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#12 何度も燃えあがる(BL、2020)紹介

2021年10月10日開催『J.GARDEN50』にて発行の同人誌『眩しくて見えない』に収録する作品です!

2020年、所属していた(文芸)サークルで文学フリマに参加することになり、そのために書き下ろした作品です。その時の部誌のテーマは『大人のゲイ』

原稿用紙84枚、26100字という、普段(自分には)あまり馴染みのない字数の物語を書くのに苦労したのを覚えています。

内容としては、『大人のゲイ』というテーマに決まったあと、『大人』を描くために、逆説的に『子供』を書こう、というところから、結局『ゲイの一生』を描くことにし、更にそれを『ボーイズ・ラブ』にすること、と考えて書きました。

先述の通り所属していたサークルの合同誌『桃鞜 2020秋号』で読むことができる作品でしたが、部誌の発行からも一年経つので、今回自分の発行するボーイズ・ラブ作品をまとめた作品集『眩しくて見えない』にも収録することになりました。

前述の通り、ボーイズ・ラブとしては異色の構成?になっているような気もしますが、こんなのもありなのかもな〜と思っていただけるとこれさいわいです。

小説を読む僕×それを書いた少年、の一生の恋の話になります!

こちらでは冒頭部をお楽しみいただけます〜。全文は同人誌で!

          *

     15歳

 退屈だった。
 高校生活が始まって一週間。思っていたより遥かに偏差値の高いエスカレーター校になぜか受かってしまった僕は、一体どれだけハイレベルな授業がされるのだろうと不安に思っていたのだけれど、少なくとも今のところ、すでに知っていることばかりが授業で取り上げられていた。
 退屈だった。だから、机に落書きをして遊んでいた。すると、前に座る生徒――確か、斎藤くんと言ったはずだ――が振り返り、僕の机に肘をついて言った。
「なぁ、退屈じゃね?」
 僕はそのタイミングの良さに、思わず少し吹き出す。
「確かに、ね」
 今も、英語の授業で文法の話をしているけれど、既に何度も受験勉強でやった範囲だった。出てくる単語も、見知っているものばかり。斎藤くんは僕の返事を聞くと、正面に向き直って何かを書いていた。そして、後ろ手にそれを僕に回してくる。
『次の授業、サボろ♡』
 その男らしい筆記とハートマークのアンバランスさに、僕はなんだか気が抜けた。次は今日最後の授業、数学だった。数学もこの調子であることは、この一週間の経験で十分に推測できた。僕は少し考え込んで、そのメモの裏に『OK』とだけ書いて渡した。
 授業が終わって休み時間に入ると、僕たちはカバンに荷物を詰め込んで教室を抜け出した。勢いよく下駄箱へ駆ける斎藤くんを追いかける。靴を履き替える斎藤くんに追いつくと、
「サボるの、初めてだろ」
 そう言われる。僕は上がった息を飲み込んで、何度か顎を上下させて返事した。
「だと思った」
 斎藤くんが僕に笑った。僕が斎藤くんの笑顔を見るのはそれが初めてだった。笑った斎藤くんの顔は、意外とかわいかった。

(続く)


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