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第三十七話【辞令】(Vol.361-370)

Vol.361
(寝なきゃ!寝るんだ!)
と思えば思うほど
目が冴える。

なぜだろう。

仕方ない
体だけは休ませるか。と
腹をきめ

上を向き大の字になって
ぼーっとする
ぼーっとし続ける

すると
いつの間にか眠っていた。




Vol.362
スッキリとした目覚め?
今日は土曜日

福祉会の辞令交付式だ
いよいよである。

幸い酒は残っていない。
よしっ。

サクッと起きて
身支度を整え、
居室に向かう。

出勤時間30秒。
これが住み込みの特権だ。

「おはよ!」
・・・

まだ誰も起きていない。
土日は起床時間が1時間遅い。




Vol.363
8時起床はありがたい。

子供たちをゆっくり起こすこともできるし
こちらもゆとりがある。

なかには、普段より早く起きて
ソワソワしている子もいたりして
【休み】を楽しもうという思いが伝わってくる。

朝食を済ませ、
職員は式典の準備でソワソワし出す。

ボクもそのうちの一人だ。




Vol.364
そこへケンタ兄がやってきた。
3日ぶりなのに
どこか懐かしい感じのケンタ兄。

「ヒロ兄さん、一人で大丈夫やった?」

「はい。なんとか」
と質問の返事にならない回答を答えるボク。

(テンパってるな)
と思いつつも
ケンタ兄が来てくれたことに安堵する。

やはり頼りになる先輩だ。




Vol.365
食事を済ませたボクは
宿直室でケンタ兄に
ここ二日のことを軽く伝える。

「OK。OKありがとう」

メガネのブリッジを
人差し指で持ち上げながら
ケンタ兄は報告を聞いてくれた。

「よっしゃ!じゃ!行くか!
こっからはオレが見とくから
兄ちゃんは、打ち合わせ行ってきて」




Vol.366
そう言って
ケンタ兄はボクを送り出してくれた。

「ありがとうございます」
と頭を下げて部屋に戻る。

サッとスーツに着替えて
6階の神殿に上がった。

そこにはすでに今年採用された職員が
集まっていた。

女性の姿が多い。
男性はボクぐらいかな。
ちょっぴり恥ずかしかった。




Vol.367
司会の先生から
式典の流れについて説明を受けた。

所属ごとに理事長より
辞令を読み上げられると返事をして
一礼

振り返って一礼

そして着席

という流れだ。

う〜ん。
社会人となって2度目の辞令交付
(前職は測量会社)

やっぱり緊張するもんだ。




Vol.368
簡単な打ち合わせと
リハーサルを済ませたあとは
その場で待機。

徐々に関係者が入ってきた。

時間が迫るたびに賑わってくる。
それと比例して
ボクの心臓もドキドキしてきた。

開式3分前
理事長、常務、各園の園長・施設長が入場された。

いよいよ始まる。
新しい仕事の始まりだ。




Vol.369
司会の第一声で式典が始まった。

理事長の挨拶
縁あってこの福祉会の一員になられたことに感謝します。
人は大切 子は宝

新職員へのお祝いと感謝
そして、
福祉会の理念についての話があった。

ボクは
改めて襟を正し、
「よっしゃ!」と張り切り
呼名に向けて心を整えた。




Vol.370
理事長からの話のあと
辞令が交付される。

園ごとに新着人の職員が起立し
辞令を受けた。

いよいよボクの番がやってきた。

(気合を入れろ!オレ!)

「野長ヒロ」
名前を呼ばれた瞬間

気合と緊張が折り重なって、
喉が詰まる

「ふぁ〜いっ」

(や、や、やっちまった)

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