第五十六話【力餅】(Vol.551-560)
Vol.551
子供が餅をつく補助をしながら
どんどんと打ち込んでいく。
子供を立たせて
実は大人がガンガンやってる感じにも等しい。
子供はアワアワと
大人に振り回されている幼児さんも多い?
でも可愛い。
そんな和やかな雰囲気も
一発で吹き飛ぶ一言が
おっちゃんが、
「あと10回繰り返すで」
Vol.552
・・・
マジっすかっ。
ボクは正直ビビった。
大人数名であと10回。
餅をつく。
なかなかの力仕事だ。
見上げると
岩兄がタバコを燻らせている。
(来てくれよ!)
そう心の叫ぶボク。
こうなれば
中男(中高生の男子)を召喚するしかない。
ボクは居室へと走った。
Vol.553
「おーい!みんな聞いてくれ!」
居室に戻ったボクは子供たちに声をかけた
「今、餅つきやってんねん。まだまだあるねん。自分らも食べるやろ。みんなで(餅付き)やろや!」
・・・
しばらくの沈黙
(自由参加とはいえ、一つの行事なのに、、、)
ヨシオが居室から出てきた
「いくわ」
Vol.554
ヨシオ以外の子供達は
あまり表情がすぐれない。
餅つきは普段の家庭では珍しい行事だが
彼らにとっては毎年の恒例であり
珍しいものではなく
煩わしいものになっているのだろう。
年齢が重なると
“面倒臭い“と感じることが多くなる。
そんな年頃なんだろう。
ボクはどうすべきか考えた。
Vol.555
「君たちの力が必要だ!1人一回つけばこの【餅付きミッション】がクリアとなる!その力をオラに分けてくれ!」
by 孫悟空 風に言ってみた。
・・・
効果はなかった。
「と、とにかく。きてくれ!」
そう言い残してボクは再び
餅米と向き合った。
その間も、ペッタンペッタン
続いている
Vol.556
残り8ターン!
よし!
全部つききってやる。
たとえ精魂尽き果てても。。。
1人腹を決めてヨシオに話しかけた。
「ヨシオ!にいちゃんとつききろうな!」
「俺、一回でいいわ。」
・・・
7ターン頑張ろうと
誓い直した。
Vol.558
ヨイショ!
ソレ!
ヨイショ!
だんだんと活気づいていく。
ボクも杵を持つ手に力が入った。
(つききってやる)
吐く息が白い煙となって空に上がる。
体も心もぽっかぽかだ。
いや、むしろ暑いぐらいだ。
ユッキーもここぞと力を入れる。
頼もしい。
ヨシオは横で座って見てた。
Vol.559
ユッキーは空手選手。
しなやかな腕の伸び
しっかりとした体幹
見ていて安定している。
みんなでハーハー
言いながら餅をついた。
つきまくった
そして
「もうええやろ、おしまいや」
おじちゃんのOKサインに
よっしゃ!
ボクたちはつききったのだ。
Vol.560
こうして
【餅つき大会】は終了した。
長かった
餅つき
そこで得たものは
“みんなでやると楽しい“
“1人じゃできない“
“頼ることも大切“
など当たり前のことかもしれない。
でも、この時間を一緒に過ごすことが
生活の中では大切だと改めて感じた
年越し前の出来事であった。