Kazuto Nakano

京都人の22歳

Kazuto Nakano

京都人の22歳

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兼六園を訪れた。白く染まる雪吊りの傍ら 庭師の方々が長い竹棒を使って松の木をつつく。一本 そしてまた一本。するとケーキパウダーみたいに 雪の妖精がひらひら舞い降りて地面に消えていった。 夜になって街に歩きに出ると手作業で雪かきをすすめる人が見える。妖精たちは流れる川に落ちて 漆黒の闇に溶けていった。 それから1週間が経って 能登半島地震が起きた。 新年をいっしょに迎えたメキシコの友達を 駅へ送りに父親の車を運転していたときだった。そのせいか あるいはハタチを越えてから地

    • うつる

      この時期の夕焼けと湿気はどうもかなしい。 子どもの頃からまともに本を読んでこなかった僕に小説や歴史の本を手渡したのは、紛れもなく新型コロナウイルスだった。それから読書が好きになった。今では河原町に用事がある度に、四条と三条の間にある地下の本屋に行っては、適当な本を手に取って時間を潰すようになった。 僕は京都の街を自転車で走るのが好きだ。政府からの給付金で買った青色の自転車で、梅雨の雨や夏の青空にとても似合っている。今日は蒸し暑さのなか、高校の友人と会いに丸太町へと走らせた

      • 2021年

        僕が生まれたのは20年前の2001年12月18日。 まだ小さかったあの頃は、あれだけ憧れたハタチの日(合法的にお酒が飲める日)を、冬なのに蒸し暑いシンガポールの地で粛々と過ごすことになろうとは思いもしなかっただろう。 酒蒸しのように暑い初秋の京都を旅立ってから、酒蒸しのように暑い年末のシンガポールで2021年を振り返る。インスタのストーリーが写す故郷では、木々や山の色は瞬く間に変わり、次第に雪が降り始めていて、なんだか取り残された気持ちになった。でも卓上に置いたパキラの小枝