は済ませていても
仕上げの一手間が残っているのだ。



Vol.605
ボクも微力ながらお手伝いをする。
味付けとか、盛り付けとか
そんなことはできない。

自分ができることは何か?
考える。

【運ぶ】ことだ。

食堂から6Fの会場まで
運ぶことだ。

【動く】ことだ。

言われたことを愚直に
動くことだ。

できることをしよう!

そのために早く寝るんだ。



Vol.606
宿直室に寝転んだボクは
今年一発目の宿直を過ごしていた。

外ではゲームに興じている声が少し聞こえる。
(いったいいつ寝るのだろう)

流石にオールは禁止している。

軽く目を閉じると
すぐに眠気がやってきた。

今年はどんな一年になるのだろう。

3月社会へと旅立つ児童が気になった。



Vol.607
ブン太
彼は昨年18歳になった。
年が明けた今年3月に退所となる。

現在の児童福祉法では最長二十歳まで生活することができる。
(国からの補償がある)

ただ、当時はまだそこまでの整備されていなかった。

あと3ヶ月。
どのよう支援していけば良いのだろう。

と考えながら床についた。



Vol.608
1月1日 元旦
朝6:30起床

宿直室を出るとシンと静まり返った居室

子供たちは寝静まっている。

新しい一年がスタートした。

薄明るいがまだ初日の出には時間がかかりそうだ。

サクッと歯磨きを済ませ
顔を洗う。

冷たい。
気が引き締まった。

よしっ!
食堂へ行こう。



Vol.609
明けましておめでとうございます
今年もよろしく願いします。

頭を下げて新年の挨拶をするボク。

おばちゃんも
かしこまって礼で返した。

「なんか手伝いますよ」

「お兄さん。ありがとうね。じゃぁ〜早速やけど、、、」

そこからは怒涛のおばちゃん手伝い
おばちゃんの指示が飛び続ける



Vol.610
食材を運んだり、使い終わった器具を洗ったり
体を動かしているとだんだんポカポカと
温かくなってきた。

あらかた準備が整った
後は、式が始まって会場に運ぶのみだ。

「お兄さん。ご苦労さん。ありがとう」
といってお雑煮の味見をさせてくれた。

「内緒やで」

ボクはこの内緒が好きだ。

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