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読書記録その1:きりこについて

http://rizap.in.net/notes/2817/

最近運動してないから体がなまっちゃって…」というような発言を聞きますが

元々インドアな私にとってはその運動とやらが読書にあたりまして。

編集という仕事柄、活字には常に触れているものの、何百ページという長文をここ最近読んでいなかったので

ここは「毎週少なくとも1冊は必ず読む!」という目標を掲げて読書を義務づけることにしようと。

あとこれは多分個人的な意見だとは思いますが

学生時代、夏休み前のこの時期はとにかく論文課題が多くて

目をつぶっても本独特のインクの匂いを感じるほどいろんな本を読みあさっていたので

実は「夏=読書の季節」というようなイメージがあります。

まぁそのとき読んでいたのは論文のネタになるような専門書ばかりなのでちょっと違いますが…。


先日放送されたアメトーークの「読書芸人」回でも

ゲスト出演されていたピースの又吉さん、オードリーの若林さん、光浦靖子さん全員が

おすすめしたい小説の中に1冊は入れていた西加奈子さん。

自身のイラン、大阪、エジプトでの生活を反映させたという『サラバ!』で直木賞を受賞したことでも今話題の作家さんです。

とはいえ、私の西加奈子歴はまだ浅く、これで7,8冊目といったところ。

初めて読んだのは『炎上する君』という作品で、それを手に取ったきっかけは

芥川賞・三島由紀夫賞Wノミネートで現在各方面でフィーチャーされまくっている又吉さんが

ちょっと前に、なにかの番組で「こういう文章を初めて読んだ。独特の言い回しで、こういう書き方もありなんだ、と感銘を受けた」というような発言をしており、興味を抱いたからでした。

それから『炎上する君』以外にも数冊読んでいるわけですが、

いずれも毎回まさしく「こういう書き方もありなんだ」とちょっとした発見があります。

飾らない口語体に近い、それでいて独特のファンタジックな内容に説得力をもたせる言い回しがユニークで

さらっと気軽に読めるのも「これから読書始めようかな」というときの入口にぴったりです。

また、この『きりこについて』は猫が嫌いな方にはおすすめできません。

猫に対する並々ならぬ愛と尊敬の念を随所に感じるので、しかも、犬批判もたまにあるので

もし犬派だったらイライラするかもなぁ、と思いながら猫好きな私は満足しながら読んだわけでした。

メッセージというか、教訓めいたものが大きく中心に置かれた話なのですが

もしかしたら子どもが読めることも意識したのか、

特に後半はそのメッセージがあからさまというほどわかりやすく強く露出してきます。

それが個人的には「もう少し余韻で想像させてほしいな」と思う部分でもありましたが

そのためにより一層、絵本を読んだ後のような、独特の清々しいほどの和やかな読了感を生むので

そちらを優先したい方には違和感なく受け入れられるのではないかと。

生まれたばかりの赤ちゃんがなんとベテラン社会人になるまで成長していく過程を

あっさりと描いた話なのですが、視点をピンポイントに絞っているので話がちらばってしまうことなく、

また、途中で出会う友だちが受けたトラブルや、そこでどう戦っていくか、という姿勢が

とてつもなく強くて女性に自信を与える物語でもあります。

もしこれから猫飼うことになったら「ラムセス2世」って名付けようかな。

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