第五十五話【餅搗】(Vol.541-550)
#児童養護施設
#保育士
#施設職員
Vol.541
ビシッ!
会心の一撃 が餅に打ち込まれた
すかさずアラタ兄が餅を返す
それ!
ハイッ!
それ!
ハイッ!
よっしゃ!
ハイッ!
ホレ!
ハイッ!
一振りごとに
気合いを変えるおっちゃん。
テンポがいい。
かえすアラタ兄もコンビネーション抜群だ。
Vol.542
よっしゃ!
ハイッ!
テンポいい掛け声のその時
あっ
ハイッ!
ドン
最後との一突きで
おっちゃんの杵が止まった。
右手を腰に回す
どうやら腰をイワシタようだ。
「交代や」
(おっちゃん。張り切りすぎましたね。)
Vol.543
やらしてもらっていいですか
「よっしゃ」
おっちゃんは頷いた
ボクは初めて?
(自分の覚えている限りの記憶の中では)
杵をもつ
持ち方をおっちゃんにレクチャーしてもらい
いざ!
大きく振りかぶって
おりゃぁ!!!
と心で叫びながら
振り下ろす。
Vol.544
ゴッ!
石臼に振り下ろした杵が当たる。
ジーンと伝わる痛みが走った。
失敗だ。
横で笑っている幼児さん
手に痺れがまだ残る
「やっちまいました」
「最初はそんなもんや」
おっちゃんは優しい。
次はそんなに振り上げずに
打ち込んでいく。
ペタン
(ペタンって)
臆病なボクがいた
Vol.545
ペタン
ペタン
ダッ
ダッ
ビシッ
ビシッ
打ち込むたびに
だんだんと慣れていく。
コツを掴んだボクは
得意げになった。
(よっしゃイケる!)
Vol.546
やればやるほどコツを掴む
これは何事においても言えるだろう。
ボクはいつしか杵使いのコツを掴んできた。
ビシッ
気持ちいい!
周りの
“よいしょ“の掛け声も
心地よい!
よし!
つききってやるぞ!
Vol.547
つけばつくほど
身体が暖かくなっていく。
年末だというのに
ここはハワイか?
というほど暖かい。
(行ったことはないが)
「よっしゃ、これぐらいでいいやろ」
おっちゃんが声をかけた。
ふー
やったぜ。
出来上がった餅を
女子職員さんが食堂に持って行く
Vol.548
食堂に運ばれたお餅は
手際よく小さく分けられ
児童たちと一緒に
丸められていく。
形が歪なものもあるが
そこは愛嬌。
可愛いお餅が
つぎつぎ並んで行った。
Vol.549
愛くるしい食堂での
児童の様子を横目に
園庭ではドンドンと
餅米が蒸しあがっていく。
バトンタッチで
次はケンタ兄。
経験年数が長い
ケンタ兄はお手のもの
ビシッ
ビシッ
っと餅をついていく。
さすがだ。
二階のテラスからは
岩兄さんがタバコを燻らし
見守っている。
Vol.550
「よっしゃ次行こか!」
そうだ。
ボクは気を取り直した。
どんどん続く餅つき大会。
ここからは
子供達も参加する。
ペタンペタン
雰囲気を楽しみながら
子供たちが順番についていく
ただ、ここで大事なのは
温度だ。
餅が冷えると固まってしまう。
固まる前につきあげないとダメなんだ
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