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第六十二話【内緒】(Vol.611-620)

Vol.611
“内緒やで“
昔、母親から言われた言葉。
昔、父親からも言われた言葉。

こっそり いいことをしてもらえる。
魔法の言葉。

別に大したことではないのだが、
味見をさせてくれたり、
お小遣いをくれたりと

嬉しいことをしてくれる。
特別の言葉。

“内緒やで“

今、昔を思い出した。


Vol.612
おばんちゃんからの
“内緒やで“

お雑煮の味見だった。

美味しい。
まだ餅は入っていない。

出来立ての出汁と具材をいただく。

すまし系のお雑煮は
鶏と鰹の出汁がいいコンビネーションになっている。

「美味しいですわっ」

「そりゃよかった」

おばちゃんの顔が
また笑顔になった。


Vol.613
手伝いを終えたボクは居室に戻る

テラスに出ると
明るくなって
眩しい光が刺してきた。

おぉ〜〜〜
「初日の出や!」

思わず声が出た。

寝ている子に声をかける。

「おい!初日の出やぞ」
(すっかりのぼり切ってるけど)





Vol.614
寝ている子を起こしながら
ホットコーヒーを入れるボク。

テラスにたたずみ
コーヒーを啜った。
そして一服。

ふぅ〜

新しい年が始まろうとしている。

(そろそろガチで起こさないとやばいな。)

コーヒーを飲み干して
ボクは子どもたちを起こすことにした。





Vol.615
「起きろぉ〜時間やぞぉ〜」

時間は8時半を回っている。

元旦祭は10時から
朝食の時間は各自なので今から
ボチボチ意識させたい。

前日にも声をかけ、
子供達には“前置き“しておいたので
大きな反感を買うことはなかった。

そう。
“前置き“はめちゃくちゃ大事だと
昨年ボクは学んだのだ。


Vol.616
「あけおめ」
「ことよろ」

目をこすりながら子供達が起きてきた。

「身支度し〜よ〜 あと30分なぁ」

時間の見積もりができてそうで
できていない子達に声をかける。

でも、これっていいのだろうか?
いつまでも大人を頼りっぱなしにしないか?

そんな葛藤を抱きつつも
ボクは声をかけた



Vol.617
自立と支援
このバランスを考えながら働いていくことが大事なんだなと感じつつ

遅刻は流石にまずいので
準備を進める。

寝癖、歯磨き、靴下の穴
身だしなみにも気を配る

なんせ、新年一発目の行事なのだから。

気持ちも心も
スッキリと出発させてやりたいし
自分がそうでありたい。





Vol.618
身支度を整え、6Fの神殿に上がる。
ぼちぼちとお手伝いされる福祉会の方が来られていた。

「明けましておめでとうございます」

座して挨拶を交わす。

「本年もよろしくお願いします」

子供達も頭を下げて挨拶を交わした。

徐々に人が増え始め
和やかな雰囲気に包まれた。



Vol.619
理事長も神殿に来られて
元旦祭が始まった。

祈りを捧げる中で
一年の健康と福祉会の発展を祈願する。

理事長の話は
皆が元気で仲良くというシンプルなお話だ。

シンプルだけに心に残る。
毎日理事長は言われていた。
「みんな仲良くね」と

参加者全員が新年の挨拶を交わして回った





Vol.620
理事長の祝詞があり、儀式は滞ることなく終了した。

その後、参加者全員が協力し食事会の用意となる。
実に手際が良い。
これを協力というのだろう。

役職、来賓、年齢、性別そんなもの全て取っ払って
全員が準備をする。

ボクは張り切って食事を運ぶ係を申し出た。
階段の上り下りだ。

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